Between Abysses and Hells


 昏い空に、月が朱い。
 夜の大気はひたすらに澄んでいて、不吉な月明かりも静かに受け容れている。視線を下ろせば、光の無い地平線が辛うじて見て取れる。月光に照らされているはずの大地も、墨で染めたように真っ暗。よっぽど高い場所らしく、まるで宙に浮いている気がする。
 ここが何処なのかは、判らない。だけど、状況は把握した。予想通り、途端に斜め後ろに気配がした。
「やっぱり、お前か」
 振り向いて、確かめる。夢に現われること数度目の、長い髪をしたアルクェイド。優雅な白の装いはいつもながら、しかし、ドレスそのものは初めて見るデザイン。顔かたちはアルクェイドに瓜二つだけど、狂気をもたらすような畏怖を纏っている。
「勝手に来ておいて『また』とはご挨拶だな」
 相変わらず高圧的、でも浮かべた微笑は暖か。
「勝手にって、お前が何かしたから来るんだろう? 大体、ここが何処なのかも知らないんだぞ、俺」
 言い返しながら、朱い月とかいう女を正面から眺める。色々と、アルクェイドから説明は聞いた。本当は朱い月と呼ぶのは正確ではなく、朱い月であるかも知れないアルクェイドの1つの相と言ったところで、ワラキア騒動の最後には半ば現われてもいたようだ。
 なんて言いつつ正直理解の他、でも姿だけなら、黄金の朝日のように髪を伸ばしたアルクェイド。
 体形もそっくりで、だから胸も大きくて。
 ……えーっと。胸元の開きが狭いながらも深く、谷間がたっぷりと見えている。注視していたのに気付いて、顔に目を戻した。
「いや、そうではない。おぬしが実際にここに居るのは私が許したからだが、ここまで来たのはお主自身だと言う意味でな」
「来たのは俺自身って、どうやって来るのか判らないんだけど」
「簡単に言うとな……味を占めておるのだ」
 少しも簡単じゃないけど、少し照れた様子と、もう少し不機嫌なのとは見て取れた。こいつが怒るって状況は想像したくないから、慎重に問い返す。
「味を占めるって、何のこと?」
 恥ずかしがる気配が顕わになりつつ、女は言う。
「おぬし、相当に女の乳が好きであろう?」
 ――――はい?
 絶句していたら、朱い月が続ける。
「今も、このあたりばかりに目を遊ばせておったし」
 腕を組んで豊かな胸を持ち上げ、余計に広くなった布地の隙間を指している。見ていたのは事実だし、そんな風に強調されちゃ、もっと見てしまう。
「この前も、アレと教会の女の乳を散々に揉み比べて楽しんでおったではないか」
「いや、そのっ」
 ずい、と近づいて来たから、谷間を上から覗きやすくなってしまい、目が吸い寄せられずには居られない。
「それで、この身の乳も確かめてみたいなどと不埒なこと考えて、遥々とやって来たのであろうが」
「いや、だから、何処なのかさえ何て知らないんだからさ、俺から来れるわけが」
「来たいと思えば充分だ、おぬしなら。それとも、こんなものに興味など無いと申すのか?」
 二の腕で両側から挟み付けて、手首当たりでそれぞれ持ち上げている。何をって、そりゃ、胸。ブラとかそういうのは着けてないらしくて、もうちょいで乳首が見えそう。知らず、ごくんって涎を飲み込んでいた。
「どうなのだ? 調べてみたくはないのか?」
 今度は片方ずつ手で掴むようにして、訊いてくる。
 いや、もちろん、とっても魅力的なわけで。
「してみたいです、はい」
 こんな状況で興味を示さない方が遙かに不健全だろう、などと主張してみる。だからって抑えなくて良いのかという点については、今までのこいつとのことからすればOKなんじゃないか、とか今度も主張してみた。
「そうであろう、ならば初めから素直にそう申せば良い」
 無体な仰せながら、別に損はしないしとか思う。
「しかし、どうせなら、教会の女の方も比べてみればどうだ」
 教会の女って、先輩のことだよな?
 思った途端に、真後ろに新しい気配。
 誰何する間もなく抱き付かれ、柔らかくて温かいものが背中に押し当てられて、つい、されるがまま。俺もシャツを着たきりの薄着だけど、この気持ちの良い感触、向こうはたぶん裸だ。果たして、胸の前に絡み付いてきた腕は剥き出し。力が篭って、背中に受けている膨らみの感触が更に刺激を増す。見覚えのある手だと思ったら、今度は肩の上に頭が出てくる。視界の端で、確かに先輩の髪らしい色が見えた。
「先輩?」
 返事は無くて、代わりに首に口を付けられた。軽く噛み付くみたいにして中で肌を嘗め回され、ぞくっと快感。長い髪が垂れて、太腿当たりを擽られている。
「何で、先輩……」
 ここまで言って気付いて、
「お前っ」
 慌てて、背中の女を振り払った。先輩のショートな髪が腿をくすぐるなんておかしい。そこに居たのは、前に先輩と一緒に見た悪夢の住人だった。
 これまた長い髪をした、ロアに宿られていた時の死徒としての先輩。足元まで包むマントみたいなのを着ているけど、開いた中は裸。
 身構える間もなく首に抱き付かれて、唇を寄せてくる。頭を引こうとしたら、朱い月と同じ血の色をした目で笑う。
「今さらキスが怖い訳じゃないでしょう?」
 元気だけど穏やかな先輩より、ずっと甘くて危険な香り。色っぽい声だなんて暢気に思ってしまい、キスを避け損ねて、唇が重なった途端に官能に融かされた。
「心配ない、浮き世さえ夢なのだ、せっかく用意してやった夢、楽しむが良い」
 朱い月が、何か言っていた。

 長い髪の先輩に、口付けられている。本物の先輩もキスは巧くて気持ち良いけど、今の感覚は魔性だ。小さく舌を絡めるだけで官能に脳天から腰まで貫かれて、思考が崩れる。体から何か吸い出されているかのような危うい快感。本当にクラリとして、腕の力が抜けてくずおれかけて、ちょうど胸に抱き止められた。二人とも膝立ちになっている。
「ふふ、好きなだけ楽しめば良いわ」
 マントの内側で、ぎゅっと頭の後ろから押えられて、胸の谷間に顔を埋める。柔らかくて瑞々しい肌に、顔を左右に揺すって擦りつけられててしまう。腕で外から挟み付けてくれているみたいで、柔肉の弾力が得も言われず。
 夢に決まってるんだしって言い訳を浮かべている。先輩にとっての一番の悪夢を相手にこんなことをって、ためらいはあったはず。だけどもう、屈していた。
 裸の腰の辺りを抱いて、上に撫で上げていく。オイルでも塗りたくったみたいに滑らかで、そのくせ吸い付くほど手に馴染む。脇腹の、先輩だったら弱いあたりに指を遊ばせたら、身を竦ませた。
「感じるところは先輩と同じなの?」
「似ているでしょうね、少なくとも。同じ躰だもの」
 期待しなかったのに、意外にも返事があった。少し緩めてくれた腕の下に潜り込んで、胸を目指す。
 先輩とは違った香りが肌を包んでいて、媚薬を嗅いでるみたいに溺れていく。手が胸に届いてそれぞれ丘を掴んで、握り締めたいのを我慢して、ゆっくり揉む。掌から痺れて、背筋まで響いていく感じ。確かに先輩のバストそっくりだとか思って、判断できる自分が可笑しくなる。おおらかで人当たりの柔らかな先輩らしい優しい大きなおっぱいで、その弾力は、指を押し返すのと同じように心弾ませてくれる。
 ふにゅんふにゅん……
 谷間の底にキスして、吸い付いて肌を味わう。美味しいとか言ったら先輩には笑われるけど、舌触りとか微かな汗の塩気とか、そんな先輩の味は存分に甘露。死徒としての躰であろうと、旨さは変わらなかった。
 キスマークを次々と付けて、おっぱいを食べる。早く乳首を吸いたくて、でも誘惑に耐えて顔を離す。それで初めて、裸の胸を見た。マントなんて着ていたって中が全裸だから、見たいようなところは惜しみなく見せてくれている。むしろ、こっそり素肌を独り占めしてる気分がして、滾る。
 視線を感じて見上げると、赤い目をした先輩が超然と笑っている。でも、薄く頬には朱が差してた。
「気持ち良い?」
 尋ねても、何を生意気な、みたいに笑われただけ。
 手を離して双丘をそれぞれ下から弾くと、ぽよんぽよんって楽しげに揺れる。色づいた乳首が対称に模様を描いて、誘っているみたい。
 また、ちょっと乱暴に掴んで乳首のあたりを摘み上げ、指先でくすぐる真似。死徒たる先輩は小さく口元を綻ばせる。にらめっこみたいになって、とぼけて、そのまま擽るポーズだけ続けて焦らす。触れてないのに、乳首がツンと尖ってくる。
 恥ずかしそうだけど目だけ睨んで来るし、我慢しきれなくなって、摘む。転がす。
「んっ」
 先輩の偽者が吐息を漏らす。
「別に、抑えなくて良いのに」
 思い切り指を動かして官能の塊を揉みしだき、たっぷり先っぽも可愛がってあげる。
「あふっ……」
 はっきり声を上げているのに、まだ澄ました顔をしていようとしている。でも、しっかり感じてるはず、もう乳首がまともに硬く尖っているんだから。ソフトボールみたいに掴んで変形を楽しみ、丸みを撫でまわして、薄く湿った肌を堪能する。
「吸ったりしても良いのよ、遠野くん」
 馬鹿にした口ぶりながら、微かに上ずった調子。吸って欲しいの? なんて聞き返しつつ、素直にお誘いに答えて、すっかり円錐の乳首を口に含む。
「んふっ」
 唇で挟んで、舌先で転がす。きめ細かな肌のさらさらした感触とは対照的な、つるりとした粘膜質。口を離したら唾が糸を引いていた。もう一方に移って、残した方は指に任せる。
「ふふ、素敵……」
 ぐいっと左右から寄せて、二つの乳首を一緒に口にする。
「んんっ……ぁん……」
 谷間に顔を戻して、乳首を責めながら、もう一回ふくらみの柔かさと弾力を確かめた。 先輩の偽物が頭を抱いてくれる。息苦しいほど強く抱き締めて、
「名残惜しいでしょうけど、一度交代ね」
 と、胸から引き離す。別の手が伸びて来て、顔を横に向けられる。
「夢中になりおって、このスケベが。相手は教会の女にとって酷い悪夢なのだぞ?」
 朱い月が、何故か拗ねたみたいに笑っている。いや、先輩の悪夢なのは良く知っているけど、気持ち良いのは仕方が……
「お前が仕組んだことなんだろ」
「ふふ、その通りであるがな。この身にしても、アレには悪夢であろうし」
 話しながら目線を横にやったら、先輩の偽物は姿を消している。でも、確かめる間もなく、
「こら、余所見をするな」
 なんて頭を掴まれた。ついでに少し俯かされて、ちょうど朱い月の胸元を見てしまう。
「したいことは、して構わんぞ。こちらからはまだ何もしてやらんが、ソレとは違ってな」
 これまた、露骨にお誘い頂いているようで。在り難くお受けした。ドレスの布地越しに持ち上げるように掴む。ずっしり手に重みを感じるほどの量感。二、三度揉んで、すぐ堪えられなくなって、強引に服を引き下ろした。
「せっかちめ」
 ちょっと怒ってるみたいだけど、気にかける余裕は無くしてる。
 余すところ無く披露頂いたバストには、欲情に駆られて脱がしたのに、触れるのを束の間ためらった。それぐらい、奇跡のように綺麗。全体としては丸いけど乳首のある斜め上に向かって尖った形が二つ並んで、淡い月光しか照らしていないのに目映いばかり。アルクェイドと同じだとは思うけど、こいつのお姫様な空気のせいか、妙に神々しい。
 それでも、すぐに触りたいって欲求が戻ってくるのは雄の宿命。涎を垂らしそうになりながら、手を押し当てた。
「ふふっ」
 初めの一瞬、指から逃げるみたいに柔かいくせに、すぐ弾き返してくる。だから、捕まえようとしても敵わない。しばし奮闘して諦め、そっと撫でてみたら、今度は従順に指に従ってくれる。肌の張りが強くて、すべすべ。相性が良くて掌にくっついてしまいそう。
 衝動を抑えて、ちょっとだけ立っているらしい乳首の周りをくるくると指で辿る。揉みまくった間に触れてはいただろうけど、まだ、まともには可愛がってない。
「えっちだな、期待で乳首硬くしてるの?」
 返事は無いけど、急に頬を赤くした。アルクェイドみたいにあっけらかんと笑いはしないけど、こいつの抑えた照れ笑いは愛らしい。
 綺麗な珊瑚色の小粒を食べたくなって、まだ焦らしてやろうと顔を丘に押し当てる。口を思い切り開けて、かぷ、かぷってあっちこっち食いつく。舌を這わせまくって、味を調べる。
「まったく、本当に好きなのだな、女の乳が」
 そうまともに言われると、流石に恥ずかしい。だから、乳首をきゅっと摘んでやる。
「つっ……優しくしろ、馬鹿者」
「ははは、ごめん」
 そしてやっと、天辺に口付けた。
「んっ……ふふ……」
 すぐ硬くなって来て、ぐにぐにした舌触りが快い。やっぱり、味なんてするわけは無いのだけど、美味しいと思う。ひとしきり楽しんで、もう一方と味を比べてやる。鼻を寄せて、わざと音を立てて匂いを嗅いだりする。果実めいた芳香が霞みばかりに感じられた。
「妙なことをするな」
 楽しんでいたら抱き締められてしまい、こっちの乳首は吸い損ねた。しょうがないから両側から押して、たっぷり頬で温もりを賞味する。もう、全身が沈み込んで包まれて溺れてしまいそうで、それも気持ち良いかもとか考えている。
 乳首に頬っぺたを擦りつけてたら、尖って来るのが判る。隙を突いて、やっと唇で挟んでやる。
「口も吸わずに……」
 呟いているのが聞こえて、その通りなのに気付いた。拗ねた感じだったのって、そのせいかもと思い、頭を上げた。取り澄まして、でもちょっと嬉しそうな朱い月の唇を求める。悠然と笑って目を閉じてくれるから、悪戯で顎をぺろっと舐めてやる。びっくりして目を開けた所を狙って口付けた。
 舌を入れて来るのにあわせて、少し休めていた指で乳首をまた弄り倒す。頭を抱く手に力が入ってちょっと痛い。こいつの舌は、ほんとに甘い気がする。流し込んでくる唾液が美味しくて、嬉々として飲む。
 息苦しくなって一度離れてまた接吻しようとしたら、さっきと同じように別の手に横を向かされる。
「そろそろ次に進んで良いでしょう?」
 妖艶に笑う、長い髪をした先輩。
「焦るでない。とは言え、その通りだな」
 死徒な先輩は俺の片手を朱い月のバストから剥がし、引っ張る。導く先は、自分の胸。つまり、並んだ二人のおっぱいに片っ方ずつ触れることに。
 自分の姿を把握して、猛烈に照れた。アルクェイドと先輩にしても、ここまで明白に触り比べる格好にはならなかった。それでも、そんなことには構い無く手は勝手にそれぞれ愛で始めている。きっと顔は熱くて真っ赤、でも指の動きは止まらない。目線は残り一個ずつの膨らみを行ったり来たり。同じように麗しい肌も、象牙細工と白真珠。中心に載せられた愛らしい実は、サクランボとかイチゴとか。
「遠野くんとしては、どちらの胸が好きかしら?」
 ロアたる先輩が訊いてくる。
「よく考えて答えるのだ、心行くまで比べて良いのでな」
 二人とも、笑っているけど眼が怖い。どう答えたにせよ、選ばなかった方から何をされるか。こりゃ命懸けだなって思いつつ、指は休み無く蠢いて楽しんでいる。朱い月の方が張り詰めた感じ、先輩の偽者の方はねっとりと柔らか。乳首は先輩のがコリコリして楽しいけど、アルクェイドの方が敏感みたい。手に受ける量感は右が上、でも左手の方が愉悦に痺れている。さらりと掌の滑る肌と、しっとりと馴染む肌。熱いぐらいになっていたり、優しく温かだったり。何もかも、やっぱり全部違っていて、身の安全のための策を考えなきゃならないのなんて頭から吹き飛ぶ。
「えーっと……」
 どうにも手は止まらないながら、どうして良いのやら。
「どうした?」
 抱き寄せられて、胸に顔が密着。
「ふふふ、気持ち良いでしょう?」
 くっついて並んだ二人のおっぱいの間に挟まれる。外側の二つを揉みながら内側のに顔を埋めた格好で、もう何も言えなくなる。間抜けな姿だろうけど、そんなこと知るものか。一皮向けば死が詰まっていようと、向かなければ良いだけ。
 体を揺すられて、むにむに顔に擦り付けられる。息が出来ない。やっぱり、どこか違う肌触り。微かな香気のハーモニー。頬に触れる乳首に気付いて、口を寄せてパクッてする。こっちは朱い月、舐めるとまた硬くなる。
「んふっ」
 つい、ちょっと歯を立ててしまい、また優しくしろって怒られる。かなり感じてるっぽい声で、耳に融けて甘く流れ込む。
「あら、こっちは噛んでも良いわよ?」
 今度はロアな先輩が俺の口に乳首を押し込んだ。言葉に甘えて歯で挟み、先っぽを舌で擽る。
「あぁっ……」
 しゃぶっていたら朱い月に押し放され、口を開けさせられて、二人の乳首を揃えて一緒に含ませられる。馬鹿みたいだとは思いつつ舐めまくり、指でも責めた。
「くふっ……それで、人間?」
「あん……どちらが良いの? 遠野くん」
 そうだった。
「いやあ、何とも甲乙つけ難く……」
 殺されないための手立ては……
「さては遠野くん、なるべく答えるのを先送りにするつもりでしょう?」
 それはそうだ、時間を稼がないと。そうすれば、
「長いこと、こうして乳に溺れていられるのだからなあ?」
 そう、出来るだけ長くこうして……て、
「違うっ」
 ホントに一瞬、言われた通りのことを考えていた。
「違うのか? まだ判らんといえば、もっと色々と比べられるのだぞ?」
「お前ら、どっちを選んだって後が怖いじゃないかっ」
 とうとう、言ってしまう。
 先輩の姿の悪夢は平然と笑うけど、朱い月はびっくりした様子。
「いや、別にそのようなことは……なあ?」
「ええ、遠野くんに酷いことなんて。でも、エレイシアのことはどうかしらね、ちょっとそれが心配だわ……ふふふ、だから、遠慮なく答えてちょうだい?」
 先輩のことって。俺の夢なのに先輩がどうこうってことは無いと思うけど、しかし、リスクは負えないし。
「困ったやつだな、そんなことを言って脅しおって。安心せい、私は選ばれなくても化けて出たりはせん。ふむ、まあ、おぬしはここから帰る方法は知らんのだと思うが、小さなことであろう?」
 華やかに笑って脅されながら、やっぱり手は休めてなかった。死ぬと判って飛び込まずには居られなかった甘露な死の罠だ。黙りこくってしまい、でも揉み続けてて、そのうちやっぱり顔まで押し当てている。獲物を誘う蜜の香りに脳天まで侵されている。
「おぬし、答えんつもりだな?」
「お楽しみなのね。しょうがない、もっと追い詰めてあげるわ」
 いきなり押し剥がされて、そのまま後ろに転ばされた。尻餅をついた場所は床よりは高くて、背の低いストレッチャーみたいなところに仰向けにされる。ぴったり体ぐらいの、幅の狭い寝台だ。

「節操のないやつだな」
 寝かされた俺の腰の辺りを見て、朱い月が言っている。そこには、イチモツを柱にズボンがテントを張ってた。
「今度はこっちで評価して貰うわ」
 あっさりパンツまで引き下ろされて、反り返るようにペニスがいきり立つ。
「今度こそちゃんと選ぶのだぞ?」
 言う間に脚を開かされ、長髪の先輩が股間に顔を埋めるよう袋を片方、口に含んだ。息を飲むうちに、もう一方が朱い月の唇に納まる。
「ぁうっ」
 いきなり、内蔵を掻き回される気分、気持ち良いけど指先までびくびく痙攣する。二人の手がシャフトに絡んで、洗うみたいに登っていく。それと一緒に、息を詰まらされる。下手に呼吸したら、途端に果てそうで。
 指が籠を作って先端を包み、でもじっとしてる。息を整えようと足掻いていたら、訊かれた。
「して欲しい?」
「はいっ」
 思わず、即答。でもまだ、してくれない。代わりに舌が跳ね回って、どんどん沸騰していく感じ。温度は上がっていくけど満たされない。
「すけべ」
 からかわれても、快感と焦れったいのとで何も言う余裕無し。そこから不意に何本もの指にいっぺんに亀頭をくすぐられて、また全身、びくんってなる。それから二人一緒に睾丸を吐き出し、唇で竿を登り出す。舌は出してくれず、これも焦れったいやら気持ち良いやら。先っぽと袋とを指で責められつつ、その間は口に狙われている。
 とんでもなく綺麗な顔が2つ並んで、俺のものに恍惚としてる。やっとペロリと舌を這わされ、何度目か判らないけど体が震えた。解禁の途端、左右からしゃぶりまくられる。争ってイチモツに唾液を塗りたくってくる。染み出した俺の液と混ざって、ドロドロになっていく。
 かぷ、と唇で傘のあたりを挟む。舌先で集中攻撃。尿道に口を付けて先走りの液を吸い出される。こんな美人が夢中でやってるわけで、吼え哮ってしまいたくなる。
「くぅぅ」
 朱い月が先っぽを飲み込み、先輩の偽物がシャフトを横向きにくわえる。まだ玉は指で弄ばれている。全身の血がヘソの下に集まってくるみたいで、唇を噛んで堪える。朱い月に更に奥まで飲み込まれ、追いやられた先輩の偽物は再び袋に口を寄せる。役目の無くなった手が、それぞれ内腿とか腰とかをさすり始める。包囲を固められて、破裂の圧力が溜まっていく。
「あぅっ」
 穂先が喉に当たってる。唇に根本をしごかれて、血がもっと亀頭に寄っていく気がする。偽の先輩に喰われた睾丸で精子が出口を求めて暴れている。朱い月が、頬を凹ませて吸いながら舌を蠢かす。頭を上下させて、喉まで突かせてくれる。必死で尻とか力を込めるけど、あっさりともう、限度。
 いく……
 思った途端、ギュって根本を締められた。
「はぅっ」
 先輩の顔の女が妖艶に笑う。アルクェイドの顔の女は、ますます速く頭を上下している。声も出なくて、握った手の爪が掌に食い込み、でもそんな痛みはまるで無意味。
「いかせ、てっ」
 交換条件を出されたら、すぐに何でも飲んでしまいそうだ。くすっと笑っただけで先輩の偽物は指の力を緩めてくれたけど、朱い月は顔を上げてしまう。余韻だけで放ってやろうとしたのに、またキュっと握られて阻止される。繰り返されるうち、吼え哮っていた射精感は引いてしまい、生殺された疼きだけ体に残る。
「こういう意地悪は遠野くんも得意よね」
 そういう意地悪をする笑い顔だけは、雰囲気まで先輩そのものだった。
 それから、ペニスに頬ずりを始める。刺激は弱くてもどかしいけど、吸い付かんばかりの肌は気持ち良いし、うっとりした姿はなかなかに眼福。こんなに色んなことしてくれるのが誇らしいというのか、いっそ男冥利に尽きるとでも言うのか。
 対抗するみたいに反対側から朱い月も顔を寄せてきて、少し膨らませた頬で左右からサンドイッチされる。柔らかな膨らみに挟まれて、僅かに鎮まっていた亀頭がまた大きくなる。
 合わせるように、顔を傾けてまた口を使い始めた。左右から半分づつくわえて、根本から先端まで行ったり来たり。同じように舐めててもやっぱり感触は違う気がする。そのせいか全然慣れなくて毎ストロークが有効打。あっという間に、また逝きそうになっている。
 気付いたのか、二人とも妖しい笑いを見せていた。
「頼むから、今度は逝かせて……」
 一応は、承諾らしきものを得る。
 ひたすら傘のトコだけを舌先でちろちろと舐め続ける気持ち良いけど拷問みたいな責めの後、先輩の偽物が口に受け容れてくれる。亀頭の返しを唇でぴったり包み、小さく激しく往復する。思い切り吸われている。尿道に舌をねじ込まれている。朱い月はは玉を舐りながら、竿を両手の指で扱いて擽って。
 リズムが変わっていって、時折強烈に共振して叫びそうになる。
 先輩の顔の女が視線だけくれて、俺の手を掴んで胸にむぎゅって押し当てる。指先から官能に蝕まれる。気付いたら、朱い月の胸にも触れていた。
 猛烈な快感も股間だけだったから保っていたのに、快美な電撃を手にまで受けて、もう成す術なし。血が足りなくて目が霞む。肉の膨らみを揉んでいるだけで達しそう、なんい終わらない。
 やっぱり根元を握られていた。緩んだ途端、腹の中が溶鉱炉。
 熱い。
 カウントダウン。自分の呻くのが聞こえた。女たちの口から漏れる水音と、僅かの間を惜しむ息の音。こっちにも刺激が欲しいみたいに、つま先までビクビクする。臍やらお尻やらなんかその辺りでギュルギュル回ってるみたい。
 絡み付く指、熱い舌、とろける唇。握り締めた手の中に、天上の美味たる熟れた仙果。ほとんど失神しながら、それでも乳首を探し出して、コリコリと擽っていた。
 攻撃のリズムが揃う。完璧に共振してロック。ひたすら増幅。際限なく追随。全知覚が快感だけで塗り潰されて。
 破裂。
 とっくに煮えたぎっていた精が、狭い筒から噴出する。顔を退けられて、存分に飛び出した。大量に、呆れるぐらい、大噴火して飛んでいく。下腹部に溜まっていた血が大方出ていったかとか思うぐらい、あんまり気持ち良くて意識まで飛ぶ。
 束の間、ほんとに貧血みたいに視野が霞んで、やっと回復したら、目の前には顔から胸まで白いものを付けた姿の朱い月がいた。
「まったく、気持ち良く飛ばせるように離れてやったのに、結局上手いこと掛けおって」
 わざわざ待っていたのか、そう言ってから指で俺の精を集めて口に運んでいく。先輩の悪夢がその胸元に口を寄せて、張り付いていた精を舐め取った。気恥ずかしい思いで見ていたら、今度はまたペニスの先を吸われて吼える。体の中を吸い尽くすつもりかとか思い、呆れたことにまだ何か出て行くみたいで、どくどく、もう苦痛だか悦楽だか。
 二人並んで、口を開けてみせる。同じぐらいに、白いもので満たされていた。
「それで、遠野くん。今のは、どっちが良くて逝ったのかしら?」
 集めた精を朱い月に口移した後、訊いてくる。
「いや、どっちって言われても」
 二人掛かりだったからこその興奮とか快感なわけで。
「そう、まだ足りないって言うのね」
 空恐ろしく笑い、また朱い月と口付ける。今度は、精子を受け取ったみたい。
「そうか、納得せんつもりなのだな」
「いや、別にそんな……」
「そんな、ことはないか?」
 またキスして、白い粘液をやりとりしてる。見せつけられるたび、いやらしくて猛るけど恥ずかしい思いも増すばかり。
「いいわ、遠野くんの、美味しいし。気が済むまでしてあげましょう?」
「うむ」
 二人して、喉を鳴らす。飲み込んだのが見て取れた。
 こちらに流し目を送りながら、キスし始める。舌の動きを見せつけられて、こっちは生唾を飲む。
 手を胸に当てて、揺らして誘ってくる。こっち側のおっぱいに、俺が握って付けてしまったらしい紅い鬱血と爪跡を見つける。
 ――――それが、血を連想させたのか。予知夢のように、ペニスから血を噴き出すところを見たような気が、した。

 

 

/Between Abysses and Hells ・了

 

 


 

 「姫アルクと闇シエルとが相手の3Pなら何でも良かった……」的ネタで、某所の企画に書いたものの完成版のようなもの。あと、Between Heavens and Paradises の裏版ってことにもなりますね。

 いや、Wパイズリーまで書く気力が無くなり……^^; なので、下のメールフォームでアンケートしておきます。二人がかりでパイズリして貰うネタなら、アルク&シエルと 姫アルク&闇シエルとではどちらが良いですか? まあ、その他 を選んで好きなキャラを書いてくださってもかまいません(らっきょやFate のキャラでも良し)。

 

草紙 に戻る

©Syunsuke