先の狂態など嘘だったかのように、会った瞬間と変わらない装束に戻って、二人はグランドの端に立っている。
「残念だな」
ランサーが開けっぴろげに口にする。
「なんですか?」
ライダーは穏やかに応じた。
「いや、ね。あんたみたいなタフなのと戦うのは大好きだが、あんたみたいな良い女を抱くのはもっと好きでね」
無遠慮に掻き抱く。
「私も、貴方のような戦士を甚振るのは好きですが、抱き合うのも好きですよ。それが敵なら、尚のこと楽しくもある」
「怖い女だ」
「魔物でない女なんて魅力に欠けませんか?」
黙って、ランサーはライダーの口を吸った。
「残念だよ、良い女。今度会った時は、敵同士として殺しあわなきゃならない」
ライダーは、鋼板のような男の胸を少し押し離す。
「馬鹿ね。私たちって、今だって殺しあうべき敵同士でしょう」
不意打ちを食らったように黙った後、苦笑いする。
「違いない」
向かい合って、また沈黙する。女が仮面をつけたまま故に、視線が交わされているのかどうかは判らない。ただ、男は、見詰め合っていると信じた。
口元がほころび、ライダーが言う。
「今度は、順序を逆にしますか?」
「逆?」
「ええ。愛し合ってから、闘えば良い」
もう一度抱き寄せて、男は答えた。
「そいつは良いな」
そして別れを告げ、振り向いた男を、女はもう一度呼び止める。
「どうした?」
黙って手を上げ、男の首にぶら下がると、背伸びしてまた唇を重ねる。この夜、一番甘いキスだった。
「やっぱり、男は背の高いのが良い。今夜は素敵でした」
微笑み合って、二人同時に後ろを向いた。
「御武運を、英雄殿」
男は答えず、そのまま二人とも姿を消した。
幕間の戯れ・了
SS界の世間的にはドジっ子なライダーが多いようですが、少々違う感じで。せっかくのTYPE-MOON系では希少なSexyお姉さんですしw
ちょっと変則的になりますが、この話をまた書くとしたら、phrase2以降をcodaの前に挟む形になるかと思います。