◇ Round 1

「まずは脱ごうね?」
 言いながら、アルクェイドが半分だけ留まったパジャマのボタンの残りを外していく。
「ゃん……」
 秋葉は体を抱いて抵抗するが、丁寧に腕をどけられ、簡単に脱がされてしまう。肌を上気させた少女の華奢な体が、スタンドの暖かい光に映える。二人の視線を浴び、また胸を覆って隠しながら顔をそむけた。
 志貴が躊躇いなくズボンの方にも手をかけ、アルクェイドが腰を持ち上げる間ずらし、手早く足から抜き取ってしまう。
「あ……」
 気付いたら、もうショーツしか残っていない。薄桃色に染まった肌に白く清楚ながら、脚の間の小さな部分ではで薄く翳っている。
「秋葉、キスだけでこんなにしてるんだな」
 布地が濡れて、透けているのだ。
「やぁ……」
 片手を下げて隠そうとするも、捕まる。
「これも脱がしちゃって良い?」
「駄目です」
 拒まれて、アルクェイドはあっさりと引き下がった。
「わたしも脱ぐね? ほら、志貴も」
 アルクェイドが気前良くセーターを脱ぎ、スカートも降ろしてしまう。パンティストッキングを脱ぐのを志貴が手伝ってやっているころ、秋葉がこっそり視線を向けて眺め始めた。
「ん、アルクェイドも濡らしてるじゃないか」
 からかって言いながら、志貴がショーツの上から女の部分を突付く。くちゅ、と濡れた布が僅かに性毛の金色を透けさせている。
「だって妹が可愛いから」
 秋葉が見詰める中、背中に手を回してホックを外し、ブラジャーを取る。解放されて、瑞々しい二つの膨らみが揺れる。見られているのに気付いたアルクェイドは、隠すどころか腕を組んで強調してみせた。象牙色の半球が腕に押されて少し形を変え、いかにも柔かそう。
 前かがみになって秋葉に覆い被さる。少し重力に引かれて乳房は尖ったような格好になり、それぞれに楽しげに揺れる。先端の乳首が珊瑚色。
 女の秋葉にも、それは綺麗で蠱惑的に思えた。故に、自分の体にコンプレックスを覚えるのを禁じえない。
「妹の胸、可愛い」
 微笑むと、秋葉の胸に掌をあてる。反対側に触れている志貴と同じように、そっと撫でる。
「嘘、小さくて恥ずかしい」
「でも、綺麗だよ?」
 ほのかな膨らみを二人の手が撫でる。志貴が形を辿って撫でるのに対して、アルクェイドは慎ましやかな弾力を楽しむように掌を押し付け、指を沈めて揉んでいる。
「触っても良いですか?」
 アルクェイドの乳房から眼を離せずに、秋葉が訊く。アルクェイドは答える代わりに手を取って胸に導き、二三度、重ねた手で揉ませてやる。触れている秋葉の方が照れて笑い、身悶える。従順に指の動きに従って形を変える柔かさと、しっかりと押し返して来る生意気さ。暖かい、最上質のシルクなどと言うのでも足りない滑らかな肌は、汗のせいだろう、微かに湿っていた。
「羨ましい……」
 正直に口にした。
 女らしくないのが嫌だから胸にあまり触れないで欲しいと訴える秋葉に、志貴はいつも可愛いと言い、存分に、恥ずかしくなるほどたっぷりと愛撫してくれる。胸のサイズなど、数多い女性としての魅力の一要素に過ぎないことは判っている。それでも、女の象徴のようなふくよかな胸を目にして美しいと思い、手を触れてその心地良さを知ってしまうと、やっぱり憬れる。
 アルクェイドは何も言わずに笑い、秋葉の胸に顔を押し当てた。尖った乳首を頬擦りして刺激する。志貴がそれを真似る。
 快感に融けながら、秋葉も乳首を探して転がす。挨拶に愛想良く応えて堅くなって来るのが楽しかった。
 志貴が乳首を口に含み、アルクェイドも続いた。志貴が唇で覆って舌先で舐めるのに対して、アルクェイドは唇だけで強めに挟んで揉むようにし、時々歯を当ててくる。
「ああっ」
 もとよりセックスの時には過敏気味の秋葉だが、とりわけ乳首は弱い。執拗に責められると、それだけで逝ってしまうことさえあるのだから、両方同時に口で愛撫されては堪ったものではなかった。柔かくて濡れた舌の愛撫は体の奥まで染み入るようだった。
「ふぁあああぁっ」
 いきなり悲鳴をあげてしまう。びっくりしてアルクェイドは動きを止める。
「ちょっと強烈過ぎるのかな?」
 志貴が言い、乳首を指に譲って鎖骨の上の窪みに口付ける。アルクェイドは乳首を吸い続けながら、お腹を撫で始める。
「はっ、はぁっ、ぁ」
 志貴は加減しようとしたのだったが、刺激点を増やされたのでは快楽は増す一方だ。力が抜けて、アルクェイドの胸に伸ばしていた手も落ちてしまう。志貴が腕を頭の上に上げさせ、無防備になった腋に口を移す。
「ひゃっ」
 志貴はしばしばこんなところを舐めまわす。いつも、くすぐったくて暴れる。初めのうちはそうだ。吸い付かれたり、べったりと舌を這わされたりしながら乳首を指で責められて、そちらの快感に引き摺られるように腋の下まで性感に変わってしまう。いつもそうだ。
 今回は、もう一方の乳首を舌で責められつづけている。快感に変わるのは速かった。
「ふぁうぅ」
「敏感なんだねえ」
 アルクェイドも腋を愛撫し始める。胸には手を残し、掌で乳首を撫で続けている。
 全身、ほとんど何処に触れられても感じてしまう。敏感なのは、幸せなのかもしれないけど、恥ずかしかった。
 何か柔かい感触を脇腹に覚え、確かめると、アルクェイドの胸が押し当てられている。やっぱり、羨ましい。
「胸が大きい女には馬鹿が多いって言うよなあ?」
 不意にそんなことを言う。
「なに? わたしが馬鹿だって言いたいの?」
「いや? 多いって言うよな、って言ってるだけだぞ?」
 むー、と膨れていたものの、そのまま愛撫を再開する。
「あんっ……よく言いますよね? 兄さん。でも……ふぁっ」
 胸の小さい女にだって、馬鹿は多いですよ?
 白くなった思考で、そんなことを思う。想い人と恋敵に責められて善がっている自分が馬鹿じゃないなんて主張は出来なかった。
 二人の愛撫は乳首と鎖骨と腋の三点を行き来する。うち二個所ぐらいを責められ続けて、休まる暇が無い。そのまますぐにでも達してしまいそうなのに、時折横腹など擽られたりするのに体がビクリとして、それが返って逝かせずに引き止めることになっている。
 焦れったい。脚の間の泉がすっかり溢れているのが判る。脚を擦り合わせると、肉が動くのとショーツが寄れるのとで、少しだけオンナに刺激がある。
「あっ、あぁ……」
 体の動きで気付かれたのか、すぐに膝の間に手が入れられた。左右から二人が片手ずつ入れたらしい。閉じあわされた太腿の内側を撫でながら通って胴の方に登って行く。
 期待して、秋葉は目を閉じる。
 もう少しで届くような位置まで来て、止まる。ぐっと脚を開かされて、それ以上何もしてこない。
「あん……」
 焦れて、喘ぐ。
「ふふ、ぐしょぐしょっ」
 言って、さらに脚を開かせて、女の部分にアルクェイドが口を押し当てた。そのまま、ゆっくりと息を吐くと、布の下に入り込んで熱がこもる。
「あっ」
 もう一回、同じように熱い息を吹き込む。それから、わざとらしく音をたてて鼻で息を吸う。
「いゃ……」
「えっちな匂い……」
 思わず頭を退かせようと手を当て、でも退かせたら刺激して貰えないから止める。仕方なく、髪を撫でた。金の雨は滑らかで手触りが良い。でも、これに関しては劣等感は抱かない。金髪は綺麗だけど、秋葉は自分の黒髪にもっと自信があった。
 志貴が秋葉の顔を覗き込み、キスする。また焦れったい、意地の悪いキスだった。同じ頃、アルクェイドはショーツの上から秋葉を舐め始める。こちらは熱心に舐めてくれるけど、やっぱり布地越しだともどかしい。クリトリスを指で弄られて、気持ち良いけど、これもやっぱり隔靴掻痒。ちゃんと愛撫して欲しい。直接して欲しい。
「妹は脱がされるの嫌みたいだからねえ」
 アルクェイドの声。
 あ……
 構いません、と言いたいのに、志貴に口を塞がれている。口付け方が激しくなって、嬉しいのだけど、いつまでも下の方が疼くまま。二人して意地悪しているのは判りつつ、術中に填められたまま逃れられない。せめてキスは楽しみたいから、舌を突き出し、志貴の口に攻め入って歯茎から順に舐めていく。
 やっとキスが終わって、訴える。
「構いませんから」
「んん? 何が?」
 答えるのは志貴。あちらこちらを撫でながら。
「脱がしても構いません、アルクェイドさん」
 判っているに決まっているけど、訴える。熱い息の攻撃を再度受けて、陥落しかけていた。
「んー、何を脱がすの?」
 からかいの口調で、でもそうと判っても言わざるを得ない。むず痒いような愛撫への餓えはそれほどに高まっている。
「ショーツです、私の」
「でも、無理しなくても良いよ? 嫌だったら」
 内腿を両手で撫でられて、ますます焦れったい。
「ほら、ちゃんと言わないと判らないぞ?」
「そう、私はおっぱいの大きな馬鹿おんなだから判らないよー」
 言いながら、アルクェイドは下着を上に引いて秋葉を刺激している。この調子では、はっきり言わない限り絶対に脱がさないつもりなんだろう。
 言ってしまえ、と決心しても、すぐには言葉が出ない。乳首に戻っている志貴の愛撫に思考を混濁させられながら、やっと口にした。
「あぁ……ですから、ショーツを脱がして、ください」
 ふふ、とアルクェイドの笑うのが聞こえた気がした。
「なんだ、脱がして欲しかったんだ。じゃ、ちょっとお尻浮かせてくれる?」
 何か考えたらまた羞恥に躊躇うことになりそうだから、言われてすぐに尻を持ち上げた。幸い、そのことまでは揶揄されることもなく、アルクェイドは最後の下着を抜き取る。
 これで、少女の体を隠すものは無くなり、身を飾るものは桜色に染まった肌の輝きばかり。頭髪と同じように黒い秋葉のアンダーヘアは蜜に濡れそぼって煌いていた。
 ほとんど無意識のうちに秋葉は両手を下に伸ばし、自分の脚の間に置いてからアルクェイドが間近に見ているのを思い出し、止める。
「ほら、脱がしたげたよ」
 見られている、と意識する。早く触れて欲しくて、自分の指で翳りを掻き分けると性器を広げて晒してしまう。
 華奢な体。平らな腹部の下方に楚々とした繁みがあり、自分の指で広げられた可憐な女が見える。淡い桃色の肉は粘性の露をたたえていて、女になりきらない少女の体の中で、そこだけが成熟していた。愛する男性にオンナにしてもらってから、幾度も体を重ねて、若々しいながらも妖艶に薫っている。
「綺麗だね」
 アルクェイドがいきなり開かれた秘唇を舐めた。
「くあぁ……」
 あんなに求めた刺激は鮮烈で、稲妻のよう。
「っあ、ん、んあ、ふぁ……あぁ、うぁっ」
 繰り返し舐められて、身も世も無く喘ぐ。クリトリスを剥き出しにされて、期待と怯えが混ざって慄く。なかなか手を出して来ないのに耐えられず、もぞもぞを腰を揺すってしまう。またも、息だけ吹き付けられて焦らされる。
「っんく、ふぁあっ」
 アルクェイドはまだ見ているだけ。悲鳴は志貴がソフトに責めていた乳首を強く吸ったから。
 それだけで、強烈。これで、下まで一緒に責められたらどうかなってしまう。でも、して欲しい。どうなっても良いから。
 期待しながら恐ろしくて、怖いものから隠れるように両手で顔を覆った。
「うふふ」
 それなのに、アルクェイドは手を出して来ないどころか、離れていってしまった。
「どうして?」
 答えず、意地悪な美女は少女の膝を持ち上げる。脹脛に手をあて、揉みながら足首に向かい、もう片方の手で爪先を掴むと踵に甘く噛み付いた。
「んっ」
 びっくりして、秋葉は体を震えさせる。
 麗しき吸血姫は少女の小さな足の裏に口付ける。啄ばむように繰り返し吸い付く。突き出した舌を大きく使って唾液に塗れさせる。親指を咥えて、フェラチオするように唇と舌を駆使する。
「や……ん、そんな」
 足なんて舐められるのは恥ずかしくてならない。風呂に入ってから少し時間が経っているし、汗もかいているし、匂いがしたりしたらって思うと顔を隠した手を動かせない。でも、少し気分は良かった。そんなところを舐めてくれるなんて、と。
 変わらず乳首を可愛がられていて、その快感と足先の快感とが遥々と呼応して高まる。
「これ、妹も好きなんだ?」
 胡乱な頭で、言葉を聴く。
 わたしも、好きなのか、と?
 恥ずかしくてならないけど、好きだった。肉体的にも、爪先から脳天まで突き抜けるような快感だっけど、それ以上に精神的に酷く昂ぶるのだ。
 顔を覆う指の隙間から、まだ親指を吸っているアルクェイドをの恍惚とした顔を見て、思い出す。そう、アルクェイドの愛の技術アルス・アマトリアは全部、志貴と一緒に身に付けたものなのだ。自分が志貴に始終されているような愛撫なら、アルクェイドだってされているのだろう。そして、アルクェイドもこんな風に足を舐めてもらうのが好きなのだろう。
 志貴が胸から離れ、アルクェイドの隣に移動して空いている方の足を取る。
「兄さん……」
 望んだとおり、志貴も足を口で愛撫し始めた。
「ふぅん……んぁあン……」
 もちろん、両足同時に舐められるなんてことは初めてで、悦楽は二倍ではなく二乗になった気がした。
 恋敵にそんなことをさせていると思えば、優越感が沸く。恋人にさせていると思うと、申し訳ない気がする。いずれにしても、気分は昂揚した。半端に放置されて疼いてる性器に、足先に生まれた快感が流れ込んでいるかのよう。こぷ、こぷ、と蜜が滴ってとめどが無い。この状態で、そこも一緒に愛撫されたら一瞬で達してしまいそうだ。
 早くそうして欲しい。
 怖い。
 焦れったい。
 自分の手で思い切り掻き回したくなるものの、見られていては、そこまであさましいことは出来ない。しちゃいけない。ぎりぎりのところで踏み止まる。
「くぅうん……」
 それでも、誘惑される。つい手をお腹や脚の付け根の辺りに這わせたり、引き戻したりを繰り返す。
「すれば良いのに」
 アルクェイドが艶然と笑う。
「駄目、そんなこと」
 足を責める二人が葛藤する様子を観察しているのでは、自分でするのは憚られる。勝手にやってしまわないように、秋葉は両腕とも自分の背中の下に入れて押えた。
「あっ、ふぁあん」
 恋人の技法を独り占め出来ていなかったことは少し悔しいけど、慶びを共有していたことは楽しい。思って、秋葉は声をかける。
「アルクェイドさん?」
 手を差し伸べると、理解してくれたらしく、姿勢を譲って片足を秋葉の方に出す。掴んで口元に運んだ。
 まずは、踵に噛み付く。自分と違って硬くなっていない。背の高いだけは足も大きく、プロポーションに応じてここも肉感的。微かに何か匂いがするのだけど、それも甘く官能に訴えるものだった。
 ちゅぅっ
 唇を押し付けて吸い、土踏まずの方に滑って行く。歯を当てて擦る。これをされると擽ったいな、と思っていたら、アルクェイドも足を震わせて抵抗している。ぎゅ、と押えて続ける。同じことをやり返されて我慢比べを始めるけど、二対一になっては勝ち目が無かった。
「うふふふっ、ずるいっ」
 言った途端、本当に手で両足ともこちょこちょされる。
「あははははっ」
 ほんの十秒ばかりだったけど、悶えた。
 それから、また丁寧な愛撫が始まる。秋葉も再びアルクェイドの足を取った。
 親指を口に入れて、舌で螺旋を描いて唾液に塗れさせる。志貴の男性を思い出し、尿道口を責めるようなつもりで爪と肉の間を下で横切る。少しすると、自分も同じことをされているのに気付いた。
 合図でもしているのか、秋葉は両足をほぼ同じように責められている。でも、今の爪の下を責める動きはアルクェイドしかしてこない。となると、アルクェイドが秋葉を真似たのだ。
 兄さんがフェラチオを思い出すことはないでしょうし。
 自分たちを弄ぶ男を余所に、女同士で秘密を共有した気がして楽しかった。
 親指とその隣の指の隙間を溶けそうなほど舐められて、直接舐められているみたいに性器に響いた。また蜜が溢れた気がする。隣に移る。小指側に寄るほど感じるみたいで、いつも親指側から吸われるのはそのせいだろう。
「く、んぁ、あふ……」
 不意に脚を持ち上げられ、大きく開かされる。激しい時の志貴が挿入に時々使うような、腰を高くして体を屈曲させた猛烈に恥ずかしいポーズ。女の部分どころかお尻の谷間の奥まで晒される格好。
 枕をあてて姿勢だけは楽なようにして、まだ足の指に愛撫を続けている。ただ、片手ずつは足首から脹脛を通り、膝に着いて表裏交互に撫でたり擽ったり。
「ひうっ……んくっ」
 また動き出し、腿の内側を揉みながら緩慢に終着点に迫ってくる。
 大開脚した間で少女の性器は呼吸するように唇をぱくぱくと動かしている。涎をしどけなく垂らして、尻の方まで濡らしている。さっき、僅かに舐められて以来、ずっとお預けをくっているのだから。
 二人の手が付け根にまで届いた。まだ焦らそうと言うのか、それ以上進まずスレンダーな内腿の肉を揉み続けるばかり。
「はやく、してっ」
 言ってしまって、含羞に打たれて顔を隠す。
「何をして欲しいのかな?」
 ここに及んで、まだ恋人はいぢめるのを止めない。
「意地悪……」
 ほとんど泣き声で訴える。
「ふーん、面白いね? 志貴、妹は意地悪して欲しいらしいよ」
「違いますっ」
 わざとらしいアルクェイドの言葉に、必死で叫ぶ。
「あれ? じゃあ、どうして欲しいの?」
 判らないはずがないのだから、とっくに意地悪はしているのだ。さっきと同じで、言わない限り何もしてくれないだろう。
「私の……可愛がってください」
 やっと、それだけ言う。でも、返ってくるのは半ば予想した言葉。
「んー? 秋葉の、何を可愛がって欲しいの?」
「んぁん……」
 口にするのをはばかり、手で指し示す。
「ここ、です」
 無論、性器を指していた。
「ふふ……こっちは駄目?」
 アルクェイドがとんでもないことを言う。お尻の谷間を突付いているのだ。
「ああっ、そこは、ぁ」
「こっちも可愛がってあげたいなぁ?」
 そっちだって、志貴には何度となく愛されている。ペッティングだけならいつもと言って良い。相手がアルクェイドだろうと、今更って思いとそれでも躊躇する思いが錯綜する。
「うん、折角のアルクェイドの好意なんだし、こっちとセットにしような? 秋葉」
 平然と志貴は言い放ち、秘唇に触れるか触れないか程度に指を這わせる。
「して欲しいのか、して欲しくないのか、ちゃんとアルクェイドに言うんだぞ?」
 躊躇ってしまった。即答しなければ、時間が経つほど言うのは恥ずかしくなる一方だろう。アルクェイドは秋葉の尻に顔を寄せて、また今度も息を吹きかける。それだけの刺激で秋葉は全身をびくりと痙攣させた。
「して、ください……」
 それだけ言うのが、やっと。
 アルクェイドは尾底骨のところにキスした。そのくせ、まだ尋ねる。
「何をして欲しいの? わたしに」
 やっぱり、最後まで言わせようとしているのだ。
 こんなにもセックスの歓びを身に刻んでしまった兄が恨めしい。そうでなければ、こんな羞恥に塗れた思いをする羽目にもならないのに。同じようにしてもらっているだろう恋敵が憎い。それでも、二人で可愛がってくれるのは嬉しいし、気持ち良いし、愛しいし。
 いや、愛しいのは兄さんのことなのだけど……
 やっぱり、好き。気持ち良い。
「お尻、可愛がってください……アルクェイドさん」
 首を後まで捻って、蒲団に埋めて顔を隠せたら良いのに。そんな埒もないことを思いながら、とうとう口にした。
 途端に、アルクェイドは舌を出してお尻の谷間を進み始める。
「ふぁんんっ」
 同時に、志貴が秋葉の中に指を沈めて行く。泉の奥に差し入れられて、また更に溢れる。
 もう、秋葉には自分がどんな姿勢になってるのかも判らなかった。脚の間のあたりで、ただ何かとんでもなく気持ち良いだけ。本能的に、鮮烈なクリトリスへの刺激とか、膣の奥への指の感触とか、そういった区別は付かないでもない。
 お尻の穴まで舐められているのは意識に登った。恥ずかしいけど、もう快楽が勝る。
 ぐちゅ、くちゅ、びちゃ
 耳に入る濡れた音。自分の股間からしているのだと、ぼんやりと思う。
「大丈夫よね? 妹も志貴にこういうこと、されてるでしょ?」
 女の声がして、何のことかと思う間もなく、肛門を異物感が襲う。
「あふぅっ」
「ほら、前のジュースでベトベトだから、簡単に入っちゃう」
 左右に捻るようにしながら、ゆっくり指が入ってくる。志貴のペニスを受け入れたことも幾度もあるのだから、指ぐらいは平気のはずだけど、やっぱり楽ではないのだ。
「ん、くぅ、んんぁ」
 意識して力を抜く。兄ほど慣れては居ないのか、少しぎこちない動き。でも優しくて、気持ち良くしてあげようって思いが判る気がした。
「ひゅあああぁ」
 僅かでも抵抗を弱めようとしてくれているのか、前を攻める指の抽送が激しくなり、クリトリスを転がす舌の動きも速さを増す。膣の中で、ひときわ強烈な快楽が生まれる。責められるとすぐ達しそうになる一点。いっつも、ほんとにいつも、素直には逝かせてくれないのだけど。
「妹、えっち」
 お尻の丸みにアルクェイドが口を着けていて、甘噛みして、舐めて、吸って、どろどろに濡れていく。指が尻穴に埋もれて行き、とうとう付け根まで入る。小さく出し入れしながら回転が加えられて、内臓を弄ばれるような違和感が強いのに、奇妙にもそこから愉悦が起こって思考を犯す。
 頭の中、真っ白。このまま逝くんだろうと思った。クリトリスとか、Gスポットとか、お尻とか、それぞれ愛撫されているのは判る。でも、それぞれが自分の体の何処にあるのか判らないみたいな、不可思議な感覚。
「っあ、ん、んあ、ふぁ……あぁあ、ふぅっ」
 もうすぐ。さっきから数限り無くそう思っている。それでも逝かない……加減されているから。逝きそうになったら動きが弱くなる。こんな、生殺しにされるのは、死にそうに辛い。辛いのに、それは気持ち良くて。気が付いたらドロドロに融けていそうで。一思いに止めを刺して欲しいって思いながら、この身を砕く歓喜に浸っていたい。
「ひ、ふあ、ぁ、あぅ、はうぅぅぅぅぁ!」
 信じられない。気持ち良いポイントがまた増える。
 これって……乳首? あれ、乳首ってどこにあったっけ……?
 判らない。そんなことはどうでも良かった。
「逝きたい?」
 訊かれているけど、答えられない。こんな状態が続いたら死ぬ。でも、逝かされたら、やっぱりその場で死ぬ。
「んんん……わたし……にいさん……」
 ああ、でも、どうせだったら弾けて死んだ方が、良いかな……
「殺して」
 そんなことだけ、口に出た。
 何故そんなことがあり得るのか判らないけど、体中への刺激は更に甘さも激しさも倍増して、全部ハーモニーしてハウリングして法悦だけが五感を聾する。
「あるくぇいど、さん……にいさんっ」
 なんにも見えない、聞こえない、ただ純粋に無色に気持ちいい。
「秋葉……」
「妹、逝って良いよ?」
 二人に声を掛けられた気がして、それを切っ掛けにしたみたいに、堰が切れた。
 ただ圧倒されて、翻弄されて、気が遠くなる。
 初めは声さえ出せず、体の中で起こった爆発を閉じ込めようとしていたかのよう。
「はぁぁああぁああぁーっ!」
 やがて発して、ようやく突き抜けていくものを受け入れられる。
 本当に死んだみたいに体が動かない。二人が動かしているのは判ったけど、どう姿勢を変えられたのかは把握できない。
「秋葉」
 ひとこと愛しい人の声がして、口付けられた。
「可愛かったよ」
 恋敵の声がして、やっぱり口付けられた。
 体の感覚を回復するリハビリみたいに、二人で指先から順に擦ってくれる。腋とか乳首とか、そういう敏感なところはたっぷり愛してくれる。
「ああっ、ふああっ」
 逝ったばかりで、そんな愛撫は強烈で辛いほど。でも、して欲しいから、受け入れる。
「気持ち良かった?」
 言わずもがなのことを問うて来る。
「はい……凄かったです……」
 ぼんやりとした視界で、金髪の美女は華やかに笑っていた。
「良かった」
 もう一度、キスしてくれる。快楽よりは、愛情を伝えようとするような、優しい接吻。覆い被さって抱き締められる。転がされて、背中からは志貴が抱いてくれる。
 二人に挟まれて、秋葉は快楽の余韻にたっぷりと揺蕩たゆたっていた。
「敏感なんだね、妹」
「そうだなあ。だから、色々大変なんだぞ?」
 自分を越して交わされる会話も耳にただ入るだけ。
「ふふふ、じゃあ今度はわたしの番よ?」

 

Round 2 へ

・Round1 了

 


 

草紙 に戻る

©Syunsuke