Half a Blue, Half a Shadow

Catalina


「お前、また足舐めてんのかよ。普通、舐めさせね?」
 自分は青子にイチモツをしゃぶらせながら、不良少年と呼ぶには年の行き過ぎたチンピラが笑う。
「お前こそ、ケツの穴舐めるの大好きじゃねーか。Kiss my assってのと逆やってるぜ?」
 這う姿勢の青子の足を掴んで爪先を唾で汚しているスキンヘッドが答える。
「バーカ、そういうの目くそ鼻くそってんだ」
 青子を後ろから犯しながら笑うのは、大仰なイレズミのある背中を晒す少年。恐らくは一番年下だ。
「オッパイ取られたからってカリカリしなさんな、順番だよ順番」
 青子の下に潜り込んで、ヒゲヅラの青年が乳首を吸っている。両手で思い切り青子の双峰を揉み、顔を押し付けている。
「しっかしタフだなぁ、姉ちゃん」
「ああ、それに……」
 言いかけて、チンピラは言葉を呑む。顔に、恍惚と苦悶が同時に浮かぶ。
「お、交代か?」
 缶ビールを片手に見物中だった顔中をピアスだらけにした少年が立ち上がろうとする。
「まだだよ、慌てんな。いや、でもメチャメチャ上手いぜ、このネーちゃん、しゃぶるの」
「そりゃそうだろ。どう見たってあの男にオモチャにされてたんだ、たっぷり仕込まれたんだろ」
「違いねえ、こっちも……っ」
 イレズミの少年が不意に動きを止めて射精を堪えようとする。しかし、すぐに諦めた気配で、逆に猛烈に腰を振り始める。
「ぅ、かふっ、サイコゥッ!」
 あっさりとイレズミは青子の中に牡のエキスを吐き出し、放心したように下がった。
「相変わらず早いな、お前。ネーちゃん、こいつガキだから早漏でな、許してやってくれ」
「うっせえよっ。お前だってそんなに保つもんか、スッゲエぞ、これ」
 馬鹿にされてイレズミはスキンヘッドに食って掛かる。
「ふふ、では私が次を頂きますよ」
 場違いに端正なメガネの優男が、イレズミの後を継いだ。
「いや、後ろも良さそうですね。どちらにしましょうか?」
 ランチセットのドリンクはコーヒーか紅茶かと問うように、メガネは青子に声を掛ける。口を塞がれている青子は答えず、結局メガネは後ろを選ぶ。
「こんなにヒクヒクともの欲しそうにしていては、応えてあげないわけにも行きませんね」
 ゆっくり尻穴を満たされていく感覚に、青子は身を焼く官能を覚える。毎度毎度、アナルを犯される時は死にたいような恥辱とそれを塗り潰す官能を覚えるのだ。そして、その官能が再び羞恥を掻き立てる。

 裸で犬みたいに這わされて、人目のなかで派手に逝かされて、気絶して。目を覚ました青子が思わず目隠しを取ると、何処とも知れない荒れた部屋に連れ込まれていた。
「お気づきで? お姫様」
 目をやれば、数人のクソガキどもが鼻の下を伸ばして青子を眺めていた。
「あんた、捨てられたのよ。で、アタシたち七人の小人さん達が親切にも面倒を見てあげようってわけ。ああ、もちろん、アタシ達のお世話をちゃんとしてくれたらね?」
 女のような顔立ちでボッテリとクチベニを付けたオカマみたいなのが、おどけて告げている。お世話、と言いながら指差したのは、華奢な体に似合わぬ凶暴な面をした男根。
「しっかし、こんなイイ女捨ててくってスゲエよなあ」
「美人は三日で飽きるとかって言うだろ?」
「ああ、ブスの方がセックスはイイって奴か? この前の岩に激突したアンコウみたいなの、アソコだけはスゲー良かったじゃん」

 ……ああ。
 世界の半分、差し出したのに。
 こんな結末に。
 青子は、悔いるというだけの感情も湧かず、現状を受け入れた。
 ほとんど、分かっていたことだった。
 こんなガキどもを消し炭にするのは容易いこと、だけどそれは自分が支払った対価を象徴するものだ。
「あははっ」
 青子は、笑った。
 どうでも、イイや。
 もともと、セックスは嫌いではなかった。そりゃ、恋人と愛情たっぷりに睦み合うのは最高に素敵。でも、グズグズと溺れるように肉欲に浸り、思うまま満たすのだって、快感。縛り付けられて、愛撫一つされないままブチ込まれるのだって、気持ち良くて啼いたじゃない。ホテルで咥え込んだ従業員が何人いると思って? 裸で歩く青子に眼を保養した連中は数知れない。どれもこれも、官能の極みだった。
 それを教えてくれた男は自分を捨てて行ったらしいけど、自分は変わっちゃいない。いや、変えられたままなんだ。
「あはははは……」
 青子の笑い方に、クチベニはギョっとした表情。
「良いわよ」
 そこへ、青子が告げる。
「おいで? おねーさんが遊んであげるわ」
 別段、これ以上に何か無くすことなんてない。ただ、あんたなんて必要ない、と男に告げたかった。忘れたかった。魔法使いを人間の基準で操れると思ったら大間違い。何だって手段に過ぎないんだから。
 これが強がりなのかどうか、青子にも判らなかった。

 当然のように、青子はガキどもに貪られた。意外なことに、初めからペニスを差し出してくるのは一人もおらず、全員が青子の裸体にしゃぶりついた。
「あっ、んんっ……」
「へへ、感じてるね、ネーちゃん。ほんと好きなんだな」
「ああ、楽で良いけどな」
 軽口を叩きながらもその実、必死で、スキンヘッドとメガネが足を舐めている。感じたりしないって虚しい抵抗をする女のプライドをぶち壊す儀式は、女こそメロメロに感じているけれど、ガキどもも平静ではいられなかったのだ。
 触れる肌が、ローションに塗れたみたいに滑らかなのに、ピタリと吸い付くよう。爪で押せば破れそうに柔かいのにピンと張って、しなやかに強い。
 足指を一本づつ吸われ、指の股を舐り回される感覚は、脚の間の青子の牝の器官を直撃する。土踏まずや踝にキスされると、快楽中枢を直接刺激される思いがする。どうかすると、体が全部ヴァギナになったみたいに触れられる場所ぜんぶ強烈に感じてしまう。
「ふぁうっ……んぁっ……」
 犯される。名前どころか一切何も知らないガキどもに、陵辱される。輪姦される。世界に五人しか居ない魔法使いたる自分が、こんなガキどもに。
 なんて屈辱。自棄て挑発したのは自分でも、だからって喜んでいるわけじゃない。
 その秘所を、ピアスが味わっている。指を突っ込んでグチュグチュをピストンさせている。乱暴だが意外に的確で、次第に青子のツボを捕らえていく。次第に高まっていく快感に、青子は戦慄していた。
「ココが良いみたいだね」
 そう言って集中し始めた場所は、しっかりGスポット。
 それから、クリトリスを唇で挟んで擦り、舌先で突付き、ゆるゆると押し潰す。とぷとぷと湧く愛液を啜る。もちろん、快感を得るためだけの器官への愛撫は強烈な刺激。
 しかし、ピアスも芳しい青子の匂いに酔いどれている。
 その下では、チンピラが肛門に舌を当てている。
 男根を受け入れられるだけ開発された青子のアナルは、楽々と舌の浅い挿入を許す。もう馴染んだものになった、その怖ましい快感は、不思議と青子を羞恥に悶絶させる。両手で腿を撫でまわし、チンピラは指の溶けそうな快感を覚えている。
 クチベニとヒゲヅラがそれぞれの乳首に吸い付き、両手で片方づつバストを蹂躙している。イレズミは臍に舌を入れている。
 乳首は尖りきって、舌と唇に媚びていた。喘ぎつづけて零れた唾が、青子の頬を伝っていた。知らず流れた涙が目から筋を描いている。柔かく弾む仙果に、クチベニとヒゲヅラは魂を吸われる思いで口を付けていた。臍など舐めて楽しいのは、戸惑いながら快感に震える女の反応だけなのに、イレズミは舌が痺れる思いだった。
「あん……うふ……」
 こんなこともやりなれているのか、青子の体にそれぞれ忘我しながらも、ガキどもの女を弄ぶ技量は存外に確か。十四の手と七つの口が、青子を性感の底に沈めていく。
「ふぅんっ、かふっ……はぁああっ」
 融ける。体が崩れていくグロテスクな幻想が湧く。快感を得る機能以外が捨てられていく気がする。
 こんなガキどもに、好き勝手に体を弄られて逝かされるなんて、なんたる屈辱。ひとりでも女を啼かせる技はあると思えた。全身の性感を掘り起こされ尽くした青子の体は、いっそう仕事を容易にしている。
 そんな体にされたことを、青子は嘆いた。
 泣きながら、青子は手を伸ばして、誰なのか分からぬまま手近なガキの股座を擦ってやる。
「へへっ……。これが恋しいかい?」
 ひとりは、ヒゲヅラ。もうひとりは分からない。それぞれファスナーを下ろしてずり下ろし、怒張を手にして擦ってやる。
「好きなだな、ネーちゃん」
 答えたのは、イレズミ。二人とも抵抗せず、青子の愛撫を受け入れる。
「ふぅん、はぁ……んぁっ」
 注がれる快感に思考が押し潰されている。それでも、青子の手は健気に男に奉仕する。「狡いわ、あんたたち……」
 クチベニが抗議し、それでは、と、
「とりあえず一回、天国にご案内っ」
 ガキどもが動きを上げる。ただ乱暴になるのではく、繊細かつ力強く。乳首を摘み上げながら腋に吸い付く。肛門に挿入した指で、膣内を責める指と押し合う。足の裏を舐めまわしながら、膝を前後から擽る。
 悔しかった。でも、その苦味さえ甘く蕩けてしまう。腹立たしい。男のことも、ガキどものことも。
 自分のことも。
 こんな辱しめはない。こんな恨みもない。こんな哀しみもない。
 どれもこれも、昏い悦びに摩り替わって行った。
「ふぅんん、あひっ、ひゅぁあああーっ」
 抗わず、青子は身を任せた。何もかも捨ててしまえば、残ったのは快楽だけ。陵辱される歓びだけ。真っ白に焼き尽くされた理性に代えて、牡を求める本能だけが青子を支配していく。
「うぅっ、くっ」
「あぅんっ……」
 絶頂しながらも休まない青子の指に屈して、呆気無く二人のガキは吐精する。
「ネーちゃんの指、すげえ……」
 イレズミが感嘆していた。
「ほら、ネーちゃんも乗り気みたいだし、もう楽しもうぜ?」
 ピアスが音頭を取りつつ青子を四足に這わせ、その口にペニスを突き入れた。
「そうですね。我ら、同年同月同日の生まれではないけれど、これにて穴兄弟……と」
「ははは、何度目かね、これ」
「いやあ、これだけ極上の杯は初めてだろ?」
 そしてクチベニが、勝手に後ろから一番槍を突いた。
「ああ、堪らないわね、この体っ」
 塞がれた青子の口から、息だけが漏れた。
 器用に青子の体を捻らせ、スキンヘッドが肛門を犯す。
 左右から、メガネとチンピラが青子の乳房にペニスを突き当てる。それだけでも、背筋が寒くなるような快感だった。

 その後のことは、よく覚えていない。
 ……気持ち良かった。悔しくて、悔しくて、涙が止まらないけれど。
 ガキどもに這わされて、後ろから無茶苦茶に突かれて。精いっぱいヴァギナを蠢かして、腰を揺すって、楽しませてやる。同じだけ、青子も楽しんでいた。生き物みたいに襞を動かし、男根を咥えて放さず、精を吐かせる。貪る。もう永遠に、他の女の性器では満たされないようになれと。
 ……気持ち良かった。腹が立って、腹が立って、火を吐きそうなほどだけど。
 喉までペニスを受け入れて、唇も舌も歯も頬も顎も、全部オスの快感のために捧げてやる。息苦しくて、それも快感。男のにおいで咽るほど、それも快感。雁首を包んで舌の裏表の違いを楽しませてやる。尿道口をしゃぶって射精を促す。内頬を押し当て、こんな感触もあるのよって教えてやる。それが青子の悦びでもあった。
 ……気持ち良かった。恥ずかしくて、恥ずかしくて、石になってしまいそうだけど。
 乳房を揉む野獣めいた両手、肌に食い込む爪、乳首を噛み千切らんばかりに吸う唇。肌を唾液で塗り潰す舌。自慢のバストを汚されて、女としての自負を踏みにじられて、ただのセックスの道具にされて、快楽のための人形に堕とされて……。青子は、余計にそれを求めた。
 ……気持ち良かった。無念で、無念で、祟り神になりそうだけど。
 肛門に指を入れられる。全身のどんなに小さな一部分も、青子のものじゃなく、そこを欲する牡のものだ。とっくに、全身のどこでも男根に奉仕できるように仕込まれている。肛門など、語るまでもなくセックスの器官だ。青子にしてみれば、こんなに恥ずかしいところもなく、だから、こんなに昏く心を蝕む喜悦を与えてくれるポイントもない。
 ……気持ち良かった。嘆いて、嘆いて、天を墜したくなるけれど。
 足を舐めて貰うのは嬉しい。ひざまずいて足を舐めるのは惨めで、ぞくぞくする。舐めて貰うと気が狂うような羞恥を覚え、だけど、青子にはそれを歓んで受け入れるほど悦楽。でも快楽には、落ちるほど逆に欲情が昂ぶる一方。
 ……気持ち良かった。哀しくて、哀しくて、鉛に溺れそうだけど。
 両手でそれぞれペニスを握り、擦り、擽り、扱いて、奉仕する。そんなことは、眠っていても気絶していても男根に手を触れたらサーヴィスが出来るほど体に染み付いている。まず睾丸を揉み解して、期待を煽りつつたっぷりと出して頂く準備を。繊細で精緻に動く指で竿を隅々まで愛でて、威容を示して貰う。亀頭を指の中に包み、エラに引っ掛けるように指で擽り、掌で穂先をマッサージ。垂れてくる汁を塗りたくり、指の背は腹とは別の刺激だと示す。
 ……気持ち良かった。可笑しくて、可笑しくて、終末まで笑っていそうだけど。
 くすぐったい腋の下も、口付けられるのは快感。次第に、くすぐられることも、笑い死ぬほど全身を擽り責めされるのも、法悦のうち。
 ……気持ち良かった。気持ち良かった。ただ、気持ち良かった。
 世界の残り半分を差し出しても良いって思うぐらいに、気持ち良かった。

「ふふ、ほら、ここはどう?」
 どのペニスが誰のかなんて、もう青子は気にしていない。ただ、みんな平等に気持ちよくはしてやりたいと思っている。どうせなら、みんなに自分の体の全部を楽しんで欲しいと思っている。
「へへ、いただき……」
 青子の足をそろえ、それに挟んでガキの一人が陰茎を扱き始める。これも、くすぐったさと同居する快感。
「じゃ、俺こっち」
 腋の下に挟んで腰を振るのもいた。その睾丸にも、指で奉仕する。
 誰もが青子の胸を味わい、絶賛した。
 白い二つの妖果。無数の手と口と男根に蹂躙されつづけ、爪痕と歯型と痣にまみれて尚、完璧な形を微塵も失っていない。乳首の輝くような真珠色は、魔法のよう。浴びつづけた唾液と精液を吸ったように、艶に、あえかに、牡を誘う。その肌は天上の極味。突き付ける男根の槍を抱きとめ、慈しんで楽園の夢を見せてくれる。
 ガキどもの誰も、ただ背中にペニスを擦り付けて射精するなど、考えたこともなかった。誰のものとも判らない白濁液に汚されているのに、気にもせず皆が争って背中を撫でた。

「あああっ!」
 女のように悲鳴を上げて、また一人果てる。射精しすぎて、ほとんど無色になった液を青子の肌に落とす。
「くぁあっ!」
 ほとんど同時に、また一人、弾けた。青子の体のあまりの魔性に、幾ら吐精しても次を求めてしまうのだ。
「だらしないわね。ほら、二人ぐらい一緒にどう?」
 青子が、笑う。爛、と光る眼で。体のどこにも、ガキどもの指に、唇に、男根に触れたことのない場所など残っていない。体のどこにも、精液に濡れていない場所など残っていない。体のどこにも、青子に悦楽をもたらさないところなどない。淫獄に堕とされながら、青子はガキどもを道連れにしていた。
「ホント、バケモノね、あんたっ……」
 クチベニが、泡を吹く。
 スキンヘッドは、もう倒れていた。
 チンピラは、己の噴出した液の赤色に呆然としていた。
 ピアスは、腰を抜かしている。
 ヒゲヅラは、白目を剥いて尚、腰を動かしている。
 メガネは、魂が吸われるのを半ば目にしていた。
 イレズミは、地獄の快楽に苛まれていた。
「あはははははっ」
 ……青子は、笑っていた。

 

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