あおぱい


 何の前振りも無く、有彦に古い雑誌を見せられた。
「これ、処分してしまっても良いか?」
 と。
「何でまた、俺に訊く?」
「グラビアの子、お気に入りだったじゃないか、遠野」
 そんなのあったっけ、とページを捲る。そこまでの隙を見せたことは無いつもりだったんだが。
 現れたのは、いかにもグラビアモデルな、ビキニ姿の女の子。
「んー……?」
 モデル本人にはあまり覚えが無かったけど、添えられた煽り文句みたいなのには、少し引っ掛かるものがあった。

 ―――― 蒼穹の下の楽園で、崎のビーチを二人占め。青い波と戯れる君に、子供だった日の憬れを想う。

 ……思い出した。
  別に、この子が好きだったわけじゃない。ただ、これを眺めてた日に、困った夢を見たことがあるだけ。そのせいで、むしろ封印してしまったはず。

 それにしても、不埒な夢を見たものだった――――。

 吸い込まれそうな青空と、白い雲。刺し貫くばかりの夏の日差しと、波の音。南国の楽園、白い砂浜。
 椰子の木陰にビーチマットを敷いて寝そべっていると、ほんとうに極楽の独り占めのようだ。
 ただ、問題が一つある。
 今の状況がさっぱり理解できないってことだ。
 幸い、自分は遠野志貴だとか、夏休みに一昨日から有彦の家に泊まりに来ていたことだとかは覚えている。だけど、ここが何処なのか、こんな日本でさえないだろう青い海にどうやって来たのか、そのあたりはまるで記憶にない。おまけに水着しか身に付けていないし、ビーチマットの他には人工物の影さえもなかった。
 ほんとなら、寝てる場合じゃない。だけど、この日照りの中で飲み水も無しに歩いてたら倒れてしまうのは目に見えてる。だから、大人しくじっとしていて、自然と眠気に誘われていた。

「そんなところで寝てると踏んじゃうわよ」

 え? と、まだ寝ぼけた眼を向けると、同い年ぐらいの女の子が傍に立っていた。パレオと、胸の下で結んだTシャツの下はビキニらしい。お日様に照らされて、いかにも健康そうな肌の輝きが眩しい。
 その顔に見覚えがあって、体を起こすと、女の子は向かいに腰を降ろす。名前が頭に浮かぶより早く、心臓は早鐘を打っていた。
 そんなはずは無い。
 理性は否定しているけど、体の反応の方が正しいらしい。
 少し首をかしげて、女の子は俺が口を開くのを待つ気配。なかなか声が出せないのは、口の中が乾いているせいだけじゃない。
 そんなはずは無いんだと心で繰り返しながらも、言葉を口から押し出す。
「――――先生?」
 女の子は、華やかに笑った。
「久しぶりね、志貴。うん、この姿は、志貴の『先生』になる前だけど」
 言われて、やっと意識した。目の前に居るのは、見間違えるはずもない恩人、蒼崎青子その人だ。だけど、昔、草原で話したときだって大人だったはずなのに、目の前の先生は、高校生の俺と同じぐらいに見える。
「この方が、あまり『先生』って意識にならずに接しやすいかなって思ったんだけど。でも、志貴がそうしたいなら、その呼び方でも良い」
 あれほど、もう一度会いたいと思っていて、言わなきゃならないことがあったはずなのに、出てこない。幼い日の俺が先生にまだ会っていないかのよう。顔を見た途端、頭の中が色んな想いでいっぱいになっていたのに、目覚めの夢みたいに霞んで消えた。
「……ここって、何処なんですか?」
 そんな、目の前に先生が居るってことに比べれば瑣末な疑問を発するのがやっと。俺の居場所にたまたま先生が現れたとはとても信じられないし、ならばきっと、先生がここで会うことをお膳立てたのだ。
「志貴、夢にまで見るほど私に会いたいと思ってたんでしょ? だったら、夢でぐらいなら、会いに来ても良いかなって」
 歳が違うだけ顔立ちに違いがあるけど、笑い方は、懐かしく、瞼の裏の姿と一致した。
「そんなこと、なんで出来るんですか」
 現に会って話してるんだから、そんなのどうでも良いはずだけど、言葉にしてしまう。
 そうしたら、先生は、得意げににんまり笑った。
「だって私、魔法使いだもん」
 何の答えにもなっていないのに、それで納得してしまった。ずっと、理由もなく、もう一度ぐらいは会えるものだと思っていた。きっと、もう一度だけ会えることになっていて、本当ならまだその時じゃないんだろう。そんな風に。
 だから、なんでもない話をすれば良いんだと、収まりがつく。

 そうすると、代わりに別のことを思ってしまって、また口を噤む。
 記憶の中の先生も、ここに居る先生も、やっぱり信じられないぐらいに綺麗だ。
 おまけに、そう、今は水着姿なのだ。白いTシャツの布地は薄くて、その下のビキニが透けている。透けていなくても、お臍の上で結んでいるから強調されて、落ち着いてなんか居られない胸の大きさは見て取れる。健康な肉付きの手足は伸びやかに長く、ウエストは細くて、腰はまた豊かで。椰子の葉の間を漏れた日の光に、白い肌が輝いている。
 人生の恩人。その聖なる想いは変わらず胸に抱いている。だけど、目の前の先生が魅力的な女の子だって意識に背中から抱き締められている。自分で想い出を涜すようで後ろめたくて、でも困ったことに、心臓はドラムを打ってる。口を開けたら音が漏れそうで、口を噤んだままでいた。
「ところで、志貴」
 困っていたら、先生が沈黙を破ってくれた。ほっとして目線を上げると、何やらボトルを手にしている。
「一応は木陰だけど、やっぱり裸で居ると酷いことになるわよ、この陽射し。……塗ってあげようか」
「えっ?」
 日焼け止めのローションか何からしい。
 返事を待たず、先生はキャップを開けて乳白色の中身を掌に垂らしている。
「いや、その」
 ただでさえ意識してしまったのに、そんなもの直に塗ってもらったりしたら。だけど、先生が触れてくるところと、その気持ち良さを妄想し、撫で回されてしまう。
「いや、それじゃ、先生は大丈夫なんですか?」
 話を変えようとして、言い終わらないうちに気づいていた。
「ん、そうね、だったら私にも塗ってくれる?」
 墓穴を掘ったことに。
 また返事を待たず、先生はTシャツを脱いでしまう。照れくさくて目を逸らしかけて、でも、現れたものには魅入らずには居られい。
 雑誌のグラビアぐらいでしか見たこともない、いや、グラビアでだって滅多にないぐらいの、グレープフルーツの双子みたいな胸のふくらみ。白い三角のビキニは布地が小さくて、上も下も横も、はみ出している。いかにも重そうなのに、重力に逆らって張り詰めていた。
「ほら、塗って?」
 先生は俺の手を取ると、ボトルの中身を注ぐ。
「ど、何処に?」
「志貴の好きなところに」
 好きなところ。
 凝視していたところを思い、すぐ否定する。そりゃ、好きだけど、それは駄目だろうって。
「日焼け止めなんだから、肌に塗るのよ?」
 言いながら先生は自分でも両手にローションを手に取り、その手をこちらに伸ばして、肩に触れてくる。
「塗りっこすれば早いでしょ」
 自然な帰結のように言いながら、ニヤニヤが隠せない表情。するすると体の上を滑る先生の手にぞくぞくしながら、意を決して俺も肩のあたりに手を当てる。
 暖かくて滑らかな肌触りに、息を飲む。惹かれながらも、胴の方には降りて行けず、腕に向かって撫でていく。先生は遠慮無く俺の胸の方に手をやり、今も残っている傷跡をなぞると、いきなり乳首をくすぐってきた。
「ちょっ」
「んん? 感じちゃう?」
「いや、だからっ……」
「ここはダメ?」
 止めさせたら、先生はビーチマットに寝そべってしまう。
「やっぱり、志貴が先に塗って」
 仰向けになって形は変わってもも、バストの存在感は微塵も衰えない。再び意を決して、少し離れたところからローションを広げていく。シルクとか磁器とか色々連想するけど、何を引き合いにしたって、この感触には及ばない。脇腹の方を撫でると、くすぐったいみたいで笑い出し、体が震えて、双丘もまた揺れる。
 ごくん、と音を立てて涎を飲む。
「志貴、肌が見えてるところは全部塗ってね?」
 たわわな果実にビキニのトップは小さ過ぎて、色とりどりの三方の辺からそれぞれ溢れている。
「こ、このへんとかもですか?」
 腋の方から、ビキニの隣あたりにちょんと指先あてた。それだけで、際立った柔らかさと張りを感じて、また唾が湧く。
「もちろん。……志貴、おっぱい触ったことぐらい、あるでしょ?」
 唾が溢れそうで、黙って頷く。先生の口から『おっぱい』とか聞くと、無性に照れくさい。
「あるんだ。……じゃ、良いでしょ。そんなところだけ日焼けとか嫌よ?」
 うん、相手がそう言ってるんだしっ!
 誰に言い訳してるんだか、ともかく、両手で左右から手を寄せる。
 途端に、胸の谷間に何か雫が落ちた。
「あ……」
 ごくんっ。
 ……もう遅い。
 零してしまった涎が、ビキニの三角の間に落ちていた。
「あは、そんなに美味しそう?」
 きっと顔は真っ赤だ。
「ごめん……なさいっ」
 目を瞑って深呼吸。でも、たわわで瑞々しい鮮果は脳裏から消えない。
 正直、いくら相手は先生なんだとか思ってても、我慢の限度だった。
 拭わないと。
 そう思っただけなのに、気付けば、おっぱいの谷間に顔を寄せて、落としてしまった涎を舌で取っていた。手で感じていた滑らかな肌に舌が触れ、ローションの香料なのか、かすかに甘い匂い。体温が頬に感じられそうな距離。
 胸元の素肌を舐めるなんてことしたのか、と硬直してると、谷間に沈むように抱き寄せられた。
「うぁ?」
「さっきから、こうしたかったんでしょ」
 おっぱいに顔を挟まれたまま。滑らかで張り詰めた肌と、その下の良く弾む肉の柔らかさと、ぬくもり。やっぱり何か良い匂いがする。触れている部分から興奮と快感が弾けていく。
「ほら、返事は?」
 口に出さず、なんども頷く。すべすべ気持ち良くて、縦に横に顔を動かして、イエスでもノーでも、どっちにしたって顔中で堪能する。舌を伸ばして肌の味を見てる。
「こらこらっ」
 制止の言葉にも、従えやしない。
「『僕は大きなおっぱいが大好きです』って言ってごらん」
 からかう調子で、ぎゅっと頭を掴まれる。
「僕は大きなおっぱいが大好きですっ」
 ためらいもなく復唱する。この状態で羞恥もあったもんじゃない。
「あはっ、しょうがないわね、もう。良いわよ、好きにして」
 許してくれたばかりか、わざわざ手を取って触れさせてくれる。
 むにむにむに。両手で、いきなり揉む。止まらない。撫で回し、ビキニの下に手を滑り込ませる。紐が解けてて、ぺろんと捲れてしまい、とうとうグレープフルーツ全体があらわになった。ちょっとだけ顔を上げて眺める。ジューシーで健康な肌色の大きな丸っこい果実は、先っぽだけピンク色で、ツンと尖っている。見てるだけで涎が湧いて、また落としそう。
 女の子の胸を初めて見るわけでもないのに、それぐらい、興奮に頭を揺さぶられた。先生の裸体を見ているなんて、ひどくイケナイことをしてるみたいで、そのせいでやたらに熱くなる。
 ごくん。
 口付けたいのを我慢して、手でさする。両手でやっと、片っぽうを包めるぐらい。大きなパンの生地でも捏ねてるみたいな、でも触ってこんなに気持ち良いパンの生地なんて無い。つっついたら破裂しそうなほど張り詰めてるのに、揉んでも押しつぶしても弾き返してくる。
「そんなに強くしたら痛いんだけど」
 先生の抗議は聞こえているけど、やめられない。
 真珠みたいな乳首に魅入られて、とうとう吸いつく。舌でつつき回し、転がして、また吸う。指で摘まんで、引っ張って、くすぐって、反対側の乳首に吸いついて、また戻って。舌と唇の触れていないところが無くなるまで、舐め回す。
「あン……」
 先っぽが硬くなって、熟し足りないサクランボとか連想する。でも甘い。花の蜜みたいに甘い気がする。もっと味わいたくて、また無闇に吸ってしまう。唇で挟んで引っ張る。まさか母乳は出ないけど、気分の上では甘露の泉。
 やってることが恥ずかしくなって、こんなこと口にする。
「えっちですね、先生のおっぱいは」
 こんなにえっちなおっぱいだから、むしゃぶりついてしまうんだ。
「何の責任転嫁よ」
 両方の乳首を弄って、谷間の底に舌を這わせる。ローションのぬるぬるで頬を摺り寄せる。つるつるで、ゆで卵みたいな肌。食べてしまいたくて、かぶり付く。ふくらみが艶々なのがローションなのか俺の唾のせいなのか判らないぐらいに舐めまわした。あっちこっち吸い付いたせいで、赤い跡とか、しまいには歯型まで残ってる。
「ホントに大好きなのね、おっぱい」
 いくらか、声が蕩けている。
 返事する代わりに、ぎゅって握った。
「だから痛いって」
 こんどちょっと反省して、するする撫でたり、つばを付けたり。
 それにしたって、大きい。やわらかい。ぽよんぽよん。どうにも幸せな気持ちになる。居ても立ってもいられなくて、また顔をくっつける。眺めながら揉みながら吸いながら頬ずりしたい。
「んっ……んふっ」
 気持ちいい。でも、どうせなら先生も気持ち良くなって欲しい。乳首を唇で挟んで、舌先でひたすらに転がす。
「んぁんっ……うふふ……」
 もう一方の乳首を指で責める。摘まんで、先端をくすぐる。おっぱいを寄せて、両方の乳首をいっぺんに口に含む。それができるぐらい、先生のムネはふっくらしてる。
 吸って舐めて摘まんで歯でなぞって弾いて。
「んふっ、んぁ……」
 先生の声が甘くて、こっちまで耳から感じてしまう。体の下で、先生がびくびくしてる。
「先生って、胸だけでもイけたりする人ですか」
「ふふっ、志貴はー?」
「え?」
 触ったり口づけたりしてる快感だけで、どうにかなってしまいそう。
「えいっ」
 また先生が乳首を弄ってくる。背筋に走る戦慄。
「ちょっ」
 手から逃れようと、べたっと先生の体にくっつく。お腹の当たりから、胸の谷間に先生の顔を覗くような格好で、その双子の山をもてあそぶ。
 気持ちいい。幾ら触ってても吸ってても飽き足りない。もっと色んな風にしたくなる。いろんなコトしたくなる。したいことが、頭に浮かぶ。
 困ったことに、楽しそうで、すごく気持よさそうで……うん、是が非でも、したい。
 ……したい。
 思いついてしまうと、もうソレで頭がいっぱい。この期に及んでも、それをねだるのは恥ずかしくて、でも、もうだめ。欲情が糸を繰って俺を動かす。
「……先生?」
 こんだけ好き勝手に先生の胸をいじくり回してるのに、わざわざ尋ねた。
「なんですか、遠野くん」
 学校の先生みたいな口調。
「……もう、我慢できません」
「我慢って、何を我慢してるっていうの?」
「いや、その……」
 ちら、と自分の臍の下に目をやる。
「……ああ、この子?」
 先生が手を伸ばし、水着の上からペニスに触れた。もう、さっきからずっと、痛いほど張り詰めてた。
「えいっ」
 水着をずり下ろされて、ガチガチのイチモツを見せることに。
「こんなに逞しくなっちゃって」
 笑いながら、こちょこちょと弄られる。そんな指の感触だけで更に硬くなって、もう痛いぐらい。
「初めから、甘えてたんじゃなくて、えっちな気持ちだった?」
 分かりきったことにしても、わざわざ言われると恥ずかしい。
「それで、ここも気持ち良くなりたいのね?」
 はい、とこの上もなく素直に返事。
「恩人とか何とか思ってても、性欲は向けちゃうわけだ?」
「いや、それは……」
 葛藤はある。
 あったはず。でも、とっくに強制退去が終わってる。。
「……今の姿、『先生』って意識になりにくいように選んだって」
 こんな言い訳しながらも、ちっとも手は休めず、美果を弄んでいる。
 流石に伏せていた顔を上げさせて覗き込み、先生は笑った。
「ここまで来て駄目とか言わないわよ」
 天使の恵みに、後ろを向いて水着を脱ぐ。先生の体に跨って、両手でまたおっぱいを鷲掴みにして、その谷間に自分のものを挟んだ。ぐに、と先生の乳房で挟まれて、ペニスが肌のぬくもりに包まれる。
「あはは、そうしたかったんだ」
 良いって言ったのに、意外そう。ちょっと戸惑ったまま、体を前後させる。硬くなった自分のモノが柔肉に挟まれて、融けそうな快感。いきなり持って行かれそうなのを、息を殺して堪える。おっぱいがこんなに気持ちいいなんて。
 そう思って、先生の言葉が判った。
 あっちの口じゃなくて、胸を求めたせいだ。
 それ以外は考えられないぐらい、自然にこっちを求めてた。
「……僕は大きなおっぱいが大好きですっ」
 むぎゅむぎゅ、と力を込めてしまう。
 ちょっと目をそらして、腰を動かす。先生が、ボトルからローションを継ぎ足してくれて、トロトロ。輝くばかりの肌は貼りつくようで、こんなに潤ってるのに強烈な刺激。くりくり乳首を摘まんで、ふくらみを内に寄せて。
 くちゅっ、ぐちゅっ。
 赤黒い、グロテスクに張り詰めた自分のものが、先生の綺麗なふくらみの間からはみ出したり戻ったりしてる。突き出すときの、せめぎ合うおっぱいの間を破る感じ。引くときの、雁首の返しに引っ掛かる感触。吸い付いて舐め回されているような。
 気持よかった。
 腹の奥から、ざわざわと悦楽が沸き立ってる。根元から穂先まで、ペニスがぴったり乳房の間に包まれて、とろけるように愛撫されてる。優しいのに、意志を固めてなきゃそのまま果てそうな快感。ずっと浸ってたくて耐える。ちょっとでも長く、この快楽を味わいたくて。
 くちゅっ、ぐちゅっ。
 そんな音が、耳からも官能を注いでくる。
「はうっ?」
 いきなり、袋の方を先生に握られた。ふにっと揉まれて、またそれで弾けそうになる。耐えようとしてじっとすると、亀頭の方をペロリと舐められる。
「ぅくぅっ」
 じっとしたまま、おっぱいを揉みしだく。先生の舌と指に上から下から、おっぱいに周囲から責められて、快感が閉じ込められて圧縮されてくイメージ。
 また腰を振る。もう今にも果ててしまいそうで、そしたら先生に精液を浴びせてしまうのに気付く。顔とか胸とか。
 先生の顔に。
 射精する。
 そんな不埒なこと、想像しただけで――――背徳の快楽。
 そんなこと、駄目だ。思うけど、思うほど、そうしたい。澄んだ青空みたいにキレイな先生の顔と長い髪を、イチモツから吹き出させた体液で白く汚したい。そんな反転した激情が腰を振らせてる。
 流石に厭がるかな、でもここまで許してくれてるんだし、ほんとに怒りはしないかな。
 顔中に白いものを弾けさせたところを思い浮かべる。頬や口元に、まぶたの上に、おでこから髪の毛から、一面にぶちまける。
「あっ、うぁ……」
 知らず知らず、腰の動きが激しくなっていた。体の底から、快感が背筋を登っていく。
 くちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ。
 もう、このまま放ってしまえ。そのつもりで、腰を振る。ぎゅっと乳房をを押し付ける。
「せん、せい……」
 気持よかった。手で愛撫してるだけでも快感だった乳房に、自分のモノを摺りつけて、挟んで。おまけに先っぽを舐めたりまでしてもらって。
「もう、俺っ」
 先生が目を細め、首を起こして、亀頭を唇で包んでくれる。
「うあぁっ」
 決定的。ちろちろ舌を使われて、逃げるように腰を引いて、おっぱいに刺激されて。やっぱり舐めて欲しくて突いて。
 お尻の方から、何か伝わっていく。
 体の芯で沸き立つ快楽が、出口をこじ開けて飛び出そうとしてる。痙攣するほど力を込めても、もう破られるばかり。
 もう良いや、と力を抜く。思い切り、腰を使う。手に力を込める。
 あらためて、先生の顔にぶちまけるところを想像して、それは数呼吸だけ先の現実。
 罪悪感、でももうだめ、気持ちいい。
 そうやって、イチモツの中を精液が流れていくのがほとんど感じられた瞬間、
「えいっ」
 くいっ、と根元を強く握られた。
「がぁあ??」
 締め付けられて、弾けられない。
 でも腰が止まらなくて、気持ちいいのも止まらないけど、締められて出せずに生殺し。
「いや、ちょぁ?」
 わけの分からない喘ぎしか出ない。破裂しそう。先端を押しつぶされたホースがパンパンに膨らんでるみたいに。切羽詰まって、先生の手を払うことも考えられなかった。
「ちょっと訊きたいんだけど、良いかなあ?」
 先生が、わざとらしい、のんびりした口調で言う。
「なっ、何を?」
「いま、イキそう?」
 何を今さらっ。
 イきたい。弾けさせたい。射精したい。
「はいっ」
「で、この体勢でイっちゃったら、どうなるかな?」
 絶句。
 さっきから妄想してたこと。判らないはずもないけど。
 明らかなニヤニヤ笑いの視線に顔をそらす。でも、答えないと放してくれないみたい。
「……せんせの、顔に……」
「ふーん、判ってて、そのままイこうとしてるのね?」
 ちっとも腰が止まらないから、何の言い訳も無い。
「返事はー? 志貴」
「判って、ますけど……そうしたいんですっ」
 今更、止まれない。他のことなんて考えられない。ちらりと先生の顔を見たら、まだ魔女の笑い。顔に出されるのを厭がってるんじゃなくて、意地悪してからかってるだけ。そんな表情。
 顔に掛けちゃダメなのかどうか、それが悪いことみたいに勝手に思ってる。いけないコトみたいに思って、それに興奮するから。
「悪い子ね。志貴って、そういうコトしたがるんだ?」
「したいですっ」
 もう、まともに頭が動いてない。泣きそうになってるのはわかった。放ってしまいたい。むしろ泣いてるかも。
「正直ねっ」
「イかせてっ」
 先生の言葉もまともに耳に入らず、嘆願。
 それでやっと、
「良いわよ。ほら」
 と、許してくれた。
「はうっ……」
 先生の指が緩み、弾けた。
 無理やり止められていた精液が、一気に尿道を通って飛び出す。快感に撃たれて息もできない。妄想してた通り存分に噴出して、先生の顔を汚す。顔を飛び越えて髪にまで。まぶたに落ちて、目を塞ぐ。口許にも鼻の上にも。
「あふっ……ぅあ……」
 噴出の音が聞こえそうなほど、空恐ろしい量の白い濁った粘液が飛んでいる。二度三度と脈打って、先生の顎から胸元まで、どろどろした液の線で繋がる。
「はふっ……んんっ」
 最後、ぐちゅぐちゅぐちゅって、やわらかい胸の間に先端を擦り付ける。どくんどくん、おっぱいの谷間に繰り返し突っ込んで、精液の残りを搾り出す。
「はあっ……」
 力尽きて、倒れそうになって、どうやら手をついて支えた。眼の前には、俺の精液まみれになった先生の顔がある。離れる間もなく、頭を掴まれる。
「気持ちよかった?」
「……最高でしたっ」
 開き直って、オリンピックで金メダルでも取ったみたいに清々しく返事した。軽くイきかけたじゃなくて思いっきりイきましたとか、人生で一番気持ち良かったですとか、そんな勢い。
 先生はまだ何か言おうとしてた気配だけど、吹き出してしまい、許してくれる。
 ふたりとも体を起こし、向きあうことになる。
「あんなにするから、おっぱい真っ赤じゃない」
 握られた白桃が傷んだみたいに、乳房に無数の赤い跡がついていた。ほとんど全体を覆うぐらい。
「胸だけでイけるのは、志貴の方だったわね」
 先生は、顔と胸から、俺の精を拭いとって指に集めている。その仕草にまた欲情する。おっぱいを覆うぐらいに付いてるのはローションのはずだけど、それも自分が放った気分。
「凄い量。しっかり濃いみたいだし」
 じっくり眺められてしまうと、猛烈に恥ずかしい。匂いまで嗅いでみたり、指の間に糸を引かせてみたり。さっさと眼の前から無くして欲しい。
「それで、これ……」
 首を傾げて、悪戯に笑う。
「飲んで欲しい?」
 硬直した。視界から消す方法としては、極上。でもそんなこと、してくれたら嬉しいけど、望むのは憚られた。顔射までしておきながら、でも、飲んで欲しいなんて口には出来なかった。
 そうやって言い淀むうち、先生は指に乗った精液を白い砂で拭ってしまう。
「望んでないんだったら飲まない……あれ、残念そうね?」
 こっちの気持ちなんて重々承知らしい。
 ちょっと拗ねて、空を仰いだり周囲を眺めたりしていると、注文が揃ったかを確認するウェイトレスみたいに訊いてくる。
「満足、した?」

 今度は、ちゃんと言葉で答えよう――――

  1. 「駄目です。これぐらいでは全然、足りませんっ!」
  2. 「―――はい。それに、これ以上、先生とおかしなことは出来ません」

 

/あおぱい

 


 

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