1024バイトで超短編を書こうという遊び。
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「ねぇ式、もし子供を授かるとしたら男と女、どっちがいい?」 |
言葉のいらない人間なんていない。 口で言わなきゃわからないことなんて幾らでもある。 結局人間なんていうのは話しあわなければ分かり合える事なんか無いのだろう。 そんなのは当然で、俺でも知っているくらいの常識。 だけどなんで、こんな時は言葉はいらないなんて思ってしまうのだろう。 ただ、唇と唇を合わせているだけだというのに。 人間というのは第一印象が大事で結局見た目で判断されるもの。 背丈肉付き顔つき立ち姿。 着ている服も髪型も靴も手も相手を知るために必要な情報。 だけど今の俺は目を瞑っていて、幹也を見ることなんてできないのに。 なんで、今は幹也を全てわかっている様な気になってしまうのだろう。 ただ、唇と唇を合わせているだけだというのに。 危なっかしい手つきで俺を包む意外と太い腕。 のしかかってくるように近づく体。 慣れない仕草で押しつけてくる唇。 まったく、本当にいつまでもコイツは変わらない。 もう少し口づけぐらい、慣れればいいと言うのに。 その時間が終わると、幹也は顔を赤くしてそっぽを向く。 なぜかこんな時の幹也は何一つ喋ろうとしない。 だから私は幹也が何を考えているのか知るために、かすめるような口づけをした。 |
指が、撫ぜる。 優しく。 いやらしく。 強く。 柔らかく。 僕のペニスを撫で摩る。 唾液に塗れた幹を細い指が這いまわる。 くびれを指の先がくすぐる。 裏筋を指の腹が丹念になぞる。 露を滲ませた鈴口を爪が小さく抉る。 僕は小さく悲鳴をあげ続ける。 鮮花は妖艶な笑みで、僕を見つめている。 ああ、また……。 でも、出来ない。 体は鮮花の好きにさせよう、幾らでもどうとでも……。 それが、僕が僕に与えた―――、罰。 了 |
「いいかげん、帰ったらどうだ?」
さして熱意を込めずに言う。 「帰りません」 ふむ、迷いがない。 「イチゴさん」 お、これはこれは。 「すまんな」 しかし、そんなホストみたいな真似……。 「迷惑ですか?」 有間はほっとした顔をする。 「でも、いいのか?」 何を思い出しているのか、有間には珍しい表情。 小さく笑ったあたしを、有間は不思議そうに見つめていた。 了 |
ふわり、と。
体が宙に浮いた。 一瞬の浮遊感。 私はトンデいた。 私はずっと、見ていたかった。 何度空想したのだろう。 私は彼の声さえ、知らなかったのだ――。 ……その日、一粒の雨が降った。 ――巫条、霧絵と。 |
「あの橙子さん、どうしたんですこの絵?」
ある日、仕事場に出現した蒼い絵を眺めながら僕は橙子さんに向かってそんな問いを発する。 「ああ、なじみの美術館が閉館すると言うんで安く買い上げたんだ、昔から気に入っていた絵でね、そのために色々手放すことになったが、まぁしょうがない、買い手がつかず処分されるくらいなら・・・な」 橙子さんはそんな返答を返してきたけど、僕の視線は絵から離れない。 「ふーん、そうなんですか、しかし不思議な絵ですね。蒼く蒼くひたすらに蒼一色で、見ていると絵の中に沈んでいきそうなのに・・・」 「なのに心は浮かんでいく空虚そのものの空の景色、ほんとうに不思議な絵だよそれは、しかしそれ故にコレを描いた画家は生きている内に認められることはなかった―――死んでからだ、彼の絵が彼自身が一番見て欲しかった人種の手に渡らないような値段で取り引きされるようになったのは・・・」 そう皮肉げに語る橙子さんの声は心なしかどこか哀しげだった。 「皮肉な話ですね・・・」 「ああ、まったくだ。あるひとつの無駄を愚かと蔑み、ある一つの無駄を芸術と持てはやす、なぁ黒桐?その境目はどこにあるんだろうな・・・」 寂しげに紫煙を燻らせながら、橙子さんは僕と一緒に空の形をした蒼い虚無を眺めていた。 |
「ん……」 |
並んでの帰り道。 ちょっと恥ずかしがりながらも、秋葉は嬉しそうに俺と手を繋いでいたが 「あっ」 秋葉が急に立ち止まった。 「どうした?」 不思議に思って尋ねると、秋葉は困ったように俺を見る。 「あの……兄さんのが、中から垂れてきちゃって……」 成る程、恐らくさっき教室で膣に出した精液が零れてきたのだろう。 「ん? でも、下着とかで……」 言いかけるも、秋葉の瞳はそれを否定していた。 「……つけてません」 「え?」 その意味が一瞬分からず、俺はおかしな声をあげる。 秋葉は一度瞳を逸らしたが、正直に告白した。 「あんなに下着の上から濡らされたから、つけてないんです」 その言葉に、クラッとくるものがあった。 見たい。 確かめたい。 「秋葉……見せて。腿に精液を垂らしてる姿。スカートの下に何もつけてない姿」 見つめながら、自然に口が動いていた。 「でも……」 「ほら」 と、迷う秋葉に視線で合図を送り、振り向かせる。 俺達が進む筈のその先には、公園の入り口があった。そこなら…… 「見たいんだ、秋葉。いいだろ?」 耳元で優しく囁く。 秋葉は頬を染めながら、熱っぽい声で答えた。 「……はい」 |
夜の闇に包まれる、アトラスの地。
「よくも、志貴を横取りしてくれたわね」 白き真祖の姫は、紫髪の錬金術師と対峙する。 「真祖。 あなたの志貴への寵愛は理解しています。 「ふざけないでよ! この泥棒猫!」 愛する人を奪った女を切り裂こうと、鋭い鉤爪が迫る。 錬金術師は攻撃を避けながらも、握っているバレルレプリカを使おうとはしない。 「志貴は私とずっと一緒に戦ってきた! 「真祖……」 錬金術師は、瞬くまに路地へと追いつめられた。真祖の姫は金色の魔眼を輝かせ、彼女に迫る。 とどめをさそうとした真祖の姫は、途端に驚きの顔を見せた。 「え? 一つの体に、もうひとつの生命反応……。 まさか!」 錬金術師の体には、新しい命が宿っていた。 「そっか。 お腹に志貴の赤ちゃんがいるんだね」 真祖の姫は,その場に崩れ落ちて涙を流した。 「殺せない。 私には、殺せないよ……」 錬金術師は、真祖の姫を慈しむように、そっと優しく抱き寄せた。 |
「駄目よ、瀬尾」 鋭い声。 「そのまま口の中に留めておきなさいと、言ったでしょう?」 叱責ではなく、教え諭すような響き。 「じっくりと味わいなさい、すぐに飲み込んでは駄目。 晶は頷くが、声は出せない。 何をと戸惑う晶に笑いかけ、秋葉は閉じた唇に自分のそれを重ねた。 了 |
晴れた天気。 心地よい気温。 こんな休日は掃除をするに限る。 「兄さん、こちらのものは不必要です。捨てて下さい」 そして、昼食時。 たった一枚。 二人の少年と。 そのアルバムに納まっていた。 これは不必要なものなんかではない。 涙を拭いながら、秋葉は微笑み。 |
ふふふ、何もしていないのに。 もう、こんなになさっている。 本当に凄いですね、兄さん。 知らぬ振りをしていたのに。 ちゃんと私で欲情しているんですよね。 これは私に向けられているんですよね。 私の事を欲しいと思ってくださっいるんですよね。 私にこれからされる事に期待しているんですよね。 こんなに手に余る程大きくしているんですもの。 こんなに固くこちこちになっているんですもの。 熱くて脈打って。 膨らんで漲って。 いいですよ、どれだけ期待なさっても。 嫌だって言っても私が我慢できません。 私の自由にさせて頂くんです。 ここもここも秋葉のものです。 舌で。 指で。 何処もかしこも舐めまわして。 隅から隅までを弄りまわして。 顔中ををべたべたに汚して貰うんです。 口から溢れるほど迸らせて貰うんです。 本当に兄さんは嫌らしいですね。 まだ秋葉は何もしていないのに。 待ちきれないのですか。 早くと急かすのですか。 いいですよ、さあ始めま……、え? 了 |
その日も事務所は暇だった。 いい加減潰れそうなのだが、これがなかなか潰れない。 まあ事務員としてはありがたい事ではあるが、忙しい方がありがたい。 そんな訳で暇に飽かせて事務所のテレビをつける。 ちょうど刑事モノをやっていた。 「なんだ黒桐、刑事ドラマ好きなのか?」 毎日暇なせいで粗筋まで判ってしまうのが悲しい。 「所長はそういうのってありますか?」 聞いてみると、ふと思い出したように言う。 「刑事を目指したのも、そのドラマに感動したからだとか」 単純な話だが、いかにも大輔兄さんらしくもある。 「ところで、なんてドラマです? 太陽に吠えろ?」 ・ 「ギャバン」 |
「ただいま、式。アイスクリーム買ってきたけど……、って眠ってるのか」
反応が無いからどうしたのかと思ったら。 「にゃあ」 まだ寝ぼけ顔で、僕の言葉に頷き返す。 それはさておき、式猫はいつの間にか膝の上に頭乗せて、なおかつ眠ってしまったけど。 了 |
「やっぱり、俺の弓を見に来たんだろ?」 勘違いした男がそう言ってきた。 早朝から煩い相手に会ってしまった己の愚に溜息。 「前にも言ったとおり、私はあなたを見に来たわけじゃないわ。美綴さんに会いに来ただけだから」 そっけなく言ってその場を立ち去る。 校舎内を歩きながら、横にいるアーチャーが一言。 朝練をしていたのは、間桐慎二と美綴綾子の二人だけだった。 「これでアーチャーに一発殴らせてたら、もっと気分がよかったかもしれないわ」 アーチャーは肩を竦ませ、聞こえないように「本心だな」と呟いた。 |
目の前にあるのは究極の選択−− 「志貴さん」 「志貴様」 タナトスの花に囲まれて、惑う俺−− ベッドの上に身を横たえた俺を見下ろす二人に、俺の心臓は激しく波打っている。 そう、俺は選ばなければならない。 二人のうち、一人を−− −−ぎしっ ベッドが軋む。 「志貴さん、まだ、ですか?」 「志貴様」 だが、二人のうち一人を選ぶなんて、 「ダメですよ。志貴さん」 究極の選択に−−俺の背中に冷たい汗が流れた。 「さあ、選んでください。そうしないと風邪が治りませんよ」 左には琥珀さん特製 煙を出している自称風邪薬−− 「志貴さん」 天国を見るか、地獄を見るか−− |
ベットの上でシーツにくるまり身を寄せ合う二人 男と女の艶めかしい匂いがこのかび臭い部屋に漂う…。 「…式にばれたら殺されるなきっと」 幹也は火のついていないタバコを口に銜え、苦笑した。 するとさっきまで黙って幹也に身を預けていた女が口を開いた。 「安心しろ…ばれたらばれたで私が守ってやる」 女もベットの上に放ってあったマルボロの箱から一本タバコを取り出し口に銜えた。 シュボッ…というライターの音とともにタバコの先から弱々しい煙がたちのぼる 紫煙を吐く女の横顔に見惚れながらも幹也は不安を抑えきれなかった。 「でも、橙子さん僕は…」 「何度も同じことを言わせるな幹也…“私は尽くすタイプ”だ。お前は何も気にすることはない」 橙子の瞳が真っ直ぐ幹也を捉え、魅了する。 何も言えなくなり、幹也は橙子の瞳を見つめることしかできない。 蒼白い静寂が流れ、タバコから出る煙が虚空を漂う…。 そして幹也は…何かを受け入れ、そして何かを諦めて…橙子に身を捧げた。 「火、くれませんか……?」 「ああ……」 ジュッ……。 二本のタバコから出る紫煙が絡み合い薄汚い天井へ消えた。 |
中々寝付けなかったその夜、退屈しのぎに屋敷を探検していると窓辺に立っている彼女とばったり出会った。 「こんばんわ琥珀さん」 「あ、こんばんわ。珍しいですね、志貴さんがこんな時間に起きてるなんて」 「えぇ、今日は眠れなくて」 「不眠症ですか? だったらいい薬が」 「結構です」 懐から何か取り出そうとする手を機先を制して抑えた。命が惜しいので彼女の残念そうな顔は無視する。 「ところで琥珀さん、そっちこそここで何してるんです?」 「えぇ、見回りの途中だったんですけどここから見える月が凄く綺麗だったんで」 彼女が窓越しに見るその極彩の赤月は、綺麗というより不気味な気がバリバリにするのだが。 「な、なるほど、名月に心打たれてたって訳ですか」 「えぇ、それに……」 そこで一端言葉を切ると、琥珀さんは何故か毒婦の様な邪笑を浮かべた。 「赤い月の晩は何処かで誰かが悪巧みしてるって、ウォーレンさんも言ってますからね。私もそのひそみに倣って悪戯の一つや二つ企んでみようかと」 琥珀さん、貴女のソレは今日だけと言わず四六時中、しかも悪戯ってレベルじゃない気が激しくするのですが。 というか、ウォーレンさんとは一体誰ですか? |
「おーい、頼むから復活してくれ〜」 泣き言を言いながら十回目の起動を試みるが、ディスプレイは黒いままだった。 「どうした幹也?」 「いやどうも事務所の主力マシンが力尽きたらしいんだ」 そう言いつつも再起動を行ったが状況はやはり変わらない。最近忙しくてずっと酷使してたのが故障の原因かなぁ。 「はぁ困ったな。このままだと全然仕事にならないんだけど」 落胆しながらふと横を見ると、先程までソファーに身を沈めていた筈の式がいつの間にか傍に立っている。 「幹也、俺に任せろ」 「え、式これ」 シュッ。 直せるのかと聞くより早く、式は風切音を立てながらナイフを振り下ろしていた。勿論ノートパソコンは見事なまでに真っ二つだ。 ちなみに「随分とお盛んだったようだな」と橙子さんに笑われながら請求書を渡されたのは、その翌日の話である。 |
possibility
「兄さん」 |