Half a Blue, Half a Shadow

Catalina


 男が自分を置いて去るなんてこと、するわけがないと信じる。
 それが、自分をこんな身に堕とした男に縋ることに等しいとは青子も気付いているけど、だからって信じずには居られない。
 それでも、目隠しを取りたくなる。外したらお仕置きだよ、などと言われていても。遠巻きに自分を囲んで好奇の目で見る通行人の姿がほとんど目に浮んでしまって、幻想に怯えるより現実に向き合いたくて。
 葛藤する。お仕置きで済むなら構わない。いったい、これ以上どんな辱しめがあると言うのか。
 いや、きっとあるのだろうけど、と青子は自嘲する。この奈落に底の無いことは、呪いながら男と過ごす夜毎に身に沁みている。
 そう悪いものでもないでしょ、なんて何かが囁いていた。
 ただ、取ってしまったら、素顔を晒すことになる。それだけは避けたいと、まだ思っている。体の隅々まで、あらゆる淫らなポーズを、男をしゃぶる姿を、顔に多量の精を浴びて恍惚とする表情を、自分で乳房を揉み秘所に指を突き入れる様を、体を縛る縄に酔って上気する肌を、既に撮り尽くされているけれど。男がその気になれば、キスマークとサインの添えられた写真をばら撒くのは容易いだろうけれど。
 ……ああ、それならば。自分から素顔を晒してやれば、男の思惑を外してやれるかもしれない。そんなことをしたら、男を怒らせるだろうか。それだけで、こんな日々は終わりを告げるんだろうか。今まで恥辱に甘んじてきたことが水泡に帰すのだろうか。
 でも、ほんとうに意味のあるのだろうか。
 こんな影の生活の始りの一つを、思い出す。

 

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