◇ Round 2

 アルクェイドが秋葉を抱き締めたまま体を半回転させ、志貴とは反対側に移動させた。未だ秋葉は先の快楽に陶然としていて、何をされたのか判っていない。
「ゆっくり休んでて良いよ」
 頬に軽く口をつけ、アルクェイドが囁く。
「はい……ありがとうございます」
 何を言われているのかも良く把握していない秋葉の視界の中で、アルクェイドは志貴に近寄り、抱き付く。
「私の番って言ったけど、むしろ志貴の番よね、まだ逝ってないんだし。たっぷり、してあげる」
 上に重なって、また口付ける。
 ちゅぷっ、ぴちゃ、くちゅっ
 わざとらしいほど音をたてて、深く舌を絡めるよりは吸い付き合うように接吻する。舌を伸ばすのも、唇を舐めあうためだ。頻繁に顔の向きを入れ替え、唾の糸を張り、互いの口に唾液を行ったり来たりさせる。
 そんな様子を、秋葉はぼんやりと眺めていた。酔ったように頭が働かず、神経が途切れたみたいに体も動かない。
 愛しい人が美しい人とキスしてる。嫉妬しながら、兄の相手がこの上なく綺麗なのは不思議に誇らしい。
 羨ましい。金髪の麗しき女性はキスを繰り返しながら、時折秋葉を見遣る。目が合ったら、ウインクして見せさえした。促されるようにして、志貴も秋葉の方を見る。
 挑発されて悋気の火が点き、二人に迫ろうとするものの、二人がかりで蕩かされた体はまだ言うことを聞いてくれない。思い出しただけで恍惚とする。下手に近付いたら、また同じ目に遭いそうな気がする。
 アルクェイドは秋葉に向かって艶然と微笑み、志貴の首筋に噛み付くように口を寄せる。それから、もっと口付ける位置を下げていき、胸元に残る古傷に至る。うっとりと頬を寄せ、滑らせる。慈しんで唇を触れさせる。癒すように撫でる。間違いなく愛撫と呼べる行為ながら、そこにセクシュアルな匂いは皆無で、ただ愛情だけがほとんど目に見えた。
 いったん体を離し、今度は幾分濃い色をした乳首に口が辿り着く。朱い唇から覗く肉色の舌が志貴の小さな乳首を小刻みに舐め始めると、志貴は小さく喘いだ。秋葉に近い方の乳首を一頻り愛撫すると、反対側に移る。その間に、また秋葉に向かって笑う。自分の指を順に二本吸って見せながら。
 秋葉は、先の快楽を怖れつつ、もっと欲しいと願っているのに気付いた。
 兄を悦ばせるのは自分なんだと、対抗心が湧く。
 絶頂の余韻も次第に引いてきて、次を求め出す。
「独り占めはずるいです、アルクェイドさん」
 それだけ言って、這うようにして近付いた。
「ぅ、ぁ、」
 志貴は、アルクェイドに乳首を据われて小さく呻いている。秋葉も顔を寄せ、アルクェイドの指を追い払う。真似をしているみたいで悔しいけど、傷跡に頬擦りし、色でも塗るみたいに一面に指を這わせ、口付ける。一通り済ませるまで、アルクェイドは待ってくれた。
 それから、ふたり同時に左右の乳首にキスする。
「くぅっ」
 志貴の声が大きくなり、感じてくれたんだろうと秋葉も思う。兄が喜ぶのは嬉しい。乳首に残っているアルクェイドの唾液を全部除いてしまおうと、熱心に舌を使う。唾を出来るだけ多くつけ、丁寧に吸い戻して飲み込む。小さな突起が硬くなっている。
 志貴が手を動かし、秋葉の胸に触れた。乳首を探り当てて、くすぐり始める。
「あ……っ」
 快感が駆ける。まだ残る余韻に共鳴するように、高まる。
「んふっ」
 アルクェイドも甘い息を吐いた。見えないながら、同じようなことをして貰っているのだろう。
 男の人ですし、私ほどには感じないのでしょうね、ここも。
 自分が同時に両方を舐められたりしたらどうなってしまうかは、さっき思い知ったばかりだ。
 アルクェイドが自分で乳房を掴み、先端を突き出して志貴の乳首に押し当て、転がしあっている。秋葉にはそんな風にはできないながら、同じように体を寄せて乳首同士触れ合わせる。二人とも硬く勃起していたから、ちゃんと刺激し合えた。
「あっ……ふ」
「んんっ」
 女二人、吐息が唱和した。
 アルクェイドが胸に集中している隙に、秋葉は静かに下に手を伸ばした。いきり立った性器に触れ、その逞しさに熱くなる。そういえば、兄はまだ射精していないのだ。
「ふ、くぁっ」
 志貴が喘いだせいだろうか、アルクェイドが秋葉のしていることに気付いたようで、同じように手を出した。
「妹こそ、ずるいじゃない」
 二人の女の手が、志貴のペニスを愛撫し始める。耐えようとしているのか、志貴は全身をびくりと震わせる。先に先端を秋葉が握っていたから、アルクェイドは陰嚢を包み込んで柔らかに弄ぶ。
 二人して腰の近くに顔を寄せた。
 すぐに口を近づけた秋葉をアルクェイドが止める。
「舐めてあげるの、好き?」
 とんでもないことを直截に問われて赤面しつつ、否と言ったらさせてもらえない気がして、やがて答える。
「はい」
 口唇奉仕が好きなのは紛れも無い事実だけれど。
「舐めてもらうのも好きでしょ?」
 口に出せず、ただ頷く。
「ふふ、わたしも好き。でも、妹も、いっつも焦らして苛められるでしょ?」
「……そうですね」
 アルクェイドの意図が判らず、羞恥ばかり掻き立てられつつも律儀に答えていた。
「じゃあ、今日は二人で仕返ししない?」
 囁かれて、一瞬きょとんとして、にっこりと笑って秋葉は同意した。
「ふふふ、兄さんはここが弱いんですよ」
 尿道口のすぐ横のエラの部分を指先でなぞりつつ、秋葉が笑う。言葉を裏付けるように、志貴が息を飲んだのが判る。自分と恋敵と、どちらが愛しい人のことを良く知っているのかを競うような気分だった。
「こうするのよ」
 アルクェイドが言い、亀頭を包むように手を当てて親指と中指て秋葉の触れていた場所を左右同時に擽りつつ、人差し指で中央を突付く。
 志貴が力を込めているのが判る。
「こっちもしてあげないと駄目です」
 アルクェイドの手の下に指を差し入れ、反対側の傘の部分を刺激してやる。
 おかしな気分。目の前の女性は、競争相手だけど戦友なのだ。いつも、嫉妬に身を焦がしたり眠れない夜を過ごしたりさせられているのは相手も同じだ。いざ、抱かれたときに、焦らされたり容赦ない愛撫に身も世も無く啼かされれたりするのも同じだろう。その元凶たる男に一緒に逆襲してやるのも悪くない。
「志貴、こういうのも好きよね?」
 ペニスの裏側に四本の指の腹をあて、擽りながら上下に往復する。
「ふふ、じゃあ、私はこちらを」
 秋葉は精巣を揉み始める。
 女二人とも、自分の急所を粗方志貴に知られているのと同じように、自分を快楽で苛む男の弱点を心得てもいた。逞しいとは言え、絶対的な面積がそう広いわけでもない性器を儚げな美少女と華やかな美女の二十本の指に愛撫され、志貴の体ははびくびくと快楽を訴えている。何か口にしたら果ててしまうと予感しているのか、何も話さない。
「妹?」
 この呼び方を嫌っていたはずなのに。思いながらも、秋葉は顔を上げる。途端に、キスされた。ペニスを愛する手を片方離して、頭を抱き寄せられる。志貴としていたような触れたり離れたりを繰り返す口付けは、呼び方なんて小さなことだと思わせてくれる。
 二人分の唾液をペニスの先端に垂らし、二人とも指一本づつだけを出して亀頭をマッサージする。
「兄さんの、びくびくしてる」
 陰嚢を掬い上げては落としながら、秋葉が笑う。
「ねえ、志貴?」
 アルクェイドは不意に話し掛ける。
「く、何だ?」
 快感に耐えつつ、答える。
「口でして欲しい?」
「して欲しい」
 答えを聞いて笑い、秋葉に囁く。
「妹も、いっつも恥ずかしいおねだりさせられる?」
「……はい」
 思い出して、それだけでまた羞恥に染まる。
「じゃあ、志貴に好きなこと言わせる権利は妹に譲ってあげる」
 一瞬、復讐の快感を覚えながらも、その実アルクェイドには自分が恥ずかしいことを言わされようとしているのに気付く。
 嗜虐と被虐の混ざった感覚は酷く官能的だった。
「ふふふ、兄さん、私たちに口で愛撫してもらいたいんですね?」
「うん」
「駄目です、返事はきちんと『はい』と」
「……はい」
「何をどうして欲しいのか、ちゃんとおっしゃってください」
 アルクェイドの妖艶な笑顔を目の前にして、被虐とも嗜虐ともともつかない快感に酔いながら言葉を紡ぐ。
 躊躇う様子の志貴に、秋葉は一瞬だけ舌先をペニスに触れさせた。
「言わないとしてあげないからね、志貴?」
 言って、アルクェイドは秋葉とまたキスして濡れた音をあげる。
「口でして、欲しい」
 やっとそれだけ、志貴が口にした。
「口で何をして欲しいのです? そんな言い方では判りません」
 また一瞬、今度はアルクェイドがペロリと舐めた。
「フェラチオ、して欲しい」
「誰におっしゃってるんです?」
 今度は指で弄ぶばかり。
「秋葉と、アルクェイドにフェラチオして欲しい」
「いやらしいんですね、兄さんは。二人の女性に同時にそんなことを求めるなんて」
 それだけ言うと、秋葉は一息に志貴を口に含んだ。
「あ、また、ずるーい」
 出遅れたアルクェイドは、根元付近を横向きに咥えた。
 少し遠慮して、秋葉はあまり深くは咥えず、先端の方で小さめに往復する。尿道口付近に繰り返し舌を這わせる。時々、大きく回して亀頭全体を味わう。本当に味などするわけも無いのだが、いつも己を快楽責めにする凶器の先端が舌に心地良くて、美味に思える。
 アルクェイドは、首を左右に振って竿を愛撫している。舌を上に下に動かし、シャフトの隅々まで隈なく唾液を配給する。裏側の方が弱いことを知っているから、焦らしてみたり、逆に息を吐かせないほど集中したり。
 喘ぎ喘ぎ、女二人の熱い愛撫に志貴はよく耐えていた。
 脚を大きく開かせて、アルクェイドが睾丸を口にする。ペニスの先端から離れ、秋葉も反対側のを口に含んだ。噛んでしまわないように注意しながら、二人で同時に精液の工場を慰労してやる。
 近付いた鼻に、蒸れたような汗の匂いがした。
 兄さんの匂い。こんなの、普通だったら不快なんだろうな。
 そう思いながら、嬉しくて鼓動を速めている。
 だって、兄さんの匂いなんですから。
 恭しいような手付きで持ち上げ、二人交代で裏側を丁寧に舐めて登って行く。
 片手づつ内腿に当て、擦って脚の付け根近くにまで至り、丹念に揉む。
 私もこんな匂いさせてたら嫌だな……でも、ひょっとしたら兄さんも私みたいに喜んでくれるのかな。
 二人で左右から挟むようにペニスを咥えて、ゆっくり登る。屋根に着く直前で止まり、降りる。向かい合う角度を少しだけ変えて、同じことの繰り返し。
 自分は焦らして楽しむくせに、と、秋葉は思う。
 触れて欲しいところには中々触れてくれない。快感より羞恥が上回るから止めて欲しいことは一つ残さずされてしまう。その快感に酔って、燃え上がった体はどうしたって愛しい男の愛撫を要するのだ。して欲しくて、もどかしくて、我慢なんて出来ない。判っていて、男は女が懇願するまで与えてくれないのだ。何度繰り返したって、羞恥に泣きそうになる。それなのに、その羞恥まで快感に思えて、そんなこともとっくに男は知っているのだろう。
 だから、今日は少しだけ、復讐。
「ああっ」
 呻いて、志貴が手で二人の頭を押えようとする。
「駄目よ、乱暴にしても二人は押えられないわよ」
 アルクェイドが言っている。やっぱり、いつも同じような目に遭っているのだろう。
 アルクェイドは睾丸に戻り、秋葉は竿だけを愛撫しつづける。ほんの時折、尿道口とその周囲を舐めてやるだけ。
「あき、は」
 志貴が切羽詰った声を発する。
「何ですか? 兄さん」
 対して、秋葉は涼しげに答えた。
「いや、だから、他のところも舐めて欲しいんだけど」
「他って、何処ですか?」
 いつもとは立場が逆の会話を堪能する。思い出して、亀頭に指を当てて尿道をくつろげ、間に細く息を吹きかける。
「く、ぅあっ」
「ほら、ちゃんとおっしゃって下さらないと判りません」
「その、ペニスの先っぽの方とか、全体っ」
 あっさり言われて、少しだけ残念に思いながら、それでも嬉々として秋葉は鈴口に唇を付ける。舌を当てず、唇だけで挟み、繰り返し位置を変えていく。
 アルクェイドが倣って口を寄せた。
「駄目ですよ、兄さんは私にしか言っていないのですから」
 言われて、笑いながらもアルクェイドは続けた。二人して、男の先端を両側から口に含む。盛んに舌を使い、溶かそうとするかのように舐めまわす。時々互いの舌が触れるのが快い刺激だった。
 アルクェイドは根元に手を添え、秋葉は精巣を握る。交代々々に先端を頬張り、横咥えに幹を愛撫する。二人に愛される性器は二人分の唾液に塗れていく。
「志貴、そろそろ逝きそうなんでしょ?」
 アルクェイドが笑い、睾丸を含んで唇と舌でマッサージしてやる。同時に、まっすぐ咥えていた秋葉が頭の動きを速め、ストロークも長くする。
「うぁあっ」
 口の中で亀頭が更に膨らむのを秋葉は感じた。根元に沿えた指に、ペニスの脈動を感じる。
「くぅぅ」
 アルクェイドと目配せで通じ合い、決定的瞬間に二人とも静止する。
「あぁ?」
 射精の直前で愛撫を止められて、志貴は悲鳴めいた声を出す。
「うふふ」
「えへへ」
 女二人、にやにやと笑う。また息だけ吹きかけたり、触れるか触れないかで指を使ったりしながら、幾分ペニスが大人しくなるのを待った。
 ちゅ、と女同士キスして、先とは逆にアルクェイドがペニスを含み、秋葉が精巣を舐め始める。
「そういうことして楽しむの俺も止めるからっ、素直に逝かせてっ」
「んー、別に、あれも気持ち良いから止めなくても良いよ?」
 志貴の懇願は、あっさりと拒絶された。
 二人がかりの口唇奉仕が再開され、すぐにまたペニスはびくびくと脈打つ。先端を唾液以外のものが潤していて、独特の匂いがした。
 あとコンマ一秒という瞬間、根元を強く握られて射精し損ねる。その間もアルクェイドは熱心な往復と舌使いを止めず、その快感が強いだけ逝かせてもらえない志貴は苦悶していた。
 暴れる志貴を二人で押え付け、また生殺しで放置していると、こんな誘惑をしてくる。
「アルクェイド?」
「なに?」
「舐めてあげる、こっちに体を」
 誘いに応じてアルクェイドは下半身を志貴の顔の上に持って行き、シックスナインの姿勢なる。膝を開いて腰を落とし、秋葉の目の前で期待の表情を見せた。
「なんだ、アルクェイド、ぐしょぐしょだぞ?」
「えへへ」
 卑猥な行為の最中とも思えないほど無邪気に笑う。
「なんでこんなになってるのかなあ? アルクェイドは」
「だって、志貴の、こんなに元気なんだもの。妹は可愛いし」
 不意に話題にされて秋葉は当惑する。また、抱き寄せてキスされた。
「で、どこを舐めてあげれば良いのかな?」
「やぁん……ここっ」
 アルクェイドがくねくねと腰を揺すっている。
「いやぁ、それじゃ判らないし」
「いじわる。志貴の大好きな、ここよっ」
 右手を腰の方にやった。秋葉には見えないものの、指で示しているんだろう。
「どうせなら、もっと良く見せて欲しいな」
 言われて、アルクェイドはもう一方の手も下げる。志貴の下腹部に顎を置いて、羞恥と官能を浮かべている。
「えっちだなあ、自分から開いて見せるなんて」
 揶揄されて、顔をまた紅くする。
 じゅぅ、ぺちゅ、ぴちぇっ
 不意に何か啜るような音がした。アルクェイドが顔を上げ、抑えきれないように熱く息を吐く。
「ん、志貴、それ好きっ。ぁあん……」
 具体的内容はともかく、舐めて貰い始めたのは明らかだ。
 ……羨ましい。
 さっきあんなに愛撫して貰ったけど、目の前で快楽に蕩けられたら、やっぱり羨ましいし悔しい。虚飾の無い女性らしく、率直に悦びを表すから、無闇に気持ちよさそうだった。
「あぁっ……ん、あ、んぁ、ふぁうっ」
 声が大きくなり、断続的に続く。指を入れて突かれているんだろう。
「んぁあ、ふあ、んっ」
 大袈裟に思えるほど声が上がる。アルクェイドがされている愛撫を想像して、クリトリスを集中的に舐められているんだと推測する。指の抽送と共にそうするのは、志貴が好んで使う組み合わせだから。
「あふ……」
 思わず切ない吐息を零し、秋葉は自分の手を脚の間に運ぶ。そっと二本の指を自分の中に沈ませ、親指で鋭敏な突起を探る。
「ふぁ……ふあっ」
 愛する人の愛撫に蕩けきった恋敵の顔を目の前に見ながら、自分で女を慰める。嫉妬に発火しそうになりながら、その熱さが体を快楽に焼いて行く。
「えっち、自分でするなんて」
 言われながら、からかうアルクェイドに報復する手段を見つける。よがるばかりで、アルクェイドは何もしていないのだ。
「おさぼりになるんでしたら、任せて頂きます」
 宣告して、秋葉は多少小さくなっている志貴の性器を咥えた。今度は、アルクェイドに見せつけるためだから、遠慮なく深く飲み込む。唇が根本近くを覆うようにすると、自然、先端は喉に届くほどだ。嘔吐感が起きてしまうのを堪えつつ出し入れを始め、舌を左右に揺らす。刺激されて、ペニスはすぐに凶暴さを取り戻す。
「妹、凄いねえ」
 セックスの技術など誉められて喜んで良いのか判らないながら、誇らしくは思えた。
「あきは……」
 兄が声を出しているのを聞いて、秋葉は更に丹念に舌を動かす。志貴を快感に落とせば、アルクェイドへの責め手は緩むだろうと思った。
 いきなり耳に何か触れた表紙に歯を当ててしまい、危うく噛みそうになる。アルクェイドが、顔を横に向けて志貴を飲み込んでいた秋葉の耳を舐めたのだ。そっと噛み付いて、秋葉のストロークに同調して愛撫を続ける。気持ち良くて、動作が乱れてしまう。
 その上、手が伸びてきて、乳首を弄び始める。
 そうか、同じ作戦だ。
 志貴を蕩けさせようとしている秋葉を、アルクェイドが陥落しようとしているのだ。
 ただ、もう一方の手は志貴の睾丸を弄っていた。
 息苦しささえ喜びに思えてしまうディープスロートをどうにか続けようとするも、始めに堪えきれなくなったのは秋葉だった。
「うふ、おしまい? じゃあ、今度はわたしね」
 言うが早いか、体勢を変えて乳房に手を添え、秋葉の唾液に塗れたペニスを挟み付けた。
「んぁっ」
 志貴がまた、喘ぐ。
 豊満なアルクェイドの乳房が志貴を包んで、淡く上気した肉の間から赤黒い先端が覗く。体が上下するに連れ、亀頭まで埋もれたり、また姿を現したり。さっき二人で弄った敏感なエラの部分がぴったりと張り付く肌に揉まれている。
「ふふふ、志貴、これ大好きだよねー?」
 あっけらかんと言った。バストのサイズの歴然とした違いを見せつけられているのだが、勝ち誇る口調でもないし、ただ志貴の喜ぶことをしてやるのを楽しんでいるのだと見えた。
 憧れつつ、出来ることをしようと、精巣に口を添える。濡れているのは汗なのか、自分やアルクェイドの唾なのか。
 女二人で、こんなに愛撫しても耐えているなんて。
 良く知ってはいるのだが、兄の強壮さに半ば呆れつつ、嬉しく思っていた。
「ねえ?」
 頭の上から声が掛かり、見上げる。
「代わって欲しい?」
 言われたことが判らずにいると、続けた。
「妹も、舐めて貰いたいんでしょ?」
「はい」
 思わず即答し、そのことに恥じ入る。
 そんな秋葉の頬をぺっとりと舐めて、アルクェイドは笑う。
「えっち。良いよ、代わってあげる。うん、でも志貴が何て言うかな?」
「ん? そうだなあ、どれぐらい代わって欲しいと思ってるか、アルクェイドが見極めてくれれば良いよ」
「だって」
 それだけ言うと、乳房で男性を愛する行為に戻る。ただ、悪戯に秋葉を見つめている。
 ……ねだらせたいんですね。
 秋葉は理解した。いつもなら、具体的におねだりの文句まで指定されるけど、それはしないらしい。
 つまり、自分で考えなさい、と。
「……舐めて欲しいです」
 呟くように、やっとそれだけ。今までも、幾度と無く似たようなことはさせられてきたのだ。
「えっちな秋葉は、兄さんに……を舐めて貰いたくて体を疼かせてます」
 アルクェイドがまた笑い、また頬を舐める。
「どこを舐めて欲しいの?」
 口に出せなかったことを追求される。
「わたしの……」
 やっぱり、言えない。
 大きく呼吸して覚悟を決めようとし、アルクェイドの先の行動を思い出す。口にするより、その方が楽に思えた。
「ここ、です」
 志貴の脚に跨って膝立ち、アルクェイドに見せつけるように腰を突き出して、両手でそこを広げて見せる。体を立てた途端、両腿の内側を雫が流れていくのが判った。
「綺麗だね」
 ぺろん、と秋葉の谷間を舐め上げて、一言囁いた。
「ふふ、良いよ、代わってあげる」
 名残惜しむように数度、志貴をバストでしごいて、横に退いた。嬉しくて頬が緩むのを一応は抑えつつ、秋葉は愛しい兄の上に体を横たえる。
「秋葉のここは可愛いな」
 途端に、こんな風にコメントされた。
「えー、わたしのは?」
「アルクェイドのは、えっちで華やかだな」
「えっちって何よー」
「いやあ、いかにも食いしん坊って感じでさ」
 私のを見ながらアルクェイドさんを話すなんて。
 そう思って、自分に意識を向けさせようと、女に手を添えて開いて見せる。
「兄さん……ひゃっ」
 早速、ぺろりと舐められた。
「秋葉、さっきアルクェイドにはどんなことしてたと思う?」
「え? ……その、指を入れて……舐めて……」
「ん、何処に指を入れて何処を舐めてたのかな?」
 兄の意地悪に泣きそうになりながら、折角指を傍に置いているのを思い出す。
「ですから、こことか……こことか、です」
「ふふふ」
 幸い、意地悪はそこまでだった。
「ああっ! ん、んぁん、くふぁあ」
 いきなり強烈に指を往復されて、腰が砕けそう。
「お尻にも、してもらったよ?」
 アルクェイドが耳打ちしてくる。結局、そちらも強請った。
「お尻も、可愛がってください」
「本当にえっちだなあ、秋葉は。お兄ちゃんとしては心配だぞ」
 揶揄されても、善がるばかりで反論も何も出来ない。
「妹、一人で楽しんでるから、志貴はわたしが気持ち良くしてあげるね?」
 わざと秋葉の耳の傍で良い、アルクェイドは再び乳房で志貴の性器を挟み込む。自分の愛蜜を掬いとっては繰り帰し垂らして濡らす。白く柔らかなバストに飲み込まれて、ペニスが一段と隆起するのを秋葉は目の当たりにする。
 駄目、私も、何か……
 挟んで擦り付けるだけでも、今にも兄は果ててしまいそうなのに、アルクェイドは俯いて先端を口に入れる。
「くあっ」
 兄が呻き、自分を舐めてくれる舌が止まってしまう。
「うふ」
 少ししてアルクェイドは顔を上げ、秋葉の額にキスした。それから、体を前に押し出して、志貴の男を秋葉の方に傾ける。意図は、すぐに判った。
 体を前に寄せ、秋葉は志貴を咥えようとする。なのに、アルクェイドは体を上げて乳房の間に埋もれさせてしまう。愛しい凶器の先端が次に姿を見せたときは、豊満な乳房の主の体にくっ付いていて、口を寄せても舐めるのがやっと。少し濡れているのは、アルクェイドの蜜でも唾液でもない別の液体。もう、程なく強壮な兄も達するだろうと判る。
「私にも、させて下さい」
「ふふふ、えっちなのは妹ね、やっぱり」
 姿勢を変えて差し出してくれたから、口に含んだ。
 片手で頭を抱いてくれたから、リズムを合わせて上下できる。柔らかで潤ったアルクェイドの乳房に顔を埋める格好で、口の中には最愛の人の男性がある。女らしく、触れて心地良い果実をいつに無く羨ましく思い、口の中でペニスもまたいつに無く猛り狂っているが嬉しい。
 手を出してバストに触れ、内側に押し付ける。指先から侵入した何かに神経が侵されていそうなほど、もっと楽しみたくて、力が篭る。
 アルクェイドが頭を抱く手を離し、また、乳首を弄ってくれる。
「――!」
 口がいっぱいだから何も言えないけど、前後に入れられた指の動きが速くなり、クリトリスを舐めつづけている舌も激しさを増す。それに応じてフェラチオする動きも高めると、アルクェイドはちゃんと追随してくれた。
 気持ち良い。それしか頭に浮かばない。女の子の部分もお尻も口も兄に埋めてもらって、敵たるアルクェイドも自分を可愛がってくれている。バストの感触は、自分には無いのだから、兄が夢中になっても仕方ないかと思えるぐらいに甘美。
 こんなに淫乱になってしまったことは、後ろめたいけど、言い訳はあるのだ。
 悪いのは兄さんです、私をこんなにしたのは……
 兄の体が痙攣するように脈打ったのを感じた。
「秋葉、行く、よ……」
 同時に、兄が限界を告げる。
 全部受け止めるつもりだから、動きを更に高めた。
 びくん、と脈動があって、口の中に兄の匂いが広がった。暖かく、濃厚にどろりとして、奇妙な味の液体が噴出した。思い切り吸って、受け入れる。
「ふぁああーっ」
 その次の瞬間、丹念で巧緻を極めた愛撫に存分に昂ぶっていた秋葉もまた、絶頂に達した。頭の中が閃光で満たされて、神経を伝って全身を法悦で破壊していく。兄の精の味と匂いにトリガーを引かれた格好だった。
 どう考えたって変な味なのに、変な匂いなのに、美味しいとか思ってしまうのっておかしいかな。
 怒涛が去りはじめて、見れば、まだ陰茎は少しずつ露を零していたから、もう一度吸い付いく。手で何度も扱き、精巣を揉んで、最後まで全部飲ませてもらおうとした。自分も、まだ舐めてもらっているのだから。
 陶然と、舌を動かして口の中の粘液を楽しみながら、そんな自分を滑稽に思った。味わううちに、もう一度快楽の波が体に広がっていく。女二人で、こんなに長く丹念に奉仕したせいだろうか、普段以上に濃厚で大量の精液だった。
「妹、独り占め、ずるーい」
 そんな言葉と共に顔を持ち上げられ、アルクェイドにキスされる。不意を打たれて、口の中から志貴の精を吸い取られてしまう。
 そうはさせじと吸いあい、舌を使って掻き取り合い、奪い合う。
 次第に可笑しくなって来て、自分から舌で押し出して与えてやる。相手も判ったらしくて、今度は逆に競って与え合う。甘露を含んだように唾液が溢れるから、次第に液量が増えてくる。
 全部アルクェイドの口に移った状態で、一度離れた。アルクェイドが口を開けて中を見せてくれる。唾液で薄まっている筈なのに、まだまだ粘性たっぷりの白い液体が糸を引いていた。
 やっぱり兄さんって、素敵。
 口を閉じて、アルクェイドは体を起こす。
「駄目、半分こですっ」
 そんな馬鹿げたことを言って迫る秋葉に笑いかけ、俯いて小さく口を開く。
 白濁した雫がこぼれ落ち、自慢げな胸の膨らみに落ちる。再び目が合う。
「ふふふ」
「えへへ」
 妙な笑いを二人して浮かべたあと、秋葉はアルクェイドの胸に顔を寄せた。
 乳首のすぐ上に落ちて流れ始めていた志貴の精子を、ちゅっと吸い取る。垂れて来ていた軌跡に舌を這わせる。顔を離すと、アルクェイドはまた一滴だけ落とす。
 繰り返し、少しずつ位置を変えては精を垂らし、乳房一面が男の液で濡れては秋葉の口に清められる。気が付くと、秋葉はもう一方のバストに触れて揉みしだいていた。
 ちゅっ
 落ちた位置が乳首だったから、迷わず秋葉はそこに吸い付く。取った後も、しばらく尖った先端を転がして楽しんだ。
「んふっ、ふぁん……」
 それ以降、アルクェイドは毎回乳首を狙って吐き掛けた。
 秋葉は、豊穣な胸に口を寄せて白っぽい液体を堪能する。
「これで全部よ」
 最後の一口が落とされ、秋葉は名残を惜しんで時間をかけて舌で掬い取った。
 母乳を飲んでいるみたい。
 母の胸の記憶はないのだけど、そんなことを思った。

 

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