「ぇ……みや。っ……んん」
 鼻先を前髪がかすめ、鼻腔をそこから放たれる匂いがくすぐる。一応、部活の後……という『時間』設定のせいか、それには僅かながらも汗の匂いが混じっていた。
 だが、それも二人の距離が完全にゼロになるまでの間のこと。互いの顔が近づき、互いの唇が触れてしまえば、そんな僅かな嗅覚など感じている余裕などない。
 初めて触れる彼女――氷室の唇。その隙間からこぼれる熱い吐息。そして舌に絡み付いている唾液。それぞれの感触が、匂いが、味が……他の感覚器を麻痺させた。
(なんだ、これは?)
 そんな疑問を投げかけたところで何の意味もない。なにせ、その疑問に対する答えはもう既に提示されているから。
 ――三人分の精を――
 夢魔はそう言った。つまるところ、それは「性交をしろ」ということに他ならない。
 夢魔に限らず、人の精というものが魔術的に価値あるものだということは今や俺でも知っていることでもある。無論、科学的な観点においても、仮に優秀な人物の遺伝子としてならば貴重であることもなくはないだろう。
 ともかく、もし本当にこれが夢魔の仕業とするのならば、精を欲することに不満はあれれど疑問はない。
 だが、夢魔自身ではなく、代役に彼女ら三人を使うなんてことはナンセンスだ。それもまるで媚薬でも盛ったかのように、彼女らの心を惑わし、苦しめて。
「ごめん。ごめん……ね、衛宮くん」
 三枝のそんな弱々しい謝罪の声が下方から聞こえてくるが、それを見ることは叶わない。何故なら、氷室に顔を固定されていて下を向くことすらできないからだ。無論、返事をすることだってできない。
 だから俺はそれに対して何も応えることもできず、ただ聞くことしかできなかった。
「衛宮……くん」
 なにやらカチャカチャと金属がぶつかる音がしてくる。ズボンのベルトが外されているのだ……三枝の手によって。そしてそれが何を意味するか、それが分からない自分でもない。
「……ぅ」
 腰周りが緩くなり、下半身を覆う衣服が取り払われるのと同時に、太腿から下へ冷気を帯びていく。
「これも……あの……、その……」
 口では戸惑いを垣間見せながらも、三枝の手の動きには躊躇がない。トランクスのゴムと腰の間に差し込まれた指の感触に少しくすぐったさを感じたが、それも下ろされてしまうことで外気にその身を晒す己の下腹部。
「も、もうこんなに……?」
 それは既に限界までに怒張していた。高々と反り返ったそのイチモツは腹に触れるまでになっている。
 まだ何もしていないのにこんな状態になってしまっていることは、むしろ俺自身が訊きたいくらいだ。
 そこでふと先程の夢魔の言葉を思い出した。
 ――シンパイは、イラない。オ前にも……――
 それはつまり、三枝たちだけでなく俺にも……ということではないか? 言うなれば、三枝たちが今こんな『普通ではありえない』行為に及んでいる……いや、及ばされているのと同様に、俺自身も夢魔のせいでこんな状態になってしまっているということか?
 それに考えてみれば、夢魔というのはそもそも『淫夢』を見せる悪魔だったはず。ならば、この突然の変化は夢魔の仕業であることにもはや疑う余地すらない。
 そう。ない……ないのだが、それでも三枝はまたこの言葉を繰り返す。
「ごめんなさい、ごめんなさい。ごめん……なさい」
 なぜ三枝が謝る? 彼女が謝ることなんてない。この世界に関してはともかく、今突如として起きたこの現象においては彼女は何も関与していないはずだ。こんなことになるなんて彼女だって知らなかったはずだから。だったら……。
『残念だが、その推測はハズレだ』
(なに?)
 再び夢魔の言葉が頭の中に響く。
『私がオンナとした契約は「望む世界」「望む夢」。この世界はオンナの願望という「夢」でできた夢。ここでの出来事は全てそのオンナが望んだモノ。私が今何かをしたわけでは……ない』
(じゃあ、まさか……?)
 三枝の手が俺の下腹部をそっと撫でてくる。
 だが、やはり三枝の表情を窺い知ることは今の俺にできない。彼女の声と感触だけが俺に今出来る彼女に対しての認識。故に、今そこにいるのが本当に三枝なのか……それすら疑わしく思えてしまうくらいだ。
「……んっ」
 反り返ったモノの裏筋に三枝の吐息がかかる。生温かくて包み込むようなその息は、外気の冷たさと対照的な刺激を与えてきて、身体を芯からゾクリとさせてくる。
(まさか三枝がこんな……こんな風になることを望んでいたとでも言うのか?)
『世界の摂理は「等価交換」。何かを為すためには対価が必要となる』
(それは「三枝がこの世界を望んだから、お前はこの世界を創った」ということだろう。そしてお前はその対価として……)
『そう。だけど、私が何故そのオンナを選んだと思う? 私が何故わざわざこのオンナに介入したと思う? それは、そのオンナがお前たちとこうなることを望んでいたから。それが私には都合が良いことだったから。まぁ、そのオンナの場合「一緒にいたい」という想いの強さが私を導き、そしてその強さゆえにこんな少々屈折した状況になってしまったとも言えるが……まぁ、私にとっては尚好都合だったと言えるしな』
「…………」
 もう俺からその夢魔に問うべき言葉は持ち合わせていなかった。
 結局のところ、このまま問答を続けたところで三枝たちが苦しむの止められるわけでも、この夢から覚めるわけではないことを絶望的なまでに理解してしまったから。
 それを機に、絶望は次第に諦めへと転換する。
『フフッ。理解できたのならば、あとは存分に楽しむがいい。快楽を貪ればいい。所詮これは夢でしかないのだから。お前にはほぼデメリットすら存在しない』
 その言葉が恐ろしいまでに魅力的に聞こえてくる。耳を塞ぎたくもなるのに、その言葉は鼓膜を通して聞こえてくるものではないのでまるで意味をなさない。それどころか、俺の神経系に注入された麻薬のように、どうしようもない状況が己自身の心をどうしようもなく蝕んでいく。
『欲望に溺れろ』
(ま、まてっ!)
 姿のない声だけの相手を呼び止めることなど徒労に終わるしかない。それが諦めの感情を乗算させ、同時に、相手を失ったことで否応なく目の前の状況に直面させられてしまった。

「衛宮くんのコレ……震えてる。もしかして寒いんですか?」
「――」
 違う――という言葉が喉から出てきてくれない。
「えと……、私、その……初めて……なので、全然上手くできないかもしれないですけど。でも……」
「さえ――――んぐっ!?」
 懸命に制止するよう声を搾り出すも、タイミング見計らっていたかのように氷室が再び唇を塞いでくる。
 制止させることができない。二人を。
 流されてしまう。この状況に。
「んっ……、ちゅ」
「……っぐ!?」
 唾液をその身に纏い滑らかで柔らかな物体の感触が俺のモノの表面を控えめに撫でると、俺は堪らず声を漏らしてしまう。加えて、滑らかな中に僅かに存在するザラザラとした粗い感触がより一層俺の神経を磨耗していく。それこそ、意識ごと刈り取られてしまいそうになるほど。
「……れろ、んんぅ」
「あ、――がっ」
 やり場のない力の衝動をただ拳にだけ向ける。手の平からは血の気が失せ、みるみる内に白く変わっていく。頬の色とは対照的に。
「……衛宮。そんなに舌が好きならば、私のも味わうといい」
 一瞬離れた氷室の唇からそんなとんでもない言葉がこぼれる。
 巫山戯ている。状況と言葉が完全に常識から逸脱している。少なくとも俺の知る常識からは。
 確かに氷室の行動は普段からも理解しがたいところがある。だが、それとこれとは完全に別物だ、これは。
「ぁ……ぅん、っちゅ……は」
 唇の間から突き出た舌が俺の口内にねじ込まれ、俺の舌に鉤型に近い形で絡み付いて離れようとしない。唾液のぬめりで離れそうになっても、また別の方向から絡み取られてしまう。
 息を継ぐ暇すらない濃厚……と言うよりは暴力的なまでの荒々しい氷室のキスに、俺の中の最後の理性すらも唾液と一緒に吸われていく感覚。
 抗えない。止まれない。
 求めよ、求めよ、求めよ――。
 代わりに俺に流れ込んでくるのは、そんな情欲と氷室から分泌された唾液。
 俺はついにそれを…………ゴクリと飲み込んでしまった。

「えみ……やっ!? どうしたんだ、急にこんな積極的……んっ!」
 散々貪られた分、俺は仕返しとばかりに氷室の口内を舌で犯していく。その動きには何ら技巧もなければ、思いやりすらもないかもしれない。むしろ、自分がその行為に快感を覚えているわけでもない。ただやられたからやり返しているだけ……そんな幼稚な感情からくる行為だったのかもしれない。
 だが、当の氷室はそれを拒否するわけでも嫌がるわけでもなく、それどころかただ受身になっているというわけでもなかった。
「んっ……、んぅ、っ」
 唇で囲まれた穴で繋がった二人の口内を舌と舌が追いかけっこを繰り返しているよう――とでも表現すればなんだか仲の良さそうで活発そうな印象を持たれるかもしれないが、その中身はあまりにも卑猥。グロテスクとも表現できる二つの舌がその身を擦り合わせるようにヌルヌルと蠢き、その動きに伴って唾液が泡を立てながら音を立てる。ニチャニチャ、ヌチャヌチャと。
 この行為に途中から逆にこちらの方が唖然となり硬直してしまう。そのように動けなくなったところで氷室は唇を離した。
「……ぷはっ。ふふっ、衛宮もだいぶ雰囲気出してきたじゃないか?」
「…………」
 だが、無言。
 恋人同士でもない者とこんなことをしてしまうことに少なからず遠慮するのは当然だ。少し強引な言い方をすれば、俺は欲望を理性で抑えこみ、彼女たちのことを気遣って我慢しようとして『あげている』。たとえこれが夢の中の出来事でもあっても。
 だというのに、彼女たちはそんなこともおかまいない様子。夢魔に操られているのかもしれないことを思うと余計にタチが悪い。
 それなのに氷室の言葉はやはり氷室自身のモノであるように思えてもしまう。氷室の声だからそう思えてしまうのか、それとも……。
 だが、どちらにしたって気分のいいものではないし、気にも入らなかった。そして、そう思えてしまう自分自身が最も気に入らなかった。
 そんなことが頭の中を錯綜して口を閉ざしてしまっていると、再び氷室の方から唇に迫ってくる。しかし、それは先程俺がしたものとは程遠い……触れるだけのとても優しいキスだった。
「優しいな、衛宮は」
「っ!?」
 まだ互いの唇同士が粘着度を僅かに残して触れ合っているほどの距離にありながら、氷室はそっとそんな言葉をこぼす。
「こんな状況になっても私たちのことを気遣っている。それはとても……好意に値するよ」
「好意って……。これはそういう問題じゃないだろ」
「いや、そういう問題だよ。確かにそもそも状況が尋常ではない上に、こうも二転三転もされては何が起こっているのかもう分からないことだらけだ。だからあくまで感覚的でしかないのだが、今のこの状況もなんとなく分かる気もする。それで、優先順位というものを考えれば、今は何を優先すべきか……それくらいは理解できるんだ。それがこの行為。そしてその行為に至る前提条件は『少なからず好意を持っている』ということ。優先順位を考慮すれば、この際その好意の度合いは問わない……そういうことだよ」
「……」
 氷室が言わんとしていることはなんとなく理解できた。
 要はこうだろう――元の世界に戻りたいなら、相手が嫌いじゃなければ「やれ」、と。
 あまりにも安直な話ではあるが、確かにそれが事実であり、夢魔から提示された唯一の対価の支払い方法――解決方法だった。
「由紀香は無論のこと、蒔だって……ほら?」
 氷室が少しだけ身体をずらし、視界を開放する。
 その先に佇んでいたのは蒔寺。教室の椅子に座りながら、なにやらもぞもぞと蠢いている。
「んっ、く。ぅ」
 耳をすましてみれば、微かに聞こえてくる彼女の声。普段からは想像もつかないほどの甘い声につい自分の耳を疑ってしまうほどだ。
 そして視線は少し下へ。机のせいで彼女の姿を全身像で捉えることはできなかったが、林立する鉄パイプの間に俺はそれを垣間見る。
「……はっ、ん、ん、んぅ」
 蒔寺の両手がユニフォームのパンツの中に挿し込まれているという光景を。
 最初は注意しなければ聞きとれないほどの声だったはずが、今ではそれしか聞こえないし、目を離すこともできない。ユニフォームが内から蠢き、同時に身体を震わせる蒔寺の姿から。
 そのとき、蒔寺がふと手の動きを止め、こちらの方へ顔を上げた。
「あ……」
 涙すら浮かべた潤んだ瞳が俺を捉える。
 気恥ずかしさに視線を逸らそうとするのだが、何故かそれができずに真正面から視線がぶつかり合ってしまう。
 だが、俺の視線を受けても蒔寺は行為を止めるどころか、少しだけ微笑んで行為を再開した。
「あっ、ああ、あ……っふ」
 先程より若干声量が上がったようにすら感じられるのは気のせいか。それに、目線も下りていない。行為は続いたままなのに、視線も俺に向けられたままだ。
「蒔……寺……」
 そこで氷室がその間に割り込んできて俺の視界をまた塞いでしまう。それでも一度あの視線を覚えてしまうと、氷室越しでも見られているような気がしてしまう。俺のことを見ながらその行為に及んでいる――そのことが俺の鼓動をより一層加速させた。
「分かるだろ、衛宮。たとえ今の私たちがどうであろうと、少なからず好意すら抱いてなくてはお前に見られることをすら否定する。つまり、そういうことだ。だから……」
 それだけ言うと、氷室は再三俺の視界を解放する。しかし、今度は身体を少しずらすのではなく、ゆっくりと下へ沈ませていった。
「か、鐘ちゃん?」
「この際だ。二人で衛宮のことをよくしてやろう」
 下でしゃがんでいるのは変わらず三枝。その三枝に肩を並ばせた氷室はむき出しになった俺のモノに触れてきた。
「……くぁっ!?」
 今まで触れられていた三枝の指とはまるで異なる肌の質感、そして温度。三枝の指が柔らかく少し温かめなのに比べ、氷室のそれは張りがあり少し冷たい。その二種の異なる官職に俺はたまらず呻き声を漏らしてしまう。
 それに驚いたか、三枝は微かな悲鳴と共に心配そうな表情を浮かべるのだが、氷室がそれを制しながら何かをこっそりと耳打ちする。
 俺はそれに耳を傾けようともしたのだが、意識が指の感触に捕らわれてそれすらの余裕がなかった。
「それじゃあ、由紀香?」
「う、うん。やってみる」
 何を教えられたのか、三枝は僅かな躊躇いも見せながらも首を縦に振って応える。
 そして一度二人の指が離れると、二人が位置と角度を変えて座り直してから再びペニスに触れてくる。さらには、今度は指だけではなく、二人の顔までもがそれに近づいてきた。
「……ちゅ」
 先程三枝がしてきたように鈴口を氷室が舌で軽くつついてくる。
 よほど敏感になっているのか、俺はそれだけでも身体に電撃が走るような快感を受けるのだが、今度はそれだけにはとどまらない。
 ぬぅっと伸びてきた三枝の顔が捻りを加えながら俺の真下に潜り込んでくる。
「……ぅ」
 真下を見下ろす格好の俺はちょうど見上げる形になっている三枝と目を合わせてしまう。
 すると三枝は、やはり少し強ばった表情を見せながらも真上に向かってその舌を伸ばしてきた。
「かっ……ぁ!?」
 身体がビクリと縦に振動する。それくらいの衝撃が俺の中を駆け巡った。
「なるほど。やはりそこも弱いものなのだな」
 そんな感心そうな態度を取ってはいるが、氷室のその顔は明らかに嗤っていた。
 まったくもってふざけている。まさかこんなことを三枝に教えてくるだなんて……。
 だが、それだけでは止まらない。
「由紀香。今度は『食べてやれ』……それを」
 間髪入れずに氷室は三枝に次の行動を指示すると、今度は強く頷いてからその言葉通りのことを実行した。
「……はむ」
「――――っ!!」
 言葉にならない悲鳴があがる。意識はそれだけで真っ白なペンキをぶちまけられたようになる。
 信じられない快感と信じられない感触。
 まるで飴玉を舐めているかのように三枝は口内でその球体の一つを転がしている。俺はその度に全身を震わせ、たまらず腰を前に出してしまうと、
「んっ、ぬぶ……ちゅ、じゅる」
 今度は氷室が前でそれを受け止めた。こちらも同じように口内に含んだモノを、俺の腰の動きに合わせて前後に擦りあげた。
「は――、ぁ」
 なんてデタラメ。一見奉仕されているようにも見えるが、その実は虐待に近い。一方的であり、尚且つ俺がまだ理性を快楽に明け渡していないせいで。
 故に、与えられるのは快感というよりも苦痛に近かった。
「あむ……んっ、ふ……ぅ」
 ぶら下がる精巣を三枝は口に含むだけでなく、口全体で弄んでくる。舌で持ち上げたり、唇で甘噛みして潰そうとしたり。また、氷室の方は唇と口内でペニスの外周をこするだけではなく、亀頭を吸ったり、あまつさえわざと歯を立てたりすることも。
 痛いのは誰だって嫌だ。その人物がよほどのドMとかでなければ。つまり、普通の神経の持ち主であれば、『痛い』ことと『気持ちいい』ことの二者択一を迫られた場合、まず間違いなく『気持ちいい』方を選ぶ。
 誰に言うのでもないそんな言い訳を最後に、俺は自身で最後の最後まで引き止めていた理性を手放した。

「んぐぅ!? え、えみや……っ!」
 もう余裕ある態度は見せさせない。有無すら言わさせない。
 俺は氷室の後頭部を片手で押さえ、彼女の口の動きを自分の力で制御する。
「んぶっ、んっ、んっ、んぅっ」
 我慢し続けたせいか、氷室が口唇での愛撫を一往復させるたびに射精感は累乗的に加速していく。
「衛宮くんのココ……ぷるぷる震えてる。も、もしかしてイ……イっちゃう……の?」
 一方、もう片方の手で頭を固定された三枝は前後に振幅する性器の動きに舌を伸ばしてくるのだが、そんな言葉を口にする。その台詞に色気は皆無だったが、そのあまりの恥じらいを含んだ言葉は誘惑以外の何物にも思えなかった。
「あ、あぁ。もう……出そうだ」
 快感と苦しみを含んだ弱々しい悲鳴。それを聞いた二人の顔が、俺には一瞬怪しく歪んだように見えた。そして、モノを口に含んで喋れないはずの氷室が「たくさん出していい」……そんなことを言っているように聞こえた直後、二人に拘束されて空に投げ出されたペニスからは多量の白い液体が放出された。
「んっ!?」
「きゃぅ」
 噴水のように弾け出されたそれは、放物線を描いて彼女ら二人の顔や髪、制服の上に降り注ぐ。氷室の眼鏡の視界を白色に染め、三枝の何十もの髪の毛を一束にしてしまうほどの量の粘着質な液体がそこかしこに飛散した。それほどまでの量の精液が出たことに俺は驚くのと同時に、それを被った彼女らの異様なまでの身体に異様なまでの興奮を抱いてしまった。
「……」
 ごめん――その一言がふと口からこぼれそうになったのだが、それは結局出ることはなかった。無論、意図して止めたわけではなく、自然と出そうになり、自然と止まったというだけ。
「ものすごい量が出たな、衛宮」
 ツーと眼鏡の表面をなぞりながら液体を掬い取ると、氷室はそのままその指を口に運び入れる。
「でも、すごく濃くてすごく苦い。これが男の人のなんですね」
 まるで料理の味見をしているかの様子で三枝も同様に精液を舐め取っていた。
 ペロリ――二人が唇周りのそれを拭い取るように舌を動かすその仕草。俺はその仕草に再び下半身にものすごい熱を帯びるのを感じた。
「ぅ。こ、これはすごいな。まだこんな……」
「さ、さっきよりも熱くて、大きい……」
 三枝は再び跳ね上がったペニスに怯えもせずに手を伸ばしてくる。その指に圧迫されてドクンドクンという血の流れを感じるが、それは一体誰の血圧か。握られている俺のか、それとも握っている三枝のか……。
 おさまらない。
 あれだけ多量の精液を放出したばかりだというのに、俺のソレは微塵も萎えることなく、むしろ余計に肥大化してしまっている。
 ――三人分の精を――
 再びあの言葉が脳裏によぎる。
 そうだ。まだ終わるわけにはいかない。それに、彼女らにかけてしまった一回の射精が一人分としてカウントされたとも考えにくい。
 ならば、俺がしなくてならないのは……。
「衛宮……」
 白濁した眼鏡の奥に覗く氷室の瞳がちらちらと俺を流し見をしてくる。普段とは違うその恥じらいと切なさに満ちた視線は俺をどぎまぎさせ、一層俺のモノをいきり立たせた。
「そろそろ、して……くれないか?」
 氷室はおもむろに立ち上がると、スカートの裾口からそっと中に手を差し入れた。
 捲くれ上がったスカートの下に覗く滑らかな太腿がやけにいやらしく見えてしまう。さらに、その太腿を伝いながら下りていく下着の皺のよれ具合のなんと卑猥なことか。
「由紀香はそこの机の上に乗ってくれるか?」
「えっ? あ……うん。でも、どうするの?」
 少しだけ怯えを見せる三枝に氷室は笑みを浮かべながら答える。
「初めは私が衛宮にしてもらうからな。そのとき由紀香には私がしてあげるよ」
「か、鐘ちゃんが!? で、でもでも、蒔ちゃんはどうするの?」
「楓か? アレは今は一人で盛り上がっているようだから、とりあえずは後回しかな?」
「はぅ……」
 だが、三枝は顔を若干曇らせつつも、氷室の言葉自体を拒否はしなかった。
 律儀に上履きを脱いでから机の上に腰掛ける。それも体育座りでこぢんまりと。
「そんな格好のままでは何もできない。脚を開いてくれるか?」
「う、うん」
 姿勢自体はそのままの形で両脚だけをゆっくりと左右に開いていく。その動きに合わせて三枝の少し長めのスカートも徐々に捲れ上がっていき、九十度近くまで開ききったとき、下腹部を覆い隠す障害は完全にどけられていた。
「は、恥ずかしいよ、鐘ちゃん」
 机の上で股を大きく広げ、その下腹部を氷室の目の前に晒す三枝。無論、俺も氷室の肩越しにその光景を見ていた。
「今更なにを言う、由紀香。ほら、下着も脱がせてしまうから少しだけ腰を浮かせられるか?」
「……」
 三枝は何も答えない。顔を俯かせたままで首を縦にも横にも振ることをしない。だが、やはり今度もまた行動に対しての拒否はしなかった。
 氷室から目は背けたままだが、僅かに腰を浮かせる。
 氷室はその隙を見逃すことなく、スカートの意味なき今、唯一下腹部を覆い隠している下着に手を伸ばし、要領よく脱がせていった。片足から順々に。
「…………」
 スカートも捲れ、下着も取り払われた今、三枝のあそこは完全に外気に晒されていた。
 うっすらと生え揃った陰毛とその下でひくひく震えている秘部の様子がここからでもよく分かる。
 ゴク……。
 初めて見る三枝の性器に異常な興奮を覚える。これからあそこに自分自身が入ってしまうことを想像してしまうと余計に。
 しかし、そんな俺の様子を察したのか、氷室はこちらを振り返り釘を刺してきた。
「悪いが、由紀香のことは後のお楽しみだ。それよりもまずは……」
 そう言って氷室はその机に手をついたまま、腰だけをこちらに突き出してくる。そして、その腰周りのスカートに手を伸ばし、自分から捲り上げた。
「衛宮のソレを私のココに……挿入れてくれ」
 恥じらいはあるものの躊躇いの全くないその誘いの言葉に、俺の下半身のモノは完全に硬度を取り戻し、痛いくらいに大きく反り返っていた。
「さぁ」
 我慢できない。できようはずもない。
 三枝と氷室の秘部をこんな間近で、かつ同時に見せられた上に、誘いまで受けては気持ちの抑制などしようがない。
 理性などもうとっくに事切れている。だが、最後の最後に俺はこう問うた。「氷室の中に挿入れたい。いいか?」と。
 それに氷室は笑みのまま頷いた。

「ふっ、う……あああああぁぁぁっ!!」
 次の瞬間、その氷室から劈くような悲鳴があがる。とは言っても、その悲鳴には苦痛からきているものとは違うように聞こえる。驚き、もしくは……。
「あ、はぁ。衛宮のが身体の奥まで入ってきているのが分かる。ピッタリ収まるなんて、もしかしたら私と衛宮の身体の相性は抜群なのかもしれないな」
 その長い髪の毛を揺らしながら僅かにこちらを向いてくる氷室。その表情――彼女の白い肌は耳まで真っ赤に染まる紅潮しており、瞳や眉は蕩けたように垂れ下がっていた。
 氷室が俺のモノで感じている――それはその表情から明らかだったが、それと同時に疑問に思うこともあった。それが俺に一時の理性を与える。
 彼女の言葉には痛みより悦びが大半を占めており、それになにより結合部付近には彼女の膣内から溢れ出た愛液『だけ』が纏わりついていた。つまり、そのことから導き出されることとは……、
「氷室。お前、初めてじゃないのか? もしかして、好きなやつがいるとか?」
 しかし、氷室はその質問に対して何故かキョトンと目を丸くし、そして首を傾げた。
「はて。そのはずだが……、確かに何の痛みも感じなかったな。初めてというのは確かものすごい痛みを伴うものだと聞いていたが」
「…………」
 どうやら氷室自身も気付いていなかったらしい。俺は女ではないから、破瓜の痛みというものがどれほどなのかは想像しがたい。痛みも血もないという場合もありえるのだろうか?
 だが、今の氷室はもはやそんなことは思考の範疇にはなかったようで、自ら腰をくねらせ始めていた。
「ひ、氷室……?」
「痛みがないというのなら、それはそれで今は好都合じゃないか? これで衛宮は私が始めて味わうであろう苦痛を気にすることがないのだから。それに、好きなやつ……だったか? 安心しろ。今は特にこれといっていないよ。まぁ、敢えて挙げるならば、衛宮が最もそのポジションに近いかもしれないな」
 笑みを交えながら、そんな『冗談』を言ってくる。
 後背位ゆえに氷室の表情を真正面から見れるわけではないが、こちらを向いて見せる横顔のにやけぶりからそれが明らかに『冗談』だと分かっているのに、ドキリとさせられる。
「……んぁ。今、衛宮のが私の膣内で大きくなったぞ?」
 そして氷室はまた誘うように腰を振り、中に入った俺のモノを弄んでくる。加えて、俺の目の前で揺れるそのお尻は可愛くもあり、同時に激しく淫靡でもあった。
 それらが一時戻った理性を再び押し流す。
「氷室……動くぞ?」
「あ、ああ。早く……きてく……、っひ!?」
 俺は氷室の返答を待たずして、既に腰を動かし始めていた。
 もはや遠慮などない。尻肉に指が食い込むくらいきつく掴んで対象物を固定すると、俺はそれめがけてがんがんと腰をうちつける。
「あぅ! いきなりはげし……はげし……いっ! こんなに……奥まで……、ぉ……くぅ」
 ピッタリ収まっていたソレは、勢いをつけることによって氷室の膣内の最奥部を激しく殴打する。俺自身もまた、棹の部分を圧迫されるだけでなく、鈴口の部分が何かとぶつかり合う感触に鳥肌の立つような快感を覚える。
 一人では到底得られないこの柔らかい肉の感触と熱。俺の動きに合わせて漏れる嬌声と生々しい息遣い。そして、それを発しているのが、普段から冷静を身に纏っているあの『氷室鐘』だというのだから、快感にも酔ってしまうというもの。恐らく、美酒に酔うというのはこれに似た感覚でもあるのかもしれない。
「はっ、はっ、はっ……」
「衛宮、衛宮、えみや……。こんなに気持ちよくなる……なんてっ、はぐぅ!?」
 犬の息遣いのように……この格好からしても、ただの獣のように動く。
 それに対して氷室は腰をこちらに突き出して突かれながらも、手はしっかりと机の縁を掴み離さず、俺の動きにその身を全て委ねていた。

 しかし、それほどの激しい動き――生徒用の机を掴んだところで支えきれるはずもない。それでもこうしてきちんと支えられているのは、その机の重りとなっている一人の少女のおかげでもあった。
「か、鐘……ちゃん。あの……」
 それは氷室の指図通りにその机の上に乗り、そして下着を取り払われて座っていた三枝だった。
 俺たちの行為を見ていたせいか、三枝の視線はどこか物欲しげなものになっており、身体もモジモジと太腿を擦り合わせているというような状態だった。
「ああ。済まなかったな、由紀香。お前のことをそのままにしてしまっていて。約束通り、由紀香は私がしてあげるからな」
 そう言って、氷室は由紀香に近づくために身を少し前方へ乗り出させる。その動きに伴って、俺のモノが氷室の中から引き抜かれそうになるのだが、俺もまたそれに合わせて一歩前に踏み出した。
「それじゃあ、由紀香……」
 再度確認を取るというよりは、恐らくただの合図でしかなかったのだろう。氷室は三枝の返答も待たぬまま、唇から突き出した舌を三枝の秘部に這わせた。
「んひゃうぅっ!?」
 突飛にそんな奇声があがり、三枝の身体の動きと共に机がガタリと揺れた。
「敏感だな。由紀香はもしかしてこういうのは初めてか? それとも経験があるのか? 顔に似合わず、意外としたことありそうな気はするが……どうなんだ?」
「そ、そんなこと……言えな……ひぃ」
 不自然なほどに首を大きく横に振って答えるのは、それが完全な冤罪が故か、それとも照れ隠しか。それを知る由もないが、今は別にそんなことを知りたいとも思わなかった。
 それは氷室も同様のようで、それ以上に追求することはせず、ただ舌の動きだけを加速させた。
「ふぁ、あっ、あぁ……。鐘ちゃん、ダメ……ダメ……だよ、こんな……んあぁ」
「何がダメなんだ? 私にこうされることがか? それとも、由紀香のココがもうこんなになってしまっているからか?」
 ジュルリと氷室の舌なめずりをする音が印象的に響く。ここからでは氷室の表情は見れないが、恐らく今の彼女はものすごく意地の悪い、にやけた面を三枝の前に晒しているのだろう。
 そして、舌が立てる音は一層大きく、卑猥なものへと変化していく。
「やっ、あ……はぁ、ん。こんな……こんなの……、私……しらな……知らない……っ!」
 三枝の声が揺れ、その瞳には涙が溢れる。そして最中に、俺に何かを懇願するかのようにその瞳を向けてくるのだ。
「三枝……」
 あの三枝が下半身を晒し、聞いたこともないような声をあげている。その姿も声も俺をそそるのに十分なものだったが、其れ以上にどこか可哀想に思うところもあった。
 だからかもしれない。三枝のことを援護してあげたくなったのは。
 つまりそれは言い換えれば、氷室に抵抗する……ということでもある。そして、この状況で氷室に抵抗する方法は一つしか考えられなかった。
「……んはあぁぁっ!?」
 後方からの不意打ち。
 先程の三枝の奇声にも負けないほどの声が氷室の口からも漏れる。
「ま、まて、衛宮。今は由紀香のことをしているから、私のこと……は……、は、あぁぁ!」
 待つつもりはないし、そもそもそんなことは俺には関係ない。
 ――初めは私が衛宮にしてもらうからな。そのとき由紀香には私がしてあげるよ――
 それに、そんなことを言ったのは氷室自身だったはずだ。ならばその言葉通り、俺は氷室とし、氷室は三枝にしてやればいいだけのこと。
「んあっ、あっ、あん……はあぁ。う、あ、ああぁ……」
 一瞬三枝に対して見せた意地悪な余裕は、俺がただただ腰を打ち付けることによってかき消す。
 しかし、それでホッとしたのも束の間のことで、氷室は余裕こそ失ったものの、三枝に対する口唇奉仕は止めることはしていなかった。
「ひゃ……ぁ。鐘ちゃ……ぅうんっ。そんなに舌を入れちゃ……だ……めぇ」
 果たして今三枝のその場所はどんな具合になっているのか……見れないのが残念に思うほどの誘惑的な言葉を漏らす。だが、その妄想が興奮をより高め、俺自身の動きを速めさせる。
「あっ、ん、ん……くぅ! 衛宮……っ、つよ……強……い。これは……はあぁんっ!」
「鐘ちゃ……、鐘ちゃん……。動いちゃ……だめ、そん……な、あぁぁぁ」
 俺が動くたびに氷室が喘ぎ、それに連動して三枝も喘ぐ。その声の連鎖が、俺に『二人と同時にしている』という錯覚をさせてくる。そしてその錯覚がさらに、氷室の膣内に入ったペニスに対する圧迫を多重に変化させてくる。二人分の圧迫感を覚えるがごとく。
「やば……っ。氷室、すごい気持ちい……」
 ついそんな言葉をこぼしてしまうくらい、俺は感じてしまっていた。氷室の肉体を。
「そう……か。気持ちいいか、衛宮。もしかして、もうイってしまうのか?」
「そ、それは……」
 そんな挑発的に言われては、「まだ大丈夫だ」と強がりたくなるのが男の性。
 けれど、今の俺にはそんな強がりすら見せる余裕もないほどに高まってしまっており、ただ「あぁ」と一言しか返すことができなかった。
 それだけ聞くと、氷室は俺に突かれ喘ぎながらも、三枝への愛撫に再び没頭する。
 気のせいか、俺が氷室のお尻に自らの腰をパンパンと叩きつける音よりも、三枝の秘部から漏れる液体の弾ける音の方が大きくなっている気もした。
「かね……かねちゃん! やだっ、私……やだ! もうきちゃう……きちゃうの」
「安心しろ。皆、一緒だ。私も、由紀香も、そして衛宮も……皆一緒にイけばいい」
「で、でも! 私、本当に……もうもたな……い……っ!」
 氷室の後姿越しに僅かに見える三枝の輪郭がビクビクと震えているのが分かる。恐らく達してしまう寸前なのだろう。
 だが、それはこちらとて同じこと。次の瞬間、爆発してしまってもおかしくないくらいに俺のモノは膨らみ、熱い塊がこみ上げてきている。
「えみ……や……。私も……も……ぅ、イク……イ……く」
 氷室自身の声ももう蚊の鳴くような弱々しいものでしかない。
 そこで俺はもう我慢することを止めた。最後の瞬間に向けて、腰のストロークを大きくする。亀頭が抜けないところまでギリギリ引いて、そして一気に叩きつける。その繰り返し。
「はぁ……あっ……、あっあああぁぁぁんんっ!」
 その二往復目、そこで一早く限界を迎えてしまったのは、三人の中で比べれば一番まだ余裕のありそうな氷室だった。
「あ、あ……、あああぁ……んんんぅぅっ」
 掴んでいたお尻が腰ごとビクンビクンと飛び跳ねる。その姿はひきつけを起こしているようで痛々しくもあるも、なにか甘美であり、どこか美しさも感じてしまった。絶頂という高みがそう思わせるのか……。
 だが、氷室の絶頂の余波は俺たちにも襲い掛かる。
「噛んじゃ…………あひっ、いあああぁぁぁぅ」
 絶頂の喘ぎによって大きく開いた口が閉じて三枝のモノを噛む形になってしまった、といったところだろうか。氷室のその最後の愛撫に、三枝も大きく腰を浮かせて身体を震わせる。絶え間ない絶頂の間隔に合わせて机がガタンと揺れ動いていた。
 そして俺の方も、氷室がイッたことによって恐ろしいまでに収縮した膣壁によって、俺の溜まったモノを絞り取ろうとしてくる。それにはもはや痛みすら覚えるほどでありながらも、その痛みすら快感に変わるほどだった。
「氷室、三枝――っ!」
 最後に、特に意味もなく二人の名前を叫んでから、俺はいまだ震える氷室の腰を自分の下へ引きつけ、そこで自分の全てをぶちまける。
「あ、あぁぁああぁぁ……」
 自分から彼女の中へドクドクと注がれていく注入感と開放感。同時に訪れる心地いいまでの脱力感。それらが一体となって、俺を射精の余韻に浸らせる。
「膣内に……、私の膣内に衛宮の熱いのが……こんなにたくさん……」
 言葉通り、それは俺に長い余韻に浸らせるほどの大量の射精だった。既に彼女たちの口で一度してもらったことなど何の関係もなかったように。それどころか、先程を遥かに凌駕するほどの量の精液が俺から氷室へと注がれていった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
 それが治まったときには、二人の身体は四肢の全てに力を失っている様子だった。氷室とは繋がったままだけれど、俺が支えていなければ間違いなく立っていられないほどに脚が既に機能していなかったし、上半身は机の上にうつぶせにしていた。
 三枝の方もただ荒い呼吸を繰り返し、口をポカンと半開きにしたまま天井を見つめるだけだった。
 信じられないほどの快感の代償に失った体力と気力。最初は心地よさすら感じたものの、今はもうここまでの疲弊感だ、もしかしたらそれ以外のものまで失ってしまったかもしれない。
 これで夢魔の言う「一人分」とするのであれば、これをあと二回も繰り返さなくてはならないということになる。
 確かに快楽は得たい。あれほどの気持ちのいいことを体感したくないという方が嘘だ。それに、この際オトコの欲望だけで言うならば、三枝や蒔寺ともしたい……などと考えてしまっている俺もいる。
 だが、体力がついていかない。精である以上、やはり魔力も奪われたと考えることが妥当か。故に、肉体的にも精神的にも力のドレインが想像以上に激しかった。
 だというのに、俺の肉体の一部はまるで萎えることを知らない。むしろ、その部分は先程以上の猛りすら放っている。
 そして次の瞬間、ソレは痛々しいまでの悲鳴……いや、咆哮をもって応えた。

「え……みやぁ……。あたし……も、して……ほしい」

 横合いから片耳に飛び込んでくるその弱々しくも艶の交じった言葉に。

 

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