「あー、もう、判りましたってっ」
 秋葉がまだ何か言おうとしているけど、隙を盗んで逃げ出した。
「秋葉さま、志貴さんも御疲れのようですから……」
 後で琥珀さんが秋葉を宥めてくれているのが聞こえる。全力疾走で逃げている俺の背中を見ながらじゃ、説得力に欠けるとは思うけど、それ以上追っては来なかった。
 飯の後に説教されて、やっと逃げ出してアルクェイドを訪ねたのが今日の朝。帰ってきたら門限を過ぎていたもんで、食事や何やの後で同じようなことになった。情けないといえば情けないが、秋葉の言うことはいつも正論だし、さほど文句はない。
「しかし、あこまで言うかね」
 むしろ可笑しくなりながら、部屋のドアを開けた。
「ん?」
 すぐ休んでしまおうかと思っていたのだけど、ベッドの上に黒猫が寝ていた。昼はアルクェイドのところに居たし、いつの間に帰って来たのやら。退かせるのも忍びないし、幸いレンが居るのは端の方だったから、そっと反対側から蒲団に潜り込んだ。
 気持ち良く眠りに落ちながら、かすかに違和感覚えた。正体は掴めなかったけど、懐かしい思いがした。


ティラミス



/1

 暑い。まだ熱帯夜は続いているのか。
 熱い。熱病にでも罹ったように体が熱い。
 不思議と、喉は渇いていない。それでも水が欲しかった。渇きを癒すためではなくて、嗜好品のように水が欲しかった。たっぷりと摂取したはずなのに、飲料を求めている。
 また少し、違和感。水を飲みたがっているのは自分じゃないような気がした。なら、誰なのか。渇死した誰かの幽霊に憑かれたのでもあるまいが、代わりに飲んでやれば満たされるのか。
「水ぐらい」
 飲んでやろう、と思って起き上がる。
 明かりは消して寝たはずなのに、充分に明るい。自分の部屋ではない。
 ベッドには寝てもいなかった。しばし絶句して、状況把握に努める。自分の両脚が白いものに半ば埋もれているのが見える。シーツや毛布ではなくて、柔かい泥みたいだ。沈まないで済んでいるのは板状のものに寝ていたお蔭。ただ、体を起こした途端、お尻の下でパキパキ言って折れている。頼れるほど丈夫ではないみたいで、慌てて手を下に突いたらやっぱり埋もれてしまった。
 横に目をやって、俺と同じく板の上に座っている黒い服の女の子を見つける。レンは片脚を投げ出し、もう片方は軽く曲げて、俺の方を向いていた。黒い服と言ってもいつものじゃなくてキャミソールドレスで、細身だけどぷにぷにした感じの可愛らしい腕が見えている。ニーソックスの伸びやかな脚は白い泥に汚れている。
 目が合うと、花びらが綻ぶように微笑んだ。口の周りや頬にも白いものが付いてる。泥だらけの手で拭い、口に運ぶ。嬉しそうに舐めているのを見て、やっとクリームって言葉が出てくる。生クリームらしい。
 って、これ全部?
 六畳間ぐらいはありそうな生クリームの海。その目でみれば、座っている板は巨大なウェハースだ。振り向いたら、メートル四方は軽く越えるコーヒー色をした塊がある。スポンジみたいだと思って、半分は正解なのだと気付いた。スポンジケーキなのだ。
 レンの後には、茶色っぽい液が掛かった艶やかな薄黄色の塊。ようするにプリン。周辺に行くと転がっているのは、一つが広げた手ぐらいはあるコーンフレークとか、バットみたいなポッキーとか。半球状の凸凹した固まりは、この分だとバニラアイスなんだろう。
「楽しそうだね、レン」
 理解できて落ち着いた。要するに夢だ。レンが巨大ケーキを夢の中で具現化してるんだろう。ケーキというよりパフェかな。
「でも、なんで俺を巻き込むの? って、自分の夢ってのは無いのかなあ、レンもアルクェイドと同じで」
 夏の事件の時はレンの夢だったけど、普段見ているのかどうか。あるいは、自分の夢を操作出来るのかどうか。
 首を傾げたのか肯いたのか判らないけど、またレンは微笑んで、クリームの上に膝立ちする。じっと見ている視線を追ったら、俺の下半身に辿り着いた。寝間着の下に、隆起した己の生殖器を認めた途端、さっきまでの熱さが戻って来て急に汗をかく。俺のイチモツは猛っていた。
 レンの方に目を戻したら子供の顔のまま淫蕩に笑っていて、その表情に、こんなに暑いのに寒気がした。
「レン?」
 呼びかけながらも、判っている。いつか見た夢を思い出す。レンはケーキが食べたくて夢を作ったんじゃない、俺を欲しがっているんだ。水が飲みたかったのはそのせいだろう。
 指に残っているクリームを小さな舌で舐めながら、近付いてくる。あどけない仕草のはずなのに、獲物を追い詰めた肉食動物を思わせる。
 今さら何をって思いながら、やっぱり抵抗はある。どの程度の精を彼女が必要としているのか俺には判らない。でも、魔術師ならぬ俺には一度契約したからって魔力を分けてやれる訳じゃないから、欲しがったら与えてやるしかない。
 ただ、艶かしい目つきや舌の動きに息を飲む思いだけど、姿はどうにも幼い。昂ぶっているのはレンが望んでいるからだと言い訳は出来るけど、背徳感にもまた息が詰まる。
 そんな俺を見透かすように笑いの形を変え、さらに迫ってくる。止めようとしたけど、埋もれている手が抜けない。正面に来て、少し開いた俺の足の間に片膝を入れる。首を傾げて目を細めた。幼い顔に浮かぶ不釣合いな色香に意識を奪われていると、ゆっくり近付いてくる。気が付いたら、唇を重ねていた。
 いつかした、さよならのキスみたいに、愛情の感じられる口付け。だけど、今回は情欲も篭っている。必要だからじゃなくて、欲しいから求めているんだって、判る。
 柔かい。熱くて小さな舌が入ってくる。口に残っていたクリームが甘い。自分の手は相変わらずクリームに固められて動かせないから、されるがまま。嫌がる感情はないのだけど、拒絶しようとする理性は残っている。人じゃないんだし大丈夫なんだと頭が告げても、こんな小さな子とすることじゃないって胸の方では言っている。
 クリームの甘味が喉に溶け落ちた頃、そんな葛藤もレンの舌の甘美に融け堕ちていた。抱き締められないのがもどかしくて、知らず、レンの口を俺の方からも吸っていた。絡んでくるのは小さな舌なのに、触れ合う点で生まれる快感は脳天まで突き刺さる。息を継ぐために離れるたび、俺は必死で追い縋っていた。
 やがて俺の胸に手を押し当ててレンは体を離す。濡れた目でこちらを見ながらシャツの裾を掴んで引き上げ、俺の胸を露出させた。口を開いて舌を出して見せ、頭を下げて俺の胸元に頬を当てる。しばらく頬擦りしていたあと、不意に乳首に吸い付いてきた。
 ぺちゅっ
 小さな唇が俺の乳首を覆い、吸っている。その中で舌が動き、好物のように乳首を舐めている。
「うっくっ」
 男でも乳首は感じるし、硬くもなる。その快楽に浸ることも、姿を見なければ出来るけど、目を閉じたりするのは惜しい。愛らしいレンを見ていたい。見ていると不道徳に思えて、だけど次第に不道徳さに快感が掻き立てられ始める。
「あぐっ」
 もうひとつの乳首に口が移って同じことを始め、同時に元の方は指で触れてくる。残っていた唾液やらクリームやらでぬめっていて、どっちも舐められているみたいな気がする。
 今度は両手でそれぞれ乳首を弄り出し、またキスして来た。啄ばむように短い接触を繰り返されて、じれったくなる。やっと長くくっつけて来たから舌を出そうとしたら、また逃げられた。まっすぐ俺の目を見ながら、悪戯に笑う。
「ちゃんとキスして欲しいな、レン」
 艶めいた笑いに変化し、今度は濃厚にたっぷり舌同士踊らせる。レンの舌は柔かくて小さいけど、少し凹凸があるのが判る。猫ほどじゃないけど、その感触が独特で刺激が強い。その上、どうしたものか、口の中の届きそうに無いところまで舐めてくる。しばしば不意打ちされて、毎度腰まで快感が走る。
 未練たらしく吸い続けようとする俺を抑えて、レンはキスの時間を終え、喉から首筋に目標を移した。思い切り舌を出してるんだろう、濡れた感触が這い降りていく。まだ両手で乳首を転がしながら、胸の古傷の上を唇で辿る。
 胸から手を離すと、寝間着のズボンと下着を一緒にずり下ろした。俯いたレンの柔らかで豊富な髪が俺のお腹を擽っている。ますますペニスが猛り狂って、どうにかしてくれるのを待ちわびている。口に押し込んでやりたいけど、まだ手は封じられたままだ。
 屹立した俺のモノを確かめたあと、一度顔を上げて目を合わせてきた。その顔に無邪気な嬉しさと成熟した官能が同居していて、また欲情と背徳感が湧く。にっこりと笑い、口を開けて舌を見せる。小さな手でそれぞれ俺の内腿を揉み、膝の方から腰に向かってくる。ペニスの幹のあちこちに軽く触れる程度に唇を当て、すぐ離れるのを繰り返す。
「楽しんでるね? レン」
 さっきから、じれったい思いばかりさせられているのは、レンがちょっと意地悪して遊んでいるんだろう。
 両手が脚の付け根に届いた頃、ようやくレンは口を大きく開けて、幹を横向きに咥えた。舌が裏側に当ってざらっとした感触があり、先端に向かって口を動かすにつけて快楽が生じる。亀頭のすぐ下まで来て、はじめの位置に戻ってしまう。三度ほどそうしたあと、反対側から咥えた。同じように登り、今度は離れずにそのまま降りていく。
 脚を開かせようとしているのに協力した。腕と違ってクリームに固められてはおらず、自由になった。
 可愛らしい手で袋を掴んで、玉を片方づつ、ゆるゆると揉む。持ち上げて、裏側の下のに口を付け、舐め上げてくる。いっぱいに口を開けてパクリと咥え、片手で竿を握って上下させる。残りの手は相変わらず袋を揉んでいる。
「うぁっ」
 夢中でお菓子でも食べているみたいに、俺のグロテスクなモノを弄び、しゃぶっている。脚の間に半ば寝そべって、たまに顔を上げて様子を伺っているようだ。
「気持ち良いよ」
 言ってあげると、安堵したように愛撫に没頭した。やっと亀頭を口に含んでくれた。レンのサイズでは奥まで受け入れるなんてことは無理だから、先端だけを唇でぴったり覆い、舌をぐるぐると回している。尿道口に押し付けて、亀裂に沿って何度も何度も往復する。
 周りからクリームを掬い取り、べっとりとペニスに塗りつける。
「くはぁあ」
 愛撫がぬるぬるした感覚になって、馴染みが無いから強烈で、逝きそうになったけど、ぎゅっと根元を掴んで邪魔された。
 くすぐったくて甘い感覚を楽しんでいながら、小動物の世話をしているような意識が消えない。そんな思いを読み取ったわけでもあるまいけど、レンの動きが不意に激しくなる。かなり無理している様子で口を開き、ぎりぎり奥までペニスをくわえ込む。喉の奥に先端が当っている。往復するごとに舌の位置を違えていてるらしく、毎度違うところが刺激される。片手で精巣を弄りながら、もう片方で乳首を弄りに来る。
 こんなに淫らな行為なのに、健気に思えて、抱き締めてやりたくなる。腕を使わせてくれないのが恨めしい。
「くぅ、うぅあぁっ」
 俺が喘ぐと、中断して不思議そうな目でこっちを見詰めた。だけどすぐに再開する。両手を先端に添え、尿道口を指先で開いてその内側を舐めようとする。舌先がさっきより深く入り込んで、裂け目を行ったり来たりした。何かが尿道に逆向きに潜り込んでいくみたいな錯覚を覚えて、精巣を直接内側から突付かれているような気がしてくる。
 強烈だった。それなのに、尿道を塞がれているみたいに、射精に及ばない。また手が陰嚢に戻り、イメージの上では中からも外からも責められている気分だ。
「レンっ」
 さっきから焦らされてばかりだったのを思い出す。逝けそうなところで逝かせてくれない。頭を掴んで暴力的に突っ込みたくなるけど、まだ手は固められている。何度目かの射精感が起こり、でもまた無理矢理口に抑え込まれた感じ。
 先端を離れて横咥えにする。先端は掌を当てて掴んでいる。結構な力で揉まれているけど、手が柔かいせいなのか気持ち良いばかりだ。袋と亀頭をそれぞれ手で愛撫しながら、その間を口と舌が行き来している。
「レン、充分だから、入れさせてくれないか」
 言うと、こっちを見て、また口を開けてピンク色の舌を見せつけた。それから先端を咥え、舌では尿道口を刺激しつつ、唇は傘の部分を調度覆って細かく出入りさせる。口に出させる積りなのだと判った。快感が先端に集中して、でも何か足りなくてフィニッシュに至らない。また、精巣まで何か細いものを差し込まれているみたいな内側からの快感が高まる。
 手が竿に添えられて、両手で上下にしごき始める。さっきのクリームが残っているからベトベトで、手の感触じゃない。片手が更に下に伸び、袋も通り越して尻の方に届いた。小さな指が肛門を突付く。
「ちょ、そっちはっ」
 慌てる俺を余所に、クリームで滑って指先が入ってしまう。
「ひゃうぅっ」
 その変な感覚に悲鳴を上げた。お構いなしにレンはお尻に入れた指を前後させる。力が入らなくなって、他のところの刺激に絶えられない。
「うあっ、レ、ンっ」
 いっそう速くなった口と舌の動きにやられて、いきなり果ててしまった。線になっていた細い何かが抜かれたような感覚があり、それを幸いと精液が奔流となって飛び出す。
「くふっうっ」
 驚いたのかレンは口を離してしまい、飛び出したザーメンが幼い顔に浴びせられた。慌てて咥えなおして、残りを口に受け入れる。睾丸を揉み、幹をしごいて出せるだけ出させようとしている。
「ごめん、顔に付いちゃったね」
 すっかり吐精を終えて、声をかけた。
 レンは俺の膝に跨って座り、クリーム塗れの手で顔に残った白濁した液を集めて口に入れる。ついでに手に付いたクリームをペロペロと舐め取る。両手と顔が綺麗になった頃、俺に向かって大きく口を開けてみせた。全く飲み込んでいなかったのか、濁った俺の精子と純白のクリームが混ざり合ったもので口の中がいっぱいになっていた。
 物凄く大量に射精したみたいに思えて、恥ずかしく思うとともに満ち足りた気分にもなる。
 レンは少し舌の先に混合物を載せ、突き出す。口を閉じると、唇の外に残る。また舌を伸ばして舐め取る。そんなことを数回繰り返した。やがて、華奢な喉をこくんと鳴らし、飲み込んだ。口を開けて舌を伸ばし、確かに無くなったのを見せてくれる。
 首を傾げて、照れたように笑っている。
「レン……」
 この期に及んでも、レンに対して感じているのは保護欲のようなものだった。
 また近付いて来て、キスしてくる。口の中には少しクリームの甘さが残っているから、俺の精も残っていそうだ。ちょっと嫌だとは思いながらも、キスはしたいから諦めて舌を伸ばした。
 ちゅ、くちゅっ、ぺちゅっ
 果てしなく口付けを交わしながら、抱き締めたくなって手が動かせるのを発見した。一応は白いドロドロを落とせるだけ落としてから、小さな背中に手を回す。薄いキャミソール一枚だから、汗ばんだ肌の温もりが感じられる。
 長い接吻を終えて、座って向かい合う。相変わらず無言のままだけど、レンがもっと欲しいと思っているのは読みとれる。俺だって欲しい。
 それでも今すぐに襲うのは躊躇って無意味に周囲を眺め、焦げ茶色のケーキが目に入る。手を伸ばして一掴み取ると、洋酒の染み込んだスポンジケーキだった。コーヒーの匂いもしていて、ココアらしいパウダーが掛かっている。一口食べたら、豊穣な香りと程の良い甘みに満たされる。
 レンがケーキを持つ俺の手を突付いた。一口大に千切って食べさせてやろうとしたら口を開けず、代わりに俺の口を指さした後、その手を自分の口に運んだ。俺も手を自分の口に持っていったら、レンは甘えた笑い顔で頷いた。
 意味が判って、照れながらケーキを一口囓る。口移しで食べさせたら、満面に笑みを浮かべて口を動かし、目を瞑って飲み込んだ。
「もっと?」
 頷くから、また少し口に入れると軽く噛んで半分は自分で飲み込み、どろりとしたものを流し込んでやる。その次は口移して離れようとしたら頭を掴まれ、そのまま口をくっつけて一緒に咀嚼した。元から水分の多いケーキに唾液が混ざって見た目には気持ちの悪いものになっているだろうけど、一緒に食べるのは楽しかった。
 最後まで同じように食べ、そっと抱き締めたままレンを押し倒していく。レンが気付いたらしいと驚いた目をしたせいで判ったときには、もう彼女の方では抵抗のしようが無い角度だった。もっとも、一メートルを越えるウェハースの上に仰向けにした時、レンは菫のように笑っていたから、嫌がってはいないと確信している。
 小さな体の上に跨っているわけで、罪悪感も一入ひとしお
 クリームやシロップやで汚れた黒いキャミソールを捲り上げると、白い肌が露わになっていく。顔を赤らめ、横を向きながらも協力的だから、あっさり脱がせられた。残っているのは黒いニーソックスと、ピンクでリボンの付いた可愛らしいパンツだけ。魅入られて、しばし裸体を眺める。細いウエスト、柔らかそうなお腹。幾分膨らみかけたような胸。華奢な子供の体から、やっと女の子の体になり始めたところと言った具合。可憐だと思うのと同じぐらいに欲情させられているのを自覚して、だけど不道徳な気分さえ既に衝動を掻き立てるものでしかなかった。
「レン、もう濡らしてるんだね」
 脚の間でパンツのピンク色が濃くなっているのを見つけたんだ。
 恥ずかしげに拗ねた笑いを見せながら、レンは眼で誘っていた。我慢できなくなり、ウエストを両手で掴む。脇腹を辿って上に滑らせていく。くすぐったがっているけど構わず腋まで進み、本当に少し擽って、またキスした。甘さより熱さを感じて、酔ったように吸い、やがて首に唇を移す。力を込めたら折れそうな首を舐め上げて、尖った耳を唇で挟む。
「んはっ」
 押し殺した声でレンが喘いだ。
「敏感だな」
 息を吹き込みながら、囁く。舌を伸ばして一通り耳朶を辿り、耳の後ろを通ったら、レンは明らかに身を捩った。
「ここ、弱い?」
 幽かに首肯した。同じところを何度も舐めてやり、身悶えるのを堪能する。それから、首に沿って喉の方へ下りていく。喉仏なんてものは見つからない。細い鎖骨を唇で挟むようにして左に滑っていき、万歳させて腋に至る。くすぐったがるのを押さえつけて、柔らかい窪みに唾液とキスマークをたっぷり残す。
 右手を胸にあてて具合を確かめた。少し膨らみかけているけど、まろやかな感触ではなく子供っぽさの方が強く感じられる。抑えすぎたら破れそうなほど肌が繊細で滑らかだ。未発達の乳首は小さく、幾分窪んでいた。腋から移動して来た口に納め、舌先で乳首の位置を探る。
「んんっ、ぁんっ」
 もう一方は、クリームを塗りつけて撫でてやる。どちらも次第にコリッとした感触が現れて来て、窪んでいたものが小さいながらも堅く尖った。唇で責めるのと指で責めるのを入れ替え、空いた手は、さっきは触れなかった方の耳とその後ろを撫でるのに使う。
「ふあぅ、うぁっんっ」
 声だけを聞いていたら、とてもレンの外見は想像できないだろう。高く上がる嬌声は存分に大人びている。
 レンの手は両方とも、体の横でクリームをぐちゃぐちゃに掻き混ぜている。
 胸と耳から手を離して脇腹に添え、鳩尾に口を付けて下に降りていく。平らなお腹を伝い、窪んだおへそに着く。その小さな穴の中を舌先で探ってみたら、ここも擽ったいらしく、暴れた。クリームを思い切り頭に付けられた。
 髪の毛から落とせるだけは落とし、レンの胸のあたりに載せる。周りからもう少し集めて、デコレーションするように胸を覆ってやる。滑りが良くなったのを利用して、十本の指の腹で胸やお腹や脇やを思い切りマッサージする。場所と指の動きごとに、くすぐったかったり気持ち良かったりしているのが表情から読み取れた。
 一端塗りつけたクリームが大方掬い取られたところで、行軍を再開する。さっき以上にピンク色のパンツは濡れていた。手を掛けたら、レンは腰を自分で浮かせてくれる。
「えっちだな、レン」
 協力を得て簡単に脱がし、両足を持ち上げて抜き取った。これで、もうレンの体にはソックスしか残っていない。膝を揃えても脚の間に楽に手が入り、細さと幼さが際立っている。
 脚を開かせて観察してみる。レンの女の子の部分には未だに薄い産毛しかないし、造りも未発達な様子。それなのに、周囲に滴らせた蜜はしっかり雌の匂いをさせている。誘われて源泉に口を付け、湧き出す雫を味わう。
「んっ」
 ぴくん、と体を強張らせた。
「大丈夫」
 声を掛けて、谷間に舌で侵攻する。
 ちゅ、ちゅっ。ちゅぷっ。
 もっと大きく脚を開かせて、掴んだ膝の裏を撫でつつ、咲き切らない性器の蜜を吸う。
「ふあ、ん、ひゃっ」
 谷の上の尖塔を探って舌を付けた。包皮を捲ろうとすると、刺激が強過ぎるのか、悶えて手で頭を掴んでくる。だけど赦さず捲って、ほんの小さなクリトリスを直接愛撫した。
「ひあぁっ、んふっ」
 ほとんど悲鳴。でも、あまりもう抵抗してこない。
 谷間に指をあてて、ゆっくりと、狭い肉の隙間に沈めていく。融かしたチョコレート。触ったこともないけど、そんなものをイメージした。熱くて、柔らかくて、だけど一度手を入れたらまとわり着いて離してくれない。凄く柔らかいのに、押し入れるのに妙に力が要る。
 溢れる蜜が甘いものに思えてくる。
 指の腹で膣内の上側を探っていくと、何となく肌触りの違う位置があった。丁寧にそこを擦ってやると、いきなり締め付けがキツくなる。
「くぅん、んうっ」
 舌の動きを速くして、さらにクリトリスを責めた。また沢山の果汁が漏れてくる。
 ばちゃ、とレンが両手で体の横を叩き、その手で俺の頭を掴むと体を起そうとしている。頭を上げて、体を支えてやった。しばらくぶりに顔を見合わせる。レンは風貌に見合わない恍惚とした表情で、何度も俺の顔と下腹部に視線を上下させている。
「もう、欲しいのかな?」
 尋ねたら、頷きはするけど、目を反らしている。
「ちゃんと俺を見て返事して欲しいな」
 少し意地悪して言ってみる。
 顔を近づけて、唇を重ねる。互いに舌を使って歯茎やら上顎やら舌の裏側やらまで舐め合いながら、右手の指を再びレンの中に入れ、クリトリスも弄ってやる。唇を離して、左右の乳首をちょっとづつ吸った。
「んふ、ぁっ、あ、」
 切なげな声。
「早く、欲しい?」
 今度は、まっすぐ俺の目を見つめて頷いた。
「よし、行くよ、レン」
 既にかなり砕けながらも一応姿のある巨大ウェハースにレンを仰向けに横たえ、ゆっくり覆い被さる。膝立ちしたら、脛の部分はクリームに沈んでしまい、その下の水分の多い層に入る。と言っても、取りあえず支障は無い。触れば柔らな感触の判る胸も、今の姿勢では平らで膨らみは感じにくい。
 レンの幼い性器に手を当てて位置を確かめ、そっとペニスの先端を触れさせる。レンは自分で片手を添えて来たから、自由にさせる。
 緊張してた顔のレンに、ちゅっとキスして力を込めた。キスしようとしたら体を曲げなきゃならないし、色んなことから、自分が酷い咎人に思えたりする。
「んんんっ」
 初めての時なんかに比べたらずっとましな様子だけど、やっぱりサイズが違い過ぎて痛いらしい。でも、次第に解れて包み込んでくれるのが判る。亀頭が受け容れられただけで、いきなり逝ってしまいそうなほど気持ち良いから、一気に進めないのはむしろ幸いだ。
「ふー、ふー、」
 二人で呼吸を同調し、焦らずに挿入していく。膣内は、小さな無数の手で揉まれているみたいな複雑な感触。その手にひと掴みずつ、快楽の対価に肉を千切られていそうに思えてくる。そんな不気味な心象を持ちながらも、この快楽に比べたら惜しくなかった。
「うあっ」
 ちょっとクリトリスや乳首を弄ったりすると、途端に筋肉の動きに響いて悦楽の衝撃が来る。ゆるゆると進んで、レンの奥まで入った。俺のものは根本まで納まっては居ないし、レンの方ももっと進むことは出来ると思うのだけど、この辺が心理的に限界だ。
「レン……」
 意を決して、往復運動を始めるために腰を下げる。レンの体は去るものを追いたがるらしく、引くときの方が強烈だったりする。
 やっと、先端だけが納まった位置まで戻り、また突く。いや、突くってほどの速さじゃない。初めよりは楽に、でも割り裂く感覚は同じく、レンに入って行く。
 穏やかな表情になっていたから、安心して少しずつペースを上げる。それに応じるように、レンは力を込め始める。この融けそうな今の感覚でさえ、レンは力を込めていない。
「く、あ、」
 一定のリズムで往復する。バギナの中の小さな手が更に数を増やした感じで、触れ合っている全面が複雑で甘美な悦楽に貢献している。
「ふうん、ふああんっ」
 指で乳首を愛撫すると、一段と高く声を上げ始めた。また両手をクリームの中に突っ込んで、じたばたしている。捕まえて、二つの小さな手をしばらくぎゅっと握ってやりながら腰を使い続けた。
 両脚を大きく開かせて持ち上げ、今までより少しだけ奥まで突く。もう俺にも余裕は無い。あんまり気持ち良いから激しくしてしまいそうで、そうするとすぐに終わってしまうから控えようとする。逝きそうになって、必死で堪えて静止したら、レンが腰を捻った。それで動きを覚えたらしく、何度も繰り返してくる。それが気持ち良くて休憩にならないから、いっそのこと俺も腰を動かす。
「れ、ん、んああっ」
「あああっー」
 ピストン運動とレンの腰の捻りがハーモニーして、天上まで引き上げられるような法悦。お互いが持ち上げ合っている。体が性器だけになったような幻想。知覚してるのは快感だけ。触れ合っているのは確かに性器だけなのに、全身を悦楽が包み込んで、爪先やら頭やらまで気持ち良く思えた。
「ひあっ、あん、んぁーっ」
 自覚する間もなく、射精していた。尿道を通っていくのが単なる液体には思えず、体の中から紐を引き出されているみたいに明瞭に、長々と、喜悦は俺をうち倒した。心臓が動いているのが不思議な気がした。
「はー、ふー、」
 やっと覚醒して、レンを引き上げて抱き締め、二人で息を整えた。整ったら、穏やかにたっぷりと唇を吸い合った。
 仰向けに並んで寝そべり、レンに訊いてみる。
「気持ち、良かった?」
 レンは俺の胸の上に乗って来て、目を合わせて頷き、また唇を欲しがる。応じている内に眠気に襲われる。こんなところで寝ちゃまずいって思いつつ、抵抗できずに意識が落ちた。

 

ティラミス・了


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