「くぅっ」
 声を出しそうになるのを、どうにか堪える。
 ぴちゃ、ぺちゃっ
 遠野くんがわたしを舐めている。熱い舌が、わたしの女の部分をぬめぬめと這い回る。上下に往復し、クリトリスにも口をつけた。
 じゅっ 
 音をたてて愛液を吸い取る。
「落としたら脱がしちゃうよ、先輩?」
 そんなっ。

ちょっとぐらいは思ってるんでしょ?

 


 

 いつもの巡回も今夜はそろそろお仕舞い。ここしばらくは何事もなく、幸いなことだけれど、退屈なほど。
 昼間なら賑わいもある公園ながら、深夜には不思議なほど人影が無くなる。こんな公園には、夜でも楽器の練習やウォーキングやに訪れる人があるものだし、ベンチにいちゃつきに来るカップルぐらい居ても良さそうなもの。そんな人さえ居ないのは、「吸血鬼」騒ぎ以来のことなのか、以前から変わらないことなのか。
 今夜もやっぱり、人ひとり……
 居た。
「遠野くん?」
 間違いない。噴水の傍のベンチに一人で腰掛けている。
 大きく回り込んで、正面から地上を歩いて近づいた。早くからわたしの方を向いていて、程良い距離になって声をかけてくる。戦闘態勢の彼の間合いとほとんど同じなのは、偶然なのかしら。
「こんばんわ、先輩。巡回お疲れさま、何もなかったのかな?」
「こんばんわ、ここ最近は平和です。でも、遠野くんは何をしているんです? こんな時間に」
 この時間に彼が出て来るには、規則を破って抜け出さなければならないのだ。もしかしたら、わたしの網に掛からないような種類の問題が起こったのか。あまり在りそうにも無いけれど、考えはした。
「急に先輩に会いたくなったから、なんてのじゃ駄目? ここを通ることは知っているし」
 予想しない答えに少し狼狽える。
「昼も会ったじゃありませんか」
 笑う遠野くんは嘘は吐いていない様子だから、言いながら、わたしも微笑んでいた。
「うん。でも、好きな人に会いたくなったら、居ても立ってもいられなくてね」
「ふふふ、堪え性がありませんね」
 そんな風に思って貰えることは、とても嬉しい。照れくさくて、ちょっと冗談を言う。
「単に、えっちがしたくなっただけとかじゃないでしょうね?」
 途端に、遠野くんは不機嫌で傷ついたような顔をする。
「先輩、俺のことそんな風に見てたんですか?」
 あら?
「いいえ、冗談じゃないですか」
 取り繕っても、遠野くんは拗ねたような表情を変えない。
「ちょっとぐらいは、思ってるから言うんでしょう? 『今日中に先輩と婚姻届を出したくなって待ってたんだ』なんて言ったら信じますか?」
「嬉しいですけど……まあ、ちょっと信じないでしょうね」
 婚姻届なんて聞いて、少し頬が熱くなった。
「それとか、『カソリックの洗礼を受けることにした』なんて言ったらどうですか?」
 まさか。遠野くんの言っていることを理解したけれど、問の答えは変わらない。
「信じない、でしょうね。いつでも歓迎しますけど」
「でも、『えっちしたいから会いに来た』って言ったら信じるんでしょう?」
 ちょっと、困った。見れば遠野くんは悪戯な笑い浮かべているから、本当に傷付いた言うものではなさそう。
「そんなこともあるじゃないですか、時々」
「何も、えっちがしたくて会いに行く訳じゃないですよ。会ってしまったら、愛しくて我慢できなくなることがあるのは認めますけど」
「ごめんなさい。でも、遠野くんの頭の中のことは判らないですから、ほとんど会った途端に押し倒されたりしたら、そうも思いますよ」
 目の前で、遠野くんの笑いが凶悪なものに変わった。
「じゃあ、今夜は思われたとおりにしようかなあ?」
「え?」
 それって。
「ふふふ、そう、俺はえっちしたいからってだけで部屋を抜け出してきたりする奴なんですよ、先輩」
「遠野くんはそんな人じゃありません」
「いーや、そんなやつなんです」
 わたしを抱き寄せて、いやらしい手つきで背中をまさぐって来る。
「変なこと言って悪かったです」
「悪くないですよ、事実ですから」
 そんなこと、っと言いかけて口を塞がれた。特別に上手だというのではないと思うのだけど、情熱をそのままぶつけるようなキスだから、気持ち良くて抵抗しづらい。
「この遠野志貴ってやつは今すぐ先輩が抱きたくてしょうがないんですよ」
 こんな露骨なことを言いながら、さらに露骨にもわたしの手を捕まえてジーンズの前のところに持っていく。そこには、あからさまに大きくなった遠野くんのものがあった。
 ここまでされると、わたしも少しどきどきする。そもそも、遠野くんと愛し合うことに不満があるわけでもないのだから。
「仕方ありませんね、巡回は終わっていますし、わたしの部屋へ行きましょう」
 そう言って歩き出したら、止められた。
「聞いてなかったの? 今すぐ、だよ」
「え?」
 またわたしを抱き締め、今度は片手を体の間に入れて法衣越しに胸を掴んだ。ぎりぎり痛まないぐらいに強く揉むくせに、乳首を転がす指だけ酷く繊細。
「今すぐ、ここで。えっちしたいがためだけに屋敷を抜け出してくるような男なんだよ、会ったらそれ以上我慢なんてする訳無いじゃない、先輩」
「ちょっと、ご免なさい、謝りますから止めて下さいっ」
 でも、遠野くんは聞き入れてくれない。
「別に、謝って貰わなくて良いです。でも、俺は今夜はしたいことをしますからね」
 そしてわたしの手を引いて歩き出す。
「どうしても、ここでしたいですか」
「うん」
 笑っているけど、この顔の遠野くんは絶対言うことを聞かない。
 到着したのは、旗や、季節によっては鯉のぼりまで上がっていることのあるポールのところ。公園内では暗い一角だ。
 わたしは半ば諦めて言う。
「ちょっと待って下さい。このままじゃ危ないですから」
 そして黒鍵を数本取り出して地面に突き立ててみせる。
「戦闘態勢なんですから、これは」
 そんな嘘で時間を稼いだ。
「もう良い? よし、先輩、両手を上げて」
 ポールに背中を着けて万歳させ、両手をポールの後ろで縛る。もっとも、コンビニの袋みたいなので親指を括っただけだら、何とでもなる。
 その次に、遠野くんは法衣の裾を捲り上げた。
「きゃっ」 
「ほら、ここを銜えて」
「えっ?」
 法衣のスカートの部分を丁寧に二カ所つまみ上げて、下半身を丸見えにしている。自分でその状態を維持しろと言っているらしい。
「口に銜えるの。落としたら、さっきのことについて俺に謝ったのはその場凌ぎの嘘だったとみなすからね」
「そんなことありませんっ」
「だから、証明してよ」
 もう、楽しくてしょうがないっていう笑顔で迫ってくる。
「いやー、少年の心は傷付いたな〜、好きな人に会いに来ただけなのに体が目当てだろうとか言われてっ」
「もう、遠野くんっ! 笑ってるじゃないですかっ」
「だから先輩、遊びですよ。うん、先輩が勝ったら一日言うこと聞きますから。そのかわり負けたら罰ゲームです」
 なんだかんだで、結局受け容れさせられた。
 ポールを背にして、両手を上げて縛られている。法衣の布地を口に銜えて、自分で腰から下を夜気に晒している。
「この明かり、点けられるの知ってます?」
 言うが早いか、足下にあった上向きの照明器具に灯がつく。斜め下から丁度わたしを照らし出す形。調整して、捲られたカソックの内側に向けられる。暗めの場所だからと少しは安堵していたのに、皓々と夜闇のなかで照らし出されてしまった。恥ずかしくて横を向いたら、正面を見ているように指示される。
 遠野くんはわたしの正面に座る。少し上げた視線の先は、きっと下着のあたり。
「うん、綺麗だ、先輩」
 こんな状況でも、遠野くんに言われると嬉しくなる。
「でも、もうちょっと脚を開いて立って欲しいなあ」
 言いながら、足を掴んでその通りにされる。
「俺、先輩の太腿好きなんだ。逞しいくせに柔らかくてさ、肌も綺麗だし」
 そして、膝の皿に触れてくる。爪先をほんの軽く当てて、指を閉じたり開いたり。
「んふっ」
 くすぐったいのに混ざった幽かな官能。
「駄目だよ、口の、落としちゃ」
 両膝一緒にしばらく責めた後、今度は片足ずつ裏表から攻撃してくる。
「んんっ」
 今度はくすぐったいのばかり強くて、笑って口を開けてしまいそう。
 それから、ようやく太腿。外側からすーっと撫で上げて、少し位置を変えてまた下りて来る。遠野くんにしては丁寧でフェティッシュな愛撫に段々体が火照ってくる。
「いつかして貰った膝枕も気持ち良かったな。ところで先輩?」
 はい、と言いかけてしまい、抑える。
「ぱんつ、もう濡れてますよ」
 そんなこと言わなくても良いのに。
「ごめん、破っても良い?」
 尋ねるだけは尋ねて、わたしの意思表示を待たずにナイフで切ってしまったらしい。
「ほら、先輩のえっちなジュースでこんなになってたよ」
 肌着の残骸を目の前に持って来て言う。淫蕩な女の匂いがした。一番濡れた部分を唇に挟みつけると、またわたしの前に座る。
 そうやって指でくつろげてわたしの女を明かりに晒し、じっと眺めている。
 不意に言う。
「先輩、喉乾いてない?」
 突然何を? 戸惑った顔をしたのだろう、言い訳がましい様子で、でもニヤニヤわらいながら、言う。
「いや、単に俺が喉乾いてるだけなんだけど。ちょっと何か買ってくるから、待ってて」
「んーっ!」
 わたしをこのままにしておく積もりらしいから、精一杯声を発する。
「大丈夫、誰も来ないって。それに、自販機までしか行かないし」
 首を振るわたしを見て、また何か悪戯を思い付いた顔をしている。見ていると、大きなハンカチ、いやバンダナを取り出して、帯状に畳む。それからわたし後ろに回り、それで目隠しして来る。
「!!」
 ぶんぶん首を振ったけれど、妙に素早くて、しっかり目隠しは固定された。
「ふふふ、これで周りは気にならないでしょ。戻ってきた時に今と違う状態になってたら罰ゲームだからね。じゃあ、ちょっと行ってくる」
「んーーっ!!」
 抵抗むなしく、遠野くんの足音が遠ざかる。
 視界が閉ざされたところで、周りに人が居ないことぐらいは判る。ついでに言うなら、人にあらざるモノも居ない。それでも、こんな格好で放置されては堪ったものじゃない。
 耳を澄ましても、聞こえるのは遠くの車や風の音ばかり。
 風が吹いて裾が翻り、下半身を露出しているのを思い出さされる。太腿に自分の液が垂れ落ちているのが判る。
 なんで、今日の遠野くんはこんなに意地悪なんだろう。
 遠くに足音が聞こえて、どきりとした。うん、でもこれは本当に遠く、公園の外だ。それに、入ってくる様子はない。
 ん?
 足音はしないけど、研ぎ澄ました感覚が遠野くんの匂いを捉えた。ゆっくり、近づいてくる。そして気付いた。単純なことで、遠野くんが足音を忍ばせているだけの話。ただし、忍び足の技量は尋常じゃない。
 無意識に使っている七夜の対術、かしらね。
 でも、そうと判れば居場所は知覚できた。すぐ前に来て、座り込んだみたい。
「んんんんん?」
 イントネーションだけで「とおのくん?」と発する。
「流石だね、判ったのか」
 返事はあったけど、それっきり。
「んんんんん?」
「先輩、ドキドキしてたみたいだね。さっきよりずっと濡れてるよ」
 それでやっと、目隠しを取ってくれる。あのとぼけた顔を見て、凄くほっとしてしまった。
「口、開けて良いよ。半分こしよう」
 ペットボトルの紅茶を見せている。
「もう、いい加減にして下さい、こんなことっ!」
「良いじゃない、たまにはこんなことして遊ぶのも」
 そして紅茶を口に含んでキスしてくる。流し込まれて、素直に飲んだ。
 片手を胸に当てて揉み始める。単なるキスと口移しを繰り返して、半分ずつ紅茶を飲む。
「もう、今夜だけですよっ!」
 結局、許してしまった。
「もうぐっしょりだね。これじゃ、えっちなのは先輩の方だな」
 眺めて、言う。脚を閉じようとしたけど防がれた。
「先輩のここの毛って、髪より色が濃いよね。肌が白いからコントラストが映えて綺麗だ」
 そんなこと説明しないでっ。
「ここの谷間はピンク色で生々しくてイヤラシイけど。こっちがクリトリスで、えっと、ここはおしっこの出るとこ?」
 知っているくせにそんなことを言いながら、つんつんと尿道のところをつついている。
「んーっ」
 抗議に声を上げておく。
「何にもしてないのに、どんどん垂れてくるよ。見られて興奮してる?」
「んー、んーっ!」
「あまり人の気配は無いけど、遠くから覗いているかもしれないしさ。先輩みたいに綺麗なら、見られて恥ずかしがることも無いと思うけど」
 そしていきなり、そこに口を付けた。
「ひんっ」
 谷間を舌が辿った瞬間、小さく悲鳴を上げてしまった。辛うじて落とさずには済む。遠慮なく指を入れられて、内側を掻き回される。
「う、ふっ」
「いやらしいね。先輩、聖職者がこんなことで良いの?」
 冒涜は貴方でしょうっ。
 でも、そもそも躊躇わずに受け入れたのは、わたし。責められているのは下腹部だけなのに、胸の先端が硬くなって擦れている。
「くぅ、ふぅっ」
 Gスポットを探り当てられた。歯を食いしばろうにも、首を仰け反らせてしまって力が篭らない。あの魔眼には女を殺すポイントまで見えるのかしら、なんて馬鹿げたことを考えてしまう。遠野くんはそれぐらい的確に、わたしの急所を捉えて責めてくることが多いのだ。逆に、絶妙に可愛がって欲しいところを外していぢめられることもある。
 クリトリスを唇で啄み、舐め尽くして、また音をたてて吸っている。
 膝が震えて、立っているのが辛くなってくる。
「今でこの様子じゃ、次の一手で堕ちるのは間違いないね」
 遠野くんが恐ろしい予言をしている。何のことか判ってしまって、力が入ってしまう。
「そんなに期待しなくても」
 お尻の肉を鷲掴みにされる。
「ひんっ」
 両手で思い切りぐにぐにと揉まれて、膝が震えた。今の行為自体が特に快美と言うのではないけど、予感に震えさせられる。
「ほら、してあげるから、力抜かなきゃだめだよ?」
「んんっ、んっ」
 覚悟を決めて緊張を解いた。途端に遠野くんは、尾骨の上のあたりに手を当てる。そこからちょっとづつ、掻くように小さく動かしながら、指が下りていく。
「んはっ、んっ」
 谷間の入り口のところをなぞられただけで、もう腰が砕けそう。ゆっくり下りていく。前を責めていた指がわたしの中から出て、会陰部からもう片方の手を迎えに行くように後ろに辿り始める。
 不浄の穴の前後に指先が当たり、交互に押す。それ以上進まず、同じことを繰り返しながら、ねっとりと性器を食べてしまいそうなほど舐めている。
「うんんっ」
 焦れったくて、とうとう腰を捻って催促してしまった。
「あれ、どうしたの? そんなに腰をもじもじさせて」
 慌ててじっとした。
「ひょっとして、おしっこしたいの?」
 そんなことっ。
 ……意識させられて、本当に尿意を催してしまった。紅茶飲まされたり、それ以前から体の冷えることをさせられていたりして。
「無理しないで、しても良いよ?」
 そんなこと出来ませんっ。
 お尻の穴の周辺に悪戯するのを片手だけにしたらしくて、もう片方はまた膣内に入り込んでくる。Gスポットに指を置いて集中的に弄る。おまけに、表からは尿道口を舌でこじ開けようとでもするように責めてくる。
「うー、くうんっ」
 駄目、そんなにされたら我慢出来なくなるっ。力を込めて堪えようとしても、お尻をつつかれると脱力して屈しそうになる。
「んくっ」
 Gスポットを責める指の具合が更にぴったりフィットしてしまって、内側から何か掻き出されるような感覚が強烈に襲ってくる。
「んんんんんんんっ」
「漏らしちゃいそう?」
 必死で何度もうなずく。また口を付けているから、このままだと遠野くんの顔にかけてしまう。
「じゃ、ここにすれば良いよ」
 っと、さっきのペットボトル。
「んんっ」
 抗議はしたけど、もう余裕は無かった。遠野くんがボトルの口をわたしにあてがっている。立ち上がって耳元に口を付け、言う。
「ほら、して良いよ、先輩」
 まだ躊躇っていたら、遠野くんが子供相手にするみたいなことを言う。
「ほら、しーしーって」
 途端、本当に出てしまった。
 じょぽじょぽっ、てボトルの中に入る音がする。
「んーっ」
 恥ずかしくて、遠野くんから顔を背ける。でも、無理に堪えようとしていた緊張から解放されて、変な快感を覚えていた。
「ずいぶん溜まってたんだね」
 蓋をしたボトルを見せながら言う。薄黄色の液体が半分ちょっと入っている。
「うん、まだ暖かいし」
 ボトルをほっぺたにくっつけている。
「んーっ」
 わたしがちょっと涙ぐんでいるのを見て、視界の外にやってくれた。
「さて、続きっと」
 などと言って、遠野くんはまたわたしの前に座る。そしてまた、いきなり舐め始めた。
「んーっ」
 幾らペットボトルに入れたからって、その辺はまだわたしの出したもので濡れているはず。
「大丈夫、先輩のおしっこぐらい平気だってば。うん、ちょっと塩味がするね」
 ああ、そんなっ。
「それより、えっちな液でぐしょぐしょだよ? うん、これぐらいあれば大丈夫かな」
「くふんっ」
 不浄の穴を指先が突付いた。指はわたしの蜜に存分に濡れていて、さしたる抵抗も無く侵入した。布地の破れないのが不思議なぐらいに噛み締めているから、唾液が漏れて法衣を汚している。
「期待してるみたいだけど、カソック落としたら先輩の負けだからね?」
 クンニリングスを再開して、前を責める手にも動きが戻る。
 それから、ゆっくりと指がお尻に入ってくる。
「くうぅぅっ」
 快感に耐えられない。穏やかに、でも躊躇い無く、指は左右に捻りながら奥へ進む。
 バギナにも責め手が戻り、Gスポットとクリトリスに集中砲火を受ける。
「んーっ、ふーっ」
 後に入り込んだ指が小刻みに振動し、その上、抽送を始める。クリトリスを強く吸われ、恐ろしく器用に前後の穴を違うリズムで襲い続けられる。
「くぅぅっ、んんっ」
 乳首がピンピンに尖って服に擦れ、それだけでも気持ち良い。だけど、意識してしまったら、すぐにそれぐらいじゃ物足りなくなる。
 手については何も言われてなかったはず。
 思いついたら我慢できず、手首を縛っていた軟弱なビニール袋を引き千切り、自分で胸を掴んだ。後を責める手のリズムに合わせて揉みしだく。
「んふぅっ」
 乳首を抓んだ瞬間、その快感に痺れて息を飲んだ。己を窮地に追い遣る行為だと知りつつも止められなかっった。
「んふっ、んぁ」
 前後に入った指が間の肉を介して呼応して踊っている。体の中身が熔けて流れ出していそうな気がするほど、両足に愛蜜の流れが出来ている。
 あとは、ただ悦楽の階段を駆け上がった。
「くんっ、うんーっ」
 駄目、もう逝っちゃう。
「んんーっ」
 もう少しっ……
 ……って、遠野くん?
 いきなり動きが止まっていた。
「ずるいよ、先輩。自分だけそんなに気持ち良さそうにしてさ」
 立ち上がって囁く。逝かせて貰えなかったわたしは無意識にまだ胸を揉んでいた。
「ほら、口開けて落として良いよ」
 言われて、従う。
「遠野くんの意地悪」
「酷いなあ、俺は一緒に気持ち良くなりたいだけなのに」
「だからって、あんなにぎりぎりのところで止めなくても良いじゃありませんか」
 抱き付いて、つい太腿を擦り合わせていた。
「そうか、ちょっとフェラとかして欲しかったんだけど、先輩にも楽しませて上げる」
「はい?」
 どうにも不穏な口振りだった。
「目隠しするよ?」
「何故そんなっ」
「その方が楽しいってば」
「遠野くんが楽しいんでしょう!」
「俺が楽しいのは嬉しくない?」
「それは……もう、狡いです、遠野くん」
 結局、やっぱり許してしまう。
 視界を奪ってから、また裾を撒くってわたしに持たせると、遠野くんはわたしの中に指を入れた。
「あんっ」
 いや、指以外の何か小さなものも入っている。
「ちょっと、何入れたんですかっ」
 返事をせず、遠野くんは後ろにも指の感触じゃないものを入れようとしてる。
「遠野くんっ! 何ですか、それっ」
「こういうのだよ」
 言った途端、前に挿入された何かが振動を始める。
「ひゃぁんっ」
 思わず悲鳴。一体、どこからこんな玩具を。
「ほら」
 小さく声をかけて、後ろにもしっかり入ってしまった。
「後ろを大きい方にしといたよ、先輩」
「やめて下さいっ」
 聞き入れてくれない。それどころか、どうやらもうひとつ今度はクリトリスにあてがっている。テープみたいなもので貼り付けたらしい。
「さて、あとは胸だね」
「まだあるんですかっ」
「自分であんなにしてたのを見たら、放置は出来ないよ」
 指摘を恥じて黙った隙に、法衣の上から乳首の位置に押し当てられた。こっちもテープだろう。
「ちょっと試してみようか」
 言ってすぐ、乳首のローターが起動した。
「んぁんっ」
 布地越しの弱い刺激なのに、おあずけを喰っている体には甘美だった。
「で、先輩、俺も気持ち良くしてよ」
 そう言ってキスしてきた。受け容れて舌を絡める。互いに歯茎や上顎まで愛撫しあっていたら、お尻の玩具が振動する。
「くふんっ」
 腰が砕けて跪いてしまう。
「じゃあ、先輩」
 手を取って導かれたのは、遠野くんのジーンズ下で哮っているもののところ。
「ほんとに、困った子ですね、遠野くんは」
 手探りでベルトを解いて、ジーンズと肌着を一緒に引き下ろす。遠野くんのペニスはいつになく逞しかった。
「俺より先に逝ったら先輩の負けだからね」
 ごく弱くながら、着けられたローターが全部動き始める。
「あふっ」
 全身を快感に襲われながら、遠野くんのものを両手で握った。
 先端と袋をそれぞれ持って、緩やかに揉む。根本近くの部分をちょっと舐める。こんなに顔を近づけると、オトコノコの匂いで胸がいっぱいになる。
 ずるい。愛撫を始めた途端に、遠野くんはローターの威力を上げたみたい。
 横向きに銜えて、舌を上下に使いながら先端の方に移動する。雁首に至って、ぱくりと頬張る。唇で傘のところを包んで刺激しながら、尿道口を舌で繰り返しなぞる。割れ目に舌先を入れようとする。
「うはぁっ」
 遠野くんが喘いで、途端にクリトリスを責めるローターの動きが激しくなった。
「んんっ」
 息を継いで、愛撫を続けるために平静を維持しようとする。でも気持ち良くって意識が飛びかける。どうにか少しは慣れかけたころ、今度はお尻の方が激しくなった。
「ふぁああああぁっ」
 これ、駄目っ。なんだか、とりわけお尻のは全身と共鳴するみたいに快感が高まってしまう。
「ひあっ」
 ちょっと耳を触られただけで、息が詰まるほど快感が走った。
「先に逝ったら罰ゲームだよ、先輩?」
 にやにやした笑いの目に見えるような言葉に、少し闘志が戻ってくる。
 わたしだって、遠野くんの弱点ぐらいは大体把握している。下側を通って根本に戻り、更に袋の方にまで進む。大きく口に含んで丁寧にしゃぶった。片手は先端を包んで握り、掌で亀頭を撫でつつ指先は傘のところを擽る。びくんびくんと脈打ってる感じがして、遠野くんも気持ち良くなってくれている。
「んああっ」
 やっぱりローターの刺激のせいで集中できない。でも、快感に溺れそうなのを何とか奮い立たせながら、遠野くんを責める。横ぐわえで何度も往復した後、またまっすぐ口に入れた。今度は舌を巻き付かせるように廻して責める。まずは左回り。何度もしているから判るのだけど、面白いことに、右回りの方が感じるらしい。だから、四回転に一回ぐらいだけ右に回ってあげる。これを繰り返してながら、遠野くんの息づかいを盗む。やっぱり、右回りを予見してそのときだけ息を止めたりしていた。
 呼吸の虚を突いて、不意に高速で右にばかり回る。
「うわぁっ」
 焦った声をだして、胸と膣のローターが激しくなった。
 動きを乱されながらも回転攻撃を続け、さらに上下運動も追加する。ついでに、胸にくっつけられている玩具をおちんちんの根本付近に押し付けてみた。
「うくっ」
 呻いて、止めた。代わりに下半身のものをまた激しくされてしまう。
「あふっ、ああーっん、んー」
 堪えられず、思い切り声を上げてどうにか逸らせる。気を抜いたら、その瞬間に逝ってしまいそう。
「急に激しくしたりしたら、噛んじゃいますよ」
 大きく喉の奥まで受け容れた。先端は喉で愛撫し、舌で裏側を刺激する。また袋を指で弄ぶ。
 んんっ。警告したのに、ローターの威力を上げてきた。唾を飲み込むみたいに喉が動いて、そうしたら遠野くんははっきりと呻いた。だから、その動きを連続する。
「くぅっ、ああぁっ」
 喉の奥に遠野くんの体液が迸った。咳き込みそうになるのをどうにか抑えて、口からペニスを出す。最後にちゅっと吸って残りを口に取ってあげる。
 玩具は全部最強にされたみたいだけど、わずかの差で遠野くんが果てる方が先。ほっとして、わたしも我慢するのをやめる。
「はあぁああーっ、んぁあっ」
 すぐにわたしも達した。地面に座り込んで脱力する。
「ちょっと、とめて下さいっ!」
 まだローターが動いていて、振動はもう辛いだけ。
「はい」
 声がして動きが止まる。目隠しも取ってくれて、まだ割合元気な遠野くんの男性が目に入る。少し精子が残っているみたいだったから、それも舐め取る。
 それを待っていたみたいに、遠野くんは腰を下ろして仰向けに寝た。寄り添って言う。
「わたしの勝ちですよ、遠野くん?」
「そうだね。凄いや、最後の」
 テープで留めてあった玩具を胸から取り、他のところのも外す。
「それにしても、ずいぶんなことをしてくれましたね。人に見られたらどうするつもりだったんですか」
 ちょっと凄んで言うと、遠野くんは怯えた顔をした。
「いや、先輩だったら大丈夫でしょ?」
「へえ。それはどういう意味です? 公園であんなことをしているところを目撃されても平気な女だとか思ってるんですか?」
「いや、そんな意味じゃっ!」
「じゃ、見られても暗示かければ大丈夫だからとりあえずやっちゃえって考えですか? それとも、わたしの体なら少々無茶しても心配ないとか言うつもりですか?」
 遠野くんは返事をしない。代わりに、酷く落ち込んだ表情になった。
「ちょっとぐらいは思ってるから、したんでしょ?」
「違いますっ!」
「じゃあ、どういう意味なんですか?」
 出来るだけ、優しい声を出す。
「ごめんなさい。いや、先輩だったら赦してくれるだろうって……」
「まあ、確かに、黒鍵を出したときに人払いの結界は張りましたから、目撃者はゼロでしょうけどね」
「……ごめん、先輩。ちょっと遊びすぎました」
「うふふ。たーっぷり優しくしてくれたら、赦してあげます」
「うん……」
 立ち上がらせて二人して服を整えると、腕にぶら下がる。
「とりあえず、わたしの部屋へ。それから、いぢめて遊ぶんじゃなくて、愛して下さい」
「はい」
「たまーに、こんなことをして遊ぶのも素敵ですけど、ね。でも、今度があるとしたら、遠野くんがいぢめられる番ですよ?」

ちょっとぐらいは思ってるんでしょ?・了

 

 


 

 何故シエルだとプレイが過激になるんでしょうねw

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