エーデルフェルトの秘宝


 

 ありふれたカフェは繁盛していて、一般の客には、近代的な常識の埒外に生きる者達がここを訪れていることなど知る由もない。ずいぶん昔、市井に紛れる場所を欲した変わり者の魔術師が、そんな風に店を築いたのだ。
「眼の下に隈ができてますわよ、ミストオサカ。シェロが幻滅しますわね、そんなお姿ですと」
 端っこの席に独り居た黒髪の東洋人に、見事な金髪の白人が声を掛けている。
「こちらの席、よろしい?」
「ええ、どうぞ、ルヴィアゼリッタ」
 初めの言葉は御挨拶だったが、遠坂凛は、さほど意に介するでもなく応じた。
 この二人が憎しみ合っているとの誤解はずいぶんと流布している。無理からぬこと、当初ならば間違いではなかったし、同じ教室に居合わせようものなら火災報知器が動作しかねないほどの騒動の火種だったのだから。しかし、今ではそれも競い合ってのこと、悪意を向けてはいない。二人とも何事に付け勝敗は堂々とリング上で決しなければ気が済まない気質で、それがこの奇妙な均衡に貢献していた。
「何にそんなに疲れていますの? レポートに困って徹夜でもしたのかしら、前回私の次だったようですし」
「半ば徹夜だったのは正解だけど。レポートなんかじゃないわね」
 むしろ二人の才気への嫉み、やっかみに共闘する機会が多くあり、結果、存外に仲は悪くなかったのである。それに、足を引っ張り合うよりも手を貸しあった方がゴールには早く近付ける。競争相手は他にもいるのだし、二人で自壊していては連中の思う壺だ。そんな風に考えるだけの理を二人とも持ち合わせていた。
 いかにも寝不足の疲れた様子の凛は、そのくせ幸福な笑いをルヴィアに向ける。その表情の意味を察するのは、ルヴィアにも難しいことではなかった。
「……シェロですの? リン」
 にぱ、と凛が笑い、わざとらしく聞かせる。
「そ、士郎よ、ルヴィア。ほんと、魔術の腕はからっきし上がらないくせに、元気だけは溢れてるんだから。昨夜なんか、もう駄目って言ってるのに散々……」
「もう、はしたない、ミストオサカ」
 聞くに堪えない、という仕草で凛を止める。同じようなことは自分もするくせに、されるのは嫌だ。むろん、それが充分判っているから繰り返すのだが。
「しょうがないですわね、私が教えて差し上げたことをリンにまでしてしまうなんて。ミスタエミヤには主人という者をちゃんと判って貰いませんと」
「あら、衛宮くんなら誰が師匠かぐらい心底からわきまえてるわよ?」
 女二人が憎しみ合いに発展する切っ掛けがあるとすれば、それは、先程から四つもの名で言及されている一人の男だろう。凛の弟子であると共に恋人である衛宮士郎は、ルヴィアの元でアルバイトなど始めた上、今では殊更ややこしい状況に発展している。直截に言えば、やむを得ない事情でこそあれ、士郎はルヴィアとも関係を結んでしまったのだ。
 やむを得ず性交渉を持ったなど、馬鹿にするなって蹴り飛ばせば良いようなもの。しかし、『そういうの抜きで』と睦言に紛れさせたにせよ、凛と士郎も切っ掛けは似た事態だったのだ。
 そしてまた、士郎とルヴィアの健在なのも、そのお陰なのである。
 三人三様、思いは複雑ながら、今では曖昧な膠着の上に安定している。つまるところ、士郎は凛ともルヴィアとも関係を続けている。そしてどんな約定の元に二人が矛を納めたのか、周囲の人間はおろか、士郎自身でさえ知らずにいるのだった。
「ところで、リン。用事あって探していたのです」
 不意にルヴィアが声を潜める。元より、まわりに聞かれるほどの声量ではなかったが。
「なに?」
 凛も調子を合わせた。
「その、シェロのことでもあるのですけど……男性がどういう感覚なのか、知りたくありませんこと?」
「男性の感覚って……ええっ?」
 士郎のことでもある男性の感覚。直前の話題からして、言っているのがエッチの時の感覚だとは判る。士郎も気持ち良いには違いないのだろうけど、それがどんな風なのか。
「そりゃ、興味が無くはないけど。でも、そんなの、どうしようっていうのよ?」
「これをご覧なさい、中を覗いて。言っておきますけど、見ても大声出したりしないで下さいね?」
 ルヴィアに手渡されたのは、彫刻の施された木箱。言われるまま小さく蓋を開けて覗けば、象牙色をした短い棒杖(ワンド)のようなもの。一方の端には革紐が繋がっていて、もう一方の先端は幾らか膨らんで……。
「って、これっ」
 気が付いて顔を真っ赤にしながら、どうにか警告の甲斐あって声は抑えられた。
「どうしようって言うのよ、こんなもの」
 張り型。おそらくは本当に象牙で作られている、男性器のまがい物。革紐は、身に付けるためにあるのだろう。士郎のより大きいかな、などと見て取ってしまい、そのことに羞じらいつつ、こんなだと痛いばっかりじゃないかなとか思った。
 士郎のでもキツイのに。
 問われたルヴィアも少し頬を赤らめながら、答える。
「エーデルフェルトの限定礼装です、これを使えば男の方の感覚も知ることができます」
「……なんでそんな、秘宝館行きな変な限定礼装が家にあるのよ。やっぱり変態の集まりなわけ、エーデルフェルトって」
「失礼ですわね、やっぱりとは何ですか。きちんとエーデルフェルトにとっての理由と必要があって造られ、伝えられているのです。それより、話には乗りますか?」
 胡乱な話である。しかし、確かに興味は惹かれた。
「男の子の方の感覚が判るって、つまり……それを身に付けて触ったりすれば感覚があるってこと?」
「そういうことらしいです」
 らしい、が気にかかって問えば、ルヴィアにしても使ったことがあるわけではないと言う。仕方ないことだろう、身に付ければ男性器の代わりになるのだとして、相手が居なければ試しようがないのだ。
「でも、どうして急にそんなおかしなものを?」
 ためらうように束の間だけ黙し、また声を潜め、ルヴィアが言う。
「男の方がどういう風に感じてるのか判れば、シェロとの闘いも有利になるとは思いません?」
「闘いって、その、ベッドでの?」
 ルヴィアは頷く。
 ベッドインするまでの間なら、凛もルヴィアも主導権は握っていられる。士郎にとっての凛は、付き合いも長くなりつつある今も変わらぬ憬れの君だったし、ルヴィアもまた眩しく思う相手なのだ。しかし、いざ行為に至ると二人はいずれも啼かされるばかり。一度ぐらい、もう勘弁して、なんて士郎に言わせてやりたいとは二人とも思っていた。
「……どうしたら士郎が気持ち良くなるのか判るってこと?」
「ええ。そもそもこれは男性の協力がないと使えないのですけど、使うときには、その男性のもののコピーのように機能しますから。どこをどうすればシェロが気持ち良いのか、まさに体感として」
「それは……良いわね」
 いわば二叉を掛けられている女二人で、その悪い男をどうにかしてやろうという算段。あくま二人、敵が共通のときが一番親密になる。
「ちゃんと、わたしにも試させてくれるんでしょうね?」
「ええ、それで宜しいですわ。ミストオサカにエーデルフェルトの秘術を見せて差し上げる謂われはありませんけど、他の女性を巻き込むのは、その、もっと不本意ですし。せいぜい感謝して下さいませっ」

「ふーん……確かに、士郎のとそっくりになったわね」
 冷静ぶりつつも照れた表情で、凛がルヴィアと士郎の臍の下を見比べている。ストラップで留められた限定礼装の張り型は、今は大人しい姿の士郎のペニスの正確なコピーと言えた。
「なぜ私まで恥ずかしく思うんでしょうね……」
 見られながら、ルヴィアもまた紅葉を散らしている。
 しかし、いじけたようにベッドで縮こまっている士郎が一番恥辱に悶えていた。礼装の起動に必要なのだと、女二人の目の前で自慰などさせられたのだから。

「いや、なんでさっ?」
 最初何の説明もなく、士郎の反抗も聞き入れられる余地もなかった。先に説明しなかったのは、まさに士郎の反応を楽しむためだったのだが。
「男性の意に反して使うことは出来ないようになっているのですわ。……私たちが手を出してしまうと起動されないようになっていますの」
 そして、説明されたって、はい判りましたと言えることじゃない。
「しょうがないわね。ルヴィア、あなたオカズになってあげなさい」
「おかず?」
 戸惑うルヴィアに、背中から抱きつく。ドレスの袖のアタッチメント部分から手を入れてしまい、布地の下でバストを掴んでしまった。こればっかりはルヴィアが上なのを腹立たしくも羨ましくも思う豊かな乳房、腹癒せのように揉みたてる。
「ひやっ?」
 悲鳴を余所に、耳たぶを噛んで、囁く。なにやら不安になるほど慣れた手付きでドレスを脱がしにかかる。
「それなら、リンもお脱ぎなさいっ」
「ルヴィア、衛宮くんを興奮させる自信が無いの?」
「まさかっ……」
 挑発し合いながらも結局、二人して裸になる。ルヴィアは凛の肌の艶やかさに、凛はルヴィアの胸の膨らみに、お互い羨望を抱きつつ出るのは悪口ばかり。
 道行く人を振り返らせるに充分な美女二人があられもない姿を見せてくれるのだ、贅沢な自慰かも知れない。しかし、その二人に見られながらソロプレイに没頭できるタマでもなかった。第一、憎からず思う相手に挑発されれば、そちらに手を出すのが当然というもの。
「って、シェロ、いけませんっ」
 それに気付いた二人は、士郎を金縛りにしてしまう。手だけは自由を残して、さっさと脱がしてしまった。
「ミスタエミヤ、私には要求しましたのに、ご自分では出来ないのですか?」
 威厳を示そうとする様子ながらも言っていることは惚気に近く、おまけに顔は真っ赤。
「へえ、衛宮くん、そういうの好きなんだ?」
 事実だったから、言い返しようもなかった。ついつい、恥ずかしがるルヴィアが可愛らしくて、そんなこと望んでしまったことがあったのだ。しかし、意地の悪い笑いを浮かべながらも凛は拗ねた様子で、やっぱり頬は染まっている。
「観念しなさい、士郎。日頃の行いが自分に返って来るのよ」
 可笑しくて堪らないという風情の凛。
「まて、一万歩ぐらい譲ってそれだとしたってルヴィアだけで良いだろ、なんで遠坂まで居るんだっ」
「馬鹿ね、復讐は倍返しが魔術師の常識でしょ?」
「そんな常識あるかーっ!」
 しかし結局、凛やルヴィアどちらか一人でも、ベッドインする前の士郎ならば敵ではない。
「シェロ……ほんとに、私ではドキドキしたりしませんの?」
「ほら、衛宮くんってこういうの好きなんでしょ」
 縋ったり迫ったり煽ったり。
 二人掛かりで顔を寄せてふーふーペニスに息を掛けられ、凛の手に腹癒せのように揉みしだかれるルヴィアの胸の柔らかさやルヴィアの撫で回す凛の太腿の張りやら弄り合った結果ツンと尖った乳首やら女同士の濃厚なベーゼやら見せつけられ、蜜の匂いをかがされたりして、尊厳や羞恥は欲情に屈してしまったのだ。

「いつまでもいじけているのはお止めなさい、ミスタエミヤ。シェロには素敵な時間を過ごしてもらえると思いますのよ? もう一人の相手がミストオサカなのは玉に瑕ですけども」
「何よ、私じゃなきゃ嫌って頼ったくせに」
「頼ってなど居ませんわっ」
 しかし、まだ士郎はベッドに突っ伏している。両手で己のものを刺激する姿をじっくりたっぷり鑑賞されてしまった羞恥はまだ少年の頭を去っては居ない。
「しょうがないわね……ルヴィア、こっちで始めちゃおうか」
「そうですね。そうすれば、シェロもじっとしてなんか居られなくなりますし」
 ベッドの端に腰掛け、ルヴィアが凛を促す。
「ほら、ミストオサカ、跪いて私にご奉仕なさい」
「誰がご奉仕よ?」
 逆らってルヴィアをベッドに上げ、下腹部の張り型に指先を触れる。感触がさっきまでの象牙ではなく、人肌。
「なんか、すごいわね……」
 感心しながら、そっと握る。
「ひゃんっ」
「んぁ?」
 するすると撫で始めた途端、ルヴィアと士郎が同時に声を上げた。
「士郎?」
 ルヴィアが反応するのは何の不思議も無いが、なぜ士郎まで。
「男の人ってこんな感じなのですね……ふふ、どうですか、シェロ?」
「いや、何で俺まで?」
「女の体には無い器官ですもの、男性のシェロの神経を借りませんと」
「士郎の神経って……これに触ったら士郎も感じるわけ?」
「そうですわ。ふふふ、シェロ、素敵でしょう?」
 男性器に受ける感覚は男性の脳で処理した方が真っ当な結果を得られるのが道理である。張り型に凛が触れた感触は曖昧な触覚としてはルヴィアも感じているのだが、同時に士郎に伝えられ、そこから士郎が感じる快感をルヴィアが共感している。
 理論や仕組みはともかく動作は理解し、凛はルヴィアの下腹に頭を埋めた。
「士郎も気持ち良いんだったら、しっかりしてあげる」
 勃起した張り型を両手の指で包み、口付けてやる。口を開けて、かぷりと根元あたりを横咥え。
「んんっ……なんか……変な感じ、ですわ……」
 女が理解しやすいようにする仕組みはあっても、異常な経験には違いない。まだ、ルヴィアには快感よりも当惑が大きかった。
「はうッ……」
 士郎には、それなりに馴染んだ凛の手付きや口付け方に、しっかり昂ぶった。何もされてないのに感触だけあるのが奇妙に思えるだけ。
「いらっしゃい、こちらへ」
 誘われて、今度は士郎も従う。言われるまま、ルヴィアに並んで脚を投げ出す。迫られて、唇を交わした。
「あ、ずるい……」
 凛が、二人のキスに気付いた。やめさせようとして、たまたま士郎のペニスに目が行く。いま自分が口付けていたものと、確かに瓜二つだ。そちらにも手を出して、いきなり軽く握った。
「はうっ?」
 たっぷり焦らされた挙句にやっと触れて貰ったみたいな鮮烈。
「シェロ?」
 凛は、両手で礼装と士郎の本物とを愛撫する。
「いや、なんか……二本ある、みたい……はぅ……」
 それぞれ指の輪で上下にこする凛の手を、士郎は両方感じている。別々の感触だから、まるでペニスが二本あるかのように。
「素敵でしょう? こんな美人二人といっぺんに仲良くした上に、そうやって2倍感じて頂けるんです」
「はふっ、ちょ、これっ!」
 士郎の喘ぎっぷりが楽しくなって、凛は愛撫に熱を込める。ルヴィアの方を深く咥え込み、士郎のを指で包んで擽り回す。エラのあたりが弱いのは知っているから、口も指もそこに集中攻撃。
「かはっ、と、と、とおさかっ……」
 いきなり決め技をくらったみたいで、今にも放ってしまいそう。
 なのに、押さえ付けられているみたいで、弾けられない。
「大丈夫ですわ、シェロ。私が達するまではシェロも暴発したり致しませんから」
「いや、それって、大丈夫って言うよりっ」
 逝きそうなのに逝けないなんて、拷問だ。そう訴えても、ルヴィアは凛の口技にうっとりし始めている。
「んっ……。ああ、リン、だんだん良い気持ちに……」
 じゅぷ、じゅぷ、と音を立て、凛は、士郎のものと瓜二つに変貌した張り型を唇に出し入れさせる。
 初め、口での愛撫をしてやれるようになるのには士郎が喜ぶからとか悶えるのを見るのが楽しいからとか言う理由や言い訳が凛には必要だった。最近では、舐めてやること自体も楽しんでいる自分を見つけている。えっちなことしてるって気分に自家発電で興奮するのだ。
「やっぱり良い気持ちですのね、舐めていただくのは……」
 蕩けた目でルヴィアは士郎を眺め、再び首に手を回して唇をねだる。二人とも、あり得ざる快感に惚けながら、それでもキスを交わす。士郎はルヴィアの胸に手を当て、柔らかに指を押し返す感触を味わう。
「あぅっ」
「んんっ」
 凛に根元を根元あたりを舐められて、新しい刺激に二人して呻いた。唾でどろどろになった先端もすぐに手に取られ、再び性感に包まれる。士郎とルヴィアが息を詰まらせながらも口付けを止めないから、凛はますます熱を込めて愛撫する。
「これは無いのね」
 と、士郎の本物を握っていた手を、ぶら下がった袋に移す。
「はぅぅ……」
 静かに揉みほぐされて、士郎は腹の奥で沸き立つものを感じた。
「ん……そうですわね……」
 目線を下げて凛の言葉を解し、ルヴィアも手を出す。自由になっている士郎のペニスの先の方に指を絡めた。
「つぁっ……」
 二人の手に、それぞれ亀頭を愛撫されている。あり得ない手の重なり方、だけど性器が二つあるみたいにそれぞれ感じられる。どっちが本物なのか判らず、達しないのはそのせいか。
 凛は再び穂先を咥え、口に深々と受け入れた。唇を閉じ、ぴったりと吸い付いて舌を届く限りに這わせた。
「ああっ、リン、すごいっ」
「あぁあぁぁ……」
 ずぶ、と喉まで受け入れる。嘔吐感を堪えて喉で亀頭を刺激し、ペニスの裏に舌を添え、ぞろりと舐めてやる。
 ルヴィアが意味を成さない声を上げる。お腹の中で蠢動するものを感じて、じっとしていられない。むずむずするような、痒いような。
 士郎の声は既に苦悶。
 息苦しくなった凛は一度喉から出し、また先っぽに吸い付いて舌でぐるぐるしてやる。
「と、とおさ……か……」
 呻きながら、士郎はルヴィアの脚の間に手を伸ばした。ストラップで留められた張り型の下には、濡れそぼったルヴィアの女がある。アンダーヘアを掻き分け、谷間の上の突起を探った。
「シェロ、だめですっ……あぁっ」
 拒みながらも、刺激を受けてしまうと快感に打たれる。でもそれは女の悦びで、礼装への刺激とは別ルート。強くなってきた掻痒感が、男としての到達の前兆だとようやく理解した。
 士郎の手を目にして、凛もルヴィアを責めることを思い出した。変わらずフェラチオは続けつつ、指をルヴィアの中に沈める。
「あぁっ、そんなっ……」
 擬似男性器からの刺激に慣れつつあったルヴィアは、本来の女性器を刺激されて再び混乱した。士郎の体感同様の重なり合った感覚。ルヴィアも、男として達したくて体を疼かせる。
 射精しかかった状態で止められている士郎は、また機会を失している。
「遠坂、頼む……」
 ねだられて、士郎が生殺しで焦れているのを知りつつ凛は小さく舌を使うだけ。そのぶん、ルヴィアの中を激しく掻き回す。士郎と二人で女を責められ、ルヴィアはそっちで達してしまいかける。たまらず凛の手を捕まえ、訴えた。
「駄目です、リン、そちらではなく……」
「そちらって?」
 膣内を指先で擦りながら、張り型には吐息と唇でむず痒いばかりの刺激だけ。士郎の性器は、大きく手を滑らせて愛撫してやる。
「んんっ、ですから、私のヴァギナではなくて、礼装の方で……」
「ルヴィア、男の子みたいに逝きたいんだ?」
「そ、そうですわっ、それが目的でしたでしょうっ?」
「ふふ、ルヴィア、じゃあさっき士郎が見せてくれたみたいにして逝けば?」
 言うが早いか、凛はルヴィアから離れ、士郎の下腹に顔を寄せる。相変わらず、片手だけはルヴィアの中を責めながら。
「え……? いえ、そんなっ、リン?」
 狼狽するルヴィアに目線だけ向けながら、凛は士郎のものを咥えてやっている。口に含んだ感触は紛い物とそっくり、それでもやっぱり、士郎自身を愛撫する方が嬉しい。
「とおさかっ……」
 皮膚の感覚だけなら、士郎にとってもさっきまでと違いは無かった。しかし、愛しい女の子が自分のものを直に舐めてくれているって実感は計り知れない。ずっと吐き出す一歩手前のままやっぱりまだ逝けない、その快感の地獄になおさら悶えながらも。
「ルヴィア」
「シェロ……」
 そうは思いながらも別の女にキスを迫れるのは、もう解放されたいから。唇を重ね、乳房に手を当てて揉みたてる。可愛らしい乳首を摘んで転がす。そんな士郎の愛撫が嬉しいけど、ルヴィアが今欲しいのは擬似ペニスへの刺激。先程からの士郎の悶えっぷりがようよう理解できた。
 何となく判るのは、女の器官の刺激で達したら焦れったさは酷くなるだろうということ。
「シェロ……」
 凛が意地悪をするぶん、士郎に甘えてみる。しかし、士郎も自分のでないペニスなど、たとえ己のコピーでも触れたくは無かった。
「さあルヴィア、ちゃんと見ててあげるわよ?」
 ルヴィアの蜜にまみれた指で凛は張り型を撫で、煽るついでに潤わせてやる。
「ひあっ!」
 久しぶりの触覚に、凛の狙った通り余計に渇し、とうとうルヴィアは手を礼装に添える。
「んっ……」
「しちゃうんだ、ルヴィア」
「あぁっ……見ないで下さい、リン……」
 羞恥に泣き顔になりつつ、おずおず、装着した張り型を握ってさすり始める。
「はあっ……んぁ……」
「はふっ!」
 士郎はどのあたりが弱いのか、それなりにルヴィアも心得ている。思い出して、出来るだけその通りに指を絡める。
「いやらしわね、ルヴィア。ほら、士郎も見てあげなさい」
「いやっ、見ないで……お願いです……」
 嘆願しながら、凛が目を反らしてなどくれないのを判りつつ、もうルヴィアは自分の手を止められない。士郎に手だけで吐精させたこともあるだけ、ちょうど良い加減は判ってしまう。
「んっ……ぁあっ……」
「はふぅ、くふぁっ……」
 士郎には見る余裕が無かったのだが、恥ずかしい姿を晒しているとルヴィア自身は思い込んだ。それでも、両手で摩擦を続けてしまう。
 少年の自慰を演じるルヴィアに、凛はますます女の中を責める。留守になっていた士郎へのフェラチオに意識を向ける。
「うぁぁっ」
「ふぁうん……くぅん……」
 凛が士郎のものを喉まで受け入れたのは、ルヴィアの性感には無関係だったが、達したのはその瞬間だった。
 腹の奥から何か噴き上がり、自分には無いはずの器官を通過して飛び出ていく感覚。風変わりな限定礼装である張り型は、しっかり射精の機能まで備えていた。その不慣れな快感が女としての絶頂をもトリガーし、重畳してルヴィアを打ちのめした。
 ルヴィアの感じた射精の感覚も、やはり士郎に伝わった。その射精覚は、こちらでも士郎自身の吐精を招き、二つ同時に放つ感覚。凛の口にぶちまけながら、気が変になりそうな寸止め責めに続いたあまりの快感に、士郎もほとんど気絶しかけた。
 張り型が吐き出したものの正体は判らないが、見た目も匂いも触った感じも、喉にやったばかりの士郎の精と区別が付かない。それで、二人の反応の激しさに呆然としつつ、ルヴィアのお腹にくっついたのを集め、礼装からも舐め取って綺麗にしてやる。
 揃って達した二人に取り残されて、凛は少し不機嫌。無意識のように士郎とルヴィアが互いを抱き寄せ合うのを見て、間に割って入ると奪い返すように士郎に口付ける。
「……もう、酷いですわ、ミストオサカ。最後までして下さらないなんて……」
 自分のしたことを思い出し、消え入りそうに恥じながらルヴィアが抗議する。
「あはは、可愛かったわよ、ルヴィア?」
「リンっ、そう言うこと仰るんでしたらリンには使わせませんわっ」
「あ、それは無いわよルヴィアゼリッタッ」
 まだ身に付けたままの張り型を凛に掴まれ、ルヴィアと一緒に士郎も呻いた。
「遠坂っ、痛いっ」
「え? あ、ごめんっ……」
 まだ、士郎との感覚共有は途切れていないのだ。
「ほら、大人しくなさい、凛……」
 激しい行為の後の虚脱感。知らず知らず、今度は女二人で抱き合っていて、抓り合いに発展する。
 他愛の無い戯れと気怠さの中、士郎はやっと当初からの疑問を口にする。
「そもそも、なんでそんな変な限定礼装なんて伝わってるのさ?」
 疲労に快楽物質の名残りが重なって、到底まともに頭は動いていない。
「エーデルフェルトの当主が常に姉妹で、それゆえに天秤の名があることはご存知でしょう?」
「ああ。ルヴィアにもお姉さんか妹さんが居るのかな、とは思っていたんだけど」
「それは訊かない約束でしたでしょう、シェロ。それで、理想的には双子の姉妹なのですね、当主としては」
「双子か……とことん異端よね、それ。でも、そうそう双子が都合良く産まれるってものでも……って、じゃあ?」
 二人を逝かせただけの凛は、まだ元気。
「ええ。その問題を解決するための道具だったんです、これは」
「解決って、双子を産むための道具なのか?」
 それがなんでまた、こんな奇妙な機能なのか。
「いいえ、普通の意味で双子を作る道具ではありません。これは、いわば姉妹で双子を一人ずつお腹に宿すための道具なんです」
 言われてもまだ腑に落ちない表情の士郎に、更に言葉を続けた。
「一人の男性、姉妹二人の全員の血を引く一卵性双生児である姉妹を、一人ずつ妊娠するための」
「なんか滅茶苦茶ね、それ……」
 自分で言いながら、その意味の重大さにはルヴィア自身も気付いていなかった。
「そういうわけですから、男性に元気を出して貰う効用もおまけのようにあるのですけど……」
 耳にした凛は、ルヴィアと顔を見合わせる。二人して、冷や汗を垂らしながら苦笑い。
 つまり、今夜の士郎は普段以上の逞しさを見せてくれるってわけかと。
「じゃあ、もう大丈夫でしょ。士郎、ルヴィアを抱っこしてあげて?」
「ん?」
 言われるままに抱き締めてくれる士郎に、ルヴィアは嬉々としてさっき邪魔された唇をねだる。自分で張り型をさする姿を見られたと思い込んだままだから、ぶり返したその羞恥をキスに溺れて忘れようとした。
「いただきっ」
 その隙に、凛が張り型をルヴィアの腰から外してしまう。
 あっ、と振り向こうとして、しかし士郎に捕まえられて果たせない。
「これで……装備完了、と」
「ちょっと、シェロ?」
 がっしりと逞しい胸に抱き寄せられるのは大好きだけど、今は都合が悪い。しかし、士郎は言うことを聞いてくれない。
「言ったでしょう? 衛宮くんは誰が師匠かなんてちゃんとわきまえてるって」
「そんな……」
 明らかに凛の味方をする士郎が、少なからずルヴィアにはショックだった。それでも、
「順番。また後で……」
 そんな風に、耳にくっつけられた唇が囁いてくれたから、受け入れる。
「ぁう……」
 まだルヴィアの耳元に口を寄せたまま、士郎が喘ぐ。
「ふふふ、そう、男の子ってこんな感じなんだ」
 凛が、自分で礼装を撫でているのだ。同じ感覚を味あわされている士郎とわざわざ目線を合わせて、するすると指の輪を絡ませる。吐精して間もないが、見る間に逞しく勃起していく。
「とおさか……」
「んんっ、やっぱりこの辺が気持ち良いのね」
 細く長い指が、亀頭のエラを逆撫でして擽る。
「良く覚えておいてあげる。ルヴィアも、あんなに恥ずかしがらなくても良かったのに」
 声を掛けられて、びくりとルヴィアは身を震わせた。しかし、凛にしても頬は真っ赤だった。
「ほらルヴィア、行くわよ?」
 腰に手を掛けられ、また震える。了解した上での戯れ、それに所詮は張り型。別に、いけないことではないと思う。だが、士郎に抱かれたままで士郎のものではないペニスを平然と受け入れられるわけでもない。
 そんな逡巡を余所に、凛は後から擬似ペニスをルヴィアに近付ける。いりぐちに軽く当てられただけで、またもルヴィアは躰をわななかせる。
「んん……」
 しかし、黒髪の美少女は遠慮無く礼装をブロンドの女の中に沈めた。
「あぁっ」
「くぁっ」
 三人三様、声を上げる。
「んふ……変なの……」
 初めての感覚。男みたいに、女を犯す感触。初めて士郎にクンニされたり乳首を吸われたりしたときも、こんな感じだったと思い出す。くすぐったいのやら、むずむずしてもっと強くして欲しいのやら、ぞくぞくして辛いから止めて欲しいのやら。恥ずかしくて、でも、嬉しいことだけは確か。
 いずれにしても、じっとしてられない。全部混ざって、詰まるところ、気持ち良いのだ。肌を触れ合わせ、とんでもないトコロまで見られたり突っつかれたり舐められたり、恥ずかしくて逃げたいのにストップできない。
「あぁぁっ」
 知らず知らず、腰使いが激しくなっている。後から突かれるのは何だか屈辱的だから凛は好まないのだが、突く方ならば愉悦。
 ルヴィアはこの体位なら好きな方で、お陰で、あられもなく感じてしまう。他ならぬ士郎に抱き締められながら膣を満たされ、だけどそれは士郎のものじゃない。。
「ルヴィア、士郎にして上げなさいよ?」
「ぁあっ……そう、ですね……シェロ」
 士郎が抱擁を緩め、ルヴィアはその下腹に頭を埋める。
 愛しい女の子が躰を開かされて、よがっている。だけど責めている方も、愛しい女の子。そんな倒錯の光景を見せつけられて、士郎は熱くなっていた。
 少しは落ち着いた凛が、ペースを落としてリズム良くルヴィアを責める。啼かされながらも、ルヴィアはそそり立った士郎のペニスに頬ずりし、唇を滑らせる。ためらいがちに、それでも大きく口を開けて、士郎のものを受け入れた。
 掌に爪を食い込ませて、士郎は耐える。さっきもあんなに焦れったい思いをさせられたのに、我慢したら辛いのは知っているのに、あまり早く達しては沽券に関わる。
 しかし、ルヴィアの膣内を味わいながら口でも愛されている快感は理解を超えていた。性器の全体を搾るように締まる、濡れた肉の感触。それに重なる、急所を心得た舌と唇の愛撫。後から責められて躰をわななかせながら、豊かな金髪を振り乱して少女は男を口に咥えているのだ。
 薄いメイクの唇は甘い桃色で、そこに出入りする男根がよけいに禍々しく見える。なのに愛しげに、いっそ敬うように愛撫し舌を絡ませている。
 見ているだけでも興奮する。なのに、感触は二人分。
「はうっ……」
 快感が強すぎて辛い。休みたくて、顔を上げさせ、士郎はオレンジがかったブロンドを梳ってやる。でも、すぐに肌に手を移し、汗の潤いと張りを楽しむ。そのままもっと手を滑らせて、柔らかな乳房を掴む。そっと揉むだけのつもりが、指を食い込ませて堪能してしまう。
「んんっ、これで、して欲しいのですね? シェロ」
 そんな意図はなかったのだが、誘われたら拒む理由は無かった。
 ルヴィアの躰を起こし、自分も膝立ちになって士郎はペニスを突き出す。それを豊かな双丘に挟む。両手に、小気味良い弾力と滑らかな肌を堪能しつつ、ゆっくり腰を揺する。思えば、今日はじめて自分から動く格好。
 とろとろに濡れて凛が突くたびに水音を立てる媚肉と、汗に潤って輝くようなバストと、感触の対比が鮮烈。こんな風に一人の女の子を味わうなんてあり得ないこと、いっぺんにやってるのが征服感を掻き立てる。
「私の胸は、気持ち良い――ですか?」
 後から突かれて喘ぐ合間に、ルヴィアは尋ねてみせる。本当に聞かせたい相手は、凛だ。
 気持ち良い、と応える士郎に、凛は黙ってペースを上げた。
 また三者、様々に快感の声を上げる。
 呻きながら、士郎は金髪娘の豊満なバストを望むまま揉みしだく。乳首をくすぐって、堅く尖るのを楽しむ。そうやって忘我して、焦れったさを紛らわすように。それでも、ペニスを胸に擦りつける動きは片時も休んでいない。
「シェロは、大きなおっぱいが大好きですものねっ?」
 聞こえよがしの言葉に、更に凛は激しくなる。
「んあっ」
 突きまくられて、快感か苦痛か判然としない声を発しながら、士郎には婉然と笑ってみせるルヴィア。
 誘われて、イチモツに胸の柔肉を更に押し付ける。つい強くしすぎて、いくら滑らかで潤った肌でも擦れて痛い。そう思ったところへ、ルヴィアは唾液を落としてくれる。それから、突き上げてくる矛先に口付ける。乳房に挟んだまま、また咥え込んでしゃぶり始める。
「はっ、くぁ……」
 貌を見られなくなるのが残念だけど、こうやって胸に埋めたまま口で愛されるのは至福だった。下から睾丸を揉み立てられて、逃げ場の無い快感が破裂を求めて暴れる。
「んんっ……これって、逝きそうって感覚?」
 腹の奥が沸騰するばかりの射精感もまた、士郎には二重奏。ルヴィアの蜜壺に深く割り入った礼装は、凛に感覚を伝えるのに士郎を中継している。そのくせ、凛が達するまで士郎は射精できない運命だった。
「ああ……最後、そのまま……っ」
 甘美なルヴィアの唇と舌に飽きたらず、士郎は我慢できずに頭を掴んでペニスを喉まで押し込んでしまう。それでもルヴィアは、嘔吐感と息苦しさに耐え、健気にに奉仕した。前から後から士郎のものに責められて、体中を士郎で満たされている気がした。
 引きつるように、士郎のペニスが脈動する。体は射精を促しているのに、栓をされたみたいに出て行かない。いつまで止まらず、快感と共に苦痛。
「んあっ……これ……ふぅん……」
 法悦ながらも異質の快感に当惑して、最後の一歩が届かず凛も自分で生殺し。
 やっと腰を退いた士郎のペニスをルヴィアは変わらず舐め続ける。舌や唇がこんなに感じるなど、ルヴィアは知らなかった。奉仕している方なのに、先に達してしまいそうなほど。何も考えなくても、士郎が好む責め方は躰が覚えていた。
 凛の張り型に責められて、とうとうルヴィアは達する。舌の裏をなぞる亀頭の感覚を切っ掛けに、本当にフェラチオで自分が絶頂した気がした。
「ルヴィア……士郎……」
 律儀に二人の名を呼び、凛が快感の証を吐き出す。オーガズムの際に締め付けられたルヴィアの膣に、躰の中から何か噴き出していく未知の感覚。知ることの無いはずの快感。
 凛の到達でようやく禁則が解かれ、即座に士郎も吐精に至る。思わず仰け反ったルヴィアの貌にたっぷりとぶちまけ、まだ脈打つペニスを再び口にねじ込む。そのまま、こらえられず喉の奥まで突き入れた。凛の張り型の射精と同調するみたいで、どっちが吐き出しているのやら判らなくなった。
「はぁああ……」
 凛が声を上げ、やっと擬似ペニスをルヴィアから抜き取る。にゅるん、という感触で三人ともまた小さく喘ぐ。
 同じようにルヴィアの口から出ていこうとする士郎を捕まえ、射精したばかりの亀頭を咥えて舐め回す。
「いや、ちょっ……」
 意外にがっしりと腰を掴まれて、逃げられなかった。
「あんな息苦しい思いをさせた罰ですわ、気持ち良すぎるのぐらい甘んじなさいっ」
 3度目の吐精の直後だというのに、萎えることも許されなかった。
「ほら、今度こそ私の番ですわ、ミストオサカ?」
 ちょっと休ませて、という少年の願いが聞き入れられることはなかった。

 その先はただ、狂乱の宴。

「もう、なんで男の子ってあんなにおっぱいが好きなわけ?」
「それは、男の子だから、ですわ」
「これって、そりゃ気持ち良いけど、中や口より良いとは……」
「そうなのですか? 私には判りませんので」
「悪かったわねっ」

「ほら、こうすれば、凛の中と私たち二人の唇を同時に……」

「んんっ、なんか、美味しく思えて来ちゃった」
「変態ですね、リン。こんな変な味のすのに」
「ルヴィアはサルミアッキが美味しいんでしょ、あれより普通よ」
「いえいえ、こっちの方が美味しいですわっ」

「ちょっと、士郎、そっちはっ」
「あら、ミストオサカ、後を可愛がって貰ったことはありませんの?」
「あん……そ、それぐらい……あるわよっ……」
「じゃあ、前から後からシェロと二人で可愛がって差し上げます」

「さあ、シェロ。これで私たちの女の道具を直接比較できますでしょう?」
「ふふふ、どっちが気持ち良い?」

「ずるいわね、どっちがどっちだか判らないだなんて」
「気持ち良くて士郎の好きな方が私に決まってますっ」
「きゅっと締まって」
「とろけそうに熱くって」
「柔らかくて」
「とろとろに潤ってて」
「ぴっちり吸い付いて」
「ぐりぐり刺激が良くて」
「そういうのが私よっ」
「さあ、どちらですのっ?」

「士郎の弱点、また見ーつけた、っと」
「あら、これも良いのですね? シェロ」
「ん、ルヴィア、じゃあまた交換する?」
「ええ、等価交換です」

 夜が明けるまで。

 朝になって、ようやく疲労困憊とオーバードーズめいた快楽物質が三人をストップさせた。
「くたびれましたけど、目的は果たせましたね」
「目的……って、男の子の感覚か。そうね」
 そういえば、そもそもそんな話だった。
 太陽が黄色いなんて表現を思い出しながら、士郎は、二人の間でぼんやりと考える。昨夜の狂宴のことは、気持ち良かったことに疑いはないながら、途中から記憶が薄い気がする。むしろ、思い出したら危険だと何かが囁いている。振り向けば死。
 それで、浮かんだ疑問だけ口にした。
「どうなんだ? 女の子の感覚に比べて」
「んー……。ギリシャ神話の教えは正しかった、ってとこかな」
「リンもそう思われます? そうですね、テイレシアスの言う十倍かどうかまでは、ともかくとしましても」
「テイレシアス?」
 何の話をしているのやら。
「女の方がずっと気持ち良い、ってことよ!」
 そんなの、よく死なないものだ。そういえば、小さな死とか呼ぶのはフランス語だったか。士郎には、想像しただけで気絶してしまいそうだった。
「ところでルヴィア、逆に士郎に女の子の感覚を教えてあげられる礼装とかは伝わって無いの?」
「ありません。そんなものがあれば、とっくにミスタエミヤには知って頂いています。女にとって、あんなに激しくされたらどんな感じなのかですとか」
「無いのか、残念ねえ。是非、士郎の初めては私が貰ってあげようと思ったのに」
「ミストオサカ、初めに言いましたけど、これは大人のオモチャじゃありませんのよっ」
 いい加減、疲労に耐えられず、三人して仲良く寝入ってしまった。

 大人の玩具でなければ、いったい何なのか?
 この点に関し、ルヴィアの説明に何ら誤りがあったわけではない。
 しかし、仮にも“子を成すための道具”なのである。その基本機能が何であるはずだったのか、それを理解して一騒動あったのは、しばらく後のことである。

 

/エーデルフェルトの秘宝・了

 


いうまでも無く、作中で語られる秘宝に関しては何らオフィシャルな情報に基づくものでは有りませんw

感想とかリクエストとかは下のフォームや掲示板でお願いします。

お名前(省略可)
E-mail(省略可)
5段階評価
A / B / C / D / 評価せず
実用度は如何かw
使った / 使えそう / 無理 / 内緒
メッセージ(省略可)


 

タナトスの祭儀 会場に戻る