DUTY.

憧月翁


 

 満天の星と銀色の月の夜、灯りの消えた遠野の洋館の志貴の部屋の扉の前に、紫の長い髪の女が夜着姿のまま立ちつくしていた。
 今夜、志貴が部屋にいることをシオンは知っていた。扉を開けて入れば、志貴に拒まれることはきっと無いだろうことも。そう言う意味でも、シオンは屋敷の住人に受け入れられている。
 事実、そうやって志貴に抱かれたこともある。しかし、逡巡せずには居られないのだ。ここまで来ておきながら、結局帰ったことも何度もある。
 血の渇きを鎮めるため。
 ……それが言い訳に過ぎないことは、シオン自身が一番良く知っていた。
 シオンにこの扉の前まで足を運ばせたのは、血を求める成りかけの死徒の体の痛みではない。ひとえに、志貴を欲しがる女の躰の疼き。知らずにいれば、一度も味わうことが無ければ、これほどに渇することはなかった。その点ならば、血を飲みたがるのと同じことだ。
 事実、人を強く想うことが血の渇きの原因。
 想いを満たせば、その場をしのぐことはできる。血を飲んでしまうよりは良い。
 ……だから、それは言い訳に過ぎない。
 志貴が欲しい。
 志貴の温もりに融かされたい。
 志貴の指を、唇を、凍える体に感じたい。
 志貴の腕に包まれたい。
 志貴に、抱かれたい。もう一度。
 ……望めば、応えてくれる。
 それを知っていて、否、知るが故になおさら、ためらう。自室の扉の前で過ごしたのと同じだけの時間が既に過ぎている。
 扉を開けるべきでない理由なら、百でも並べられる。扉を敲いて良い理由もまた。
「んっ……」
 しかし気が付けば、扉に背をつけて、指を己の肌に這わせていた。志貴の愛撫してくれた豊かな乳房を、己の手で嬲る。乳首を摘む指に力が入りすぎ、だけどその痛みも今のシオンには快かった。もう一方の手を脚の間に埋め、薄いショーツの上から谷間をなぞる。柔らかな肉を穿つ志貴の男を思い、抑えられず、肌着の中に手を入れた。
「あっ……」
 夜も、翡翠や琥珀が見回りに来ることは知っている。こんな姿を見せるわけにはいかない。そんな抑制は、破ることの快感にしかならなかった。たくしあげて直に乳房を揉みながら、志貴の手を想像する。半人前の死徒の手に比べれば脆弱な志貴の指、だけどそれは紛れもなく男のもので。
「志貴……」
 その場の快感も、過ぎてしまえば酷くなった疼きに戻ることは知っていた。こんな自慰が、痛みにしか繋がらないことは少ない経験の中でも良く知っていた。
 止まらない。だけど、止まらない。
 女の泉に指を沈める。まだ潤いは少なく、引っかかりが強い。それだけ、しっかりと細い指が入り込むのを感じられる。
 何をしているのだ、私は。
 そんな抑制をかける思考の最後の一つも、とうとう止めてしまった。
 血の味を求める舌を、とっくに堅く立ち上がっている己の乳首に向けて突き出す。
「んふ……」
 ようやく満ちてきた雫を頼りに、谷間の上の鋭敏な突起をなぞった。
「ぁあっ」
 駄目。
 思いながらも止まらない。止まれない。それどころか、女を貫かせる指の数を増やしてしまう。
「志貴……」
 名を呼ぶのが悦びで、声を零してしまう。
 両手を股間にやり、ぐちゅぐちゅと孔に指を出入りさせ、クリトリスを擦り続ける。蜜にまみれた指を咥え、こんなになってるよ、なんて言う意地悪な志貴の指だと想像する。己の雌の匂いに滾る。その次には、何本も一度に口に入れて、志貴のものを思い浮かべた。
「んんっ……」
 もっと。
 もっと、して欲しい。志貴に、して欲しい。
「ああっ」
 黙ってなんて居られない。自分がどうすれば気持ち良くなれるのかは知っている
。それが、志貴の好んだ愛撫をそっくりなぞっていることにも気付いていた。いや、志貴が好むからこそシオンにはそれが官能なのだ。
「んんんっ……」
 我慢できない。せめて自室に戻って、なんて己の考えも聞き入れない。
「ふぁうっ……」
 押し殺した、小さな絶頂感。それでも、今はそれに溺れたい。一夜の迷いを沈めたい。
 背筋を駆け上り、脳天と女の園に脈打つような官能。
 あと少し。もうちょっとだけ。
 志貴が腰の動きを激しくしながら夢中になって揉んでくれた胸に、爪痕を刻む。その痛みが、最後のスイッチ。
「んぅっ……あぁあっ!」
 破裂したオーガズム。抑えに抑えて、それでも弾けるような快感。ふわりと、浮き上がった感覚。後に倒れ込んで、そのまま倒れて。
「シオン?」
 想うあまりに志貴の声を幻聴したのか。
 覚醒したシオンは、扉にもたれていたはずの自分が床に寝ているのを見つける。
 ドアが開いていて、志貴の部屋の中に倒れていた。
「志貴っ!?」
 薄闇の中、覗き込んでいるのは紛れもなく志貴。己が何をしていたのか、今さらながらシオンは思い出す。
 わずかの間、燃えるような羞恥に息が詰まった。
「志貴、いきなりドアを開けるなんてっ……」
 言いながら、自分がまだ片手をショーツに中に入れたままなのに気付く。寝間着の前が捲れ上がって乳房を晒しているのを意識する。全身が熱く火照っているのを痛いほどに感じる。
「いや、ごめんっ……って、でもシオン、一体こんなところで何を……」
「……志貴、私は秋葉に滞在を許されている身なのです、この屋敷にいることに何の不思議もないでしょうっ? たまたま志貴の部屋の前にいることにも確率的に少しもおかしなことではありませんっ、それより、いきなり志貴がああやって扉を開けるのが間違っているのです、ですから何も私に非は無いのです、謝るのは志貴の方です、何故いきなりあんなことをしたのか説明してくださいっ、その上で謝罪を求めます……」
 せっかく自覚した衣服の乱れも不都合な手の配置も正す間を取れず、ひたすらに言葉を発した。
「シオン?」
 再び名を呼ばれて、一気に我に返る。
 その声が、志貴のものではなかったから。
「シオン、確かにいつまで滞在してくださっても結構ですけども。夜遅くなって部屋をでることについては控えて頂かなければ困ります」
「秋葉……」
 何故、秋葉がここにいるのか。今の痴態を見られたって羞恥のせいで、まともに頭が回らない。
「まして、兄さんの部屋の前で兄さんの名を呼びながら自慰に耽るなんてこと。どういう積もりなのです」
 何一つ考えられない。七つの分割思考どころか、ただの一つだって考えられない。死ねる。恥ずかしくて死ねる。羞恥で死ねる。恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。頭の中がそれだけでいっぱい、動かない頭では秋葉の口調が特段に責める調子ではないことにも気づけなかった。
「扉の向うで何をしていたのですか、シオン」
「それは……」
 判っているに違いないことを訊く秋葉に、シオンは口ごもる。しかし、
「知っていることを訊くなんて意地悪だぞ、秋葉」
 助けは、志貴が出してくれた。
「兄さんっ?」
 何故そんなことを、と非難するような秋葉の調子は不自然なものを含んでいる。
「秋葉も同じことしてたじゃないか、扉のこちらで」
「兄さんっ!!」
 激昂したようで、しかし、硬直する秋葉。
「……秋葉?」
 同じことをしていた、の意味をシオンが少しずつ解する。ここに来てやっと、明らかに秋葉が部屋の中に居たことにシオンは気付いた。その意味にも。
「ほら、秋葉はどうして今ここに居るのかな?」
 そっと後から抱くようにしながら、志貴が尋ねている。
「そ、それは……当主として住人の規律を保たなければならないからですっ」
「ふーん、本来なら出歩いちゃいけない時間に俺の部屋に来たのはそう言う訳なんだ?」
「当たり前です。ほら、その甲斐があったではありませんかっ」
 見れば、秋葉もまた夜着姿だ。夜に男性の部屋を訪れるには、相応しいとも相応しく無いとも言える格好である。
「じゃあ、用事は済んだかな?」
「いいえっ……もう、兄さん、意地悪です」
 間の悪いこと、この上無し。秋葉がここにいる理由に、シオンはやっと思い当たる。自分と同じなのだ。
 別の恥じらいに駆られながら、シオンは黙って引き下がろうとした。しかし、出て行くのを秋葉が止める。
「お待ちなさい、シオン。そのままで帰すわけには行きません」
 当惑するシオンに向かって、更に続ける。
「服を脱ぎなさい」
「あ、秋葉?」
 驚いた声は、志貴とシオンが唱和した。
 その有無を言わせない声色に、やがてシオンは服従する。
 ゆっくりと寝間着を脱ぐ。志貴になら裸体は既に見せている、だから平気ってことはないとしても。汗に湿って体に貼り付いているから、脱いだ方が心地良いかも知れない。
 窓から僅かに入る月明かりに、紫の髪に飾られて白くガラスめいた肌が浮き立つ。羞じらって胸を両腕で覆いながら、まだシオンは秋葉の意図が判らない。
「全部です、シオン」
 残るのは、自慰の愛液に濡れたショーツばかり。ためらいながら、それも脱ぎ捨てた。
「ふふふ……」
 当惑するシオンの前で、秋葉も夜着を脱いでしまった。肌着が無く、それだけで一糸まとわぬ姿になる。
「良いでしょう? 兄さん。早く私一人を選んで下さらない兄さんの責任です、ちゃんと果たして下さいね?」
 志貴にしなだれかかって、囁く。
「……秋葉?」
 言っていることを、ようやくシオンは理解する。まるで、想像もしなかったこと。

「ん……ふぁうっ……」
 志貴の男性器が、秋葉を貫いている。シオンの目と鼻の先、事実、秋葉の蜜の匂いが感じられるほどの近くだ。ベッドの端に腰掛けた志貴に、背を向けて秋葉が跨り、自ら腰を動かしている。
 こんなふうに上になるのは、シオンにはまだ経験のない交わり方だ。自分がそうしている姿をイメージして、ひどく淫らに思えて、羞恥と官能に震える思い。
 その二人の前にひざまずいて、シオンは唇を寄せている。秋葉の雫が滴る志貴の男根を舐める。抜き差しされるごとに新たに濡れるから、その度に舐め取る。袋を揉み、そちらにも舌を這わす。
「ひうっ……ふあ……」
 秋葉のお腹に手を当てて、クリトリスを指先で弄る。
 降ってくる秋葉の嬌声に、官能の声に、シオンは羨望する。目の前で交接を見せつけられながら、その快感に奉仕しているのだ。嫉妬に身が焼ける思いがする。さっき慰めた女が却って疼く。だから、早く逝かせてやりたくて愛撫に熱が篭もる。
「ん……にいさんっ……」
 両手を胸に当て、鋭敏な秋葉の乳首を休み無く志貴は責める。控えめなバストだが、鋭敏さは人一倍だし、繰り返す志貴との営みですっかり官能が花開いていた。白い裸身が薄赤く上気している。汗が浮き、小さな灯りの光を映じて浮かび上がっている。振り乱された黒髪があちらこちらと貼り付いて、裸体を彩っている。
「えっちだな、秋葉……」
 意味があっての言葉でもない、こんな風に囁くと秋葉が乱れるのを知っているだけのこと。
「兄さんですっ、えっちなのはっ……」
 こちらも、意味のない返し。
 時折、志貴は乳首に塗りつけるために愛液を指に掬う。そこにシオンは吸い付いて捕まえ、しゃぶり回す。我慢できず片手を己の脚の間にやり、秋葉の腰使いにリズムを合わせて、沈めた指を往復させる。
「はふっ……」
 ただでさえ秋葉の中は熱くて狭い上に、互いの体に馴染んで、意図せずとも巧みになっている。秋葉は自分が気持ち良いように腰を使うだけ、しかしそれが志貴にも絶妙の刺激なのだ。その上に睾丸を揉みたてられ裏筋を舐められして、その快感と言ったら。ずっとこんなことされてちゃ、とても保たない。でも、秋葉の乱れっぷりも激しく、それを嬉しく思う。秋葉をめろめろに感じさせるのは楽しい。まだ逝くのはもったいなくて、耐えようとしてしまう。
「んふんっ……あふっ」
「ほら、シオンが呆れてるぞ、あんまり秋葉がえっちだから」
「そんなっ……」
 恥じ入ったように秋葉が腰の上下を遅める。だけど、代わりに大きく回すようにしてしまう。逝きそうになるたびに、これを繰り返している。秋葉も、たっぷりと楽しもうとしていた。
「ひゃっ、ひぅっ……しおんっ……」
 それは許さない、とばかりにシオンがクリトリスに舌を這わせた。鋭い快感に気を遣りかけて、貪るように腰を振る。でもそうするとシオンは付いていけず、クリトリスが取り残される。仕方なく、激しくなる腰の振り。そんな周期を、何度か繰り返している。
「志貴……」
 ぐちゅぐちゅ、シオンは己の指で女を穿つ。秋葉ほど濡れやすくはないのに、どろどろだった。目の前で見せられているだけ快感は激しく、だけど疼きも高まる。
 自分も入れて欲しい。自分も志貴のもので責められたい。そんな羨望から、シオンは志貴を真似て秋葉に囁く。
「いやらしいですね、秋葉」
「ちがい……ますっ」
 やっぱり返事は単なる反射。
 また耐えきれなくなりかけて、志貴は秋葉を強く抱き締めた。秋葉が腰を使えなくなって、少しは楽に腹の奥で沸き立つ射精感を堪えられる
「あん……」
 その代わり、秋葉は生殺し。もぞもぞと腰を揺すり、締め付けては志貴を感じようとする。志貴だって当然、気持ち良くなりたいのだから、我慢比べだ。欲情と快楽を煽り合い、与え合い、貪り合う。
 すかさず、シオンがクンニを始める。繋がっているあたりを舐め回して、二人ともに感じさせる。
「くんっ」
 乳首を弄り倒しながら、秋葉の首の後に舌を這わす。ここも汗まみれ、塩っぽい味がする。シャンプーの匂いに秋葉の匂いが混ざって、鼻孔を満たす。肺を満たす。
「にいさんっ……放して……」
 舐められるのは気持ち良い。志貴のものを受け入れているだけでも悦びに弾けそう。でも、やっぱり奥まで突かれたい。差し貫かれて逝きたいのだ。なのに志貴は放してくれず、シオンは輪を掛けて激しく舐めてくる。蜜を吸われる。もう、クリトリスだけで逝ってしまいそう。
「逝きたい?」
 自分も死ぬ思いで耐えながら、志貴は尋ねる。
「はい……」
「えっちだな、秋葉?」
「ぁん……」
 秋葉の中に吸い出されようとしてるみたいだ。痙攣しそうなほど臍の下に力を込めて、堪える。
「ほら、えっちなのは誰?」
「あぁんっ……」
 ほとんど毎度の儀式。ある意味では勝負。先に堪えきれなくなるはどちらか。
 ぎゅう、っと抱き締められて、それは嬉しいけど、もどかしい。もどかしく腰を揺することしかできなくて、逞しい志貴のものを存分に味わえない。痛いほど尖った乳首への刺激がぴりぴりと駆けめぐる。
「秋葉っ……」
 早く逝かせてあげようと、一心にシオンは秋葉を舐め続ける。志貴の袋を可愛がり、自分の孔を慰めながら。嫉妬はしながらも、恨んではいない。ただ、秋葉は志貴に突かれて達したいのだ。
 ずん、と志貴に下から突き上げられて、秋葉は蕩けた。
「あふっ……」
 でも、それまで。
「ああんっ……動いて、にいさん……」
 ずん。
 秋葉が、啼く。
「ほら、えっちなのは?」
「んんっ……あきは、ですっ……」
 絶頂を求める躰の求めに とうとう恥じらいが屈した。こんなこと口にすると、自己催眠みたいに淫らになってしまう。
 志貴は抱擁を緩め、足を踏ん張って、辛い姿勢ながらも突き上げてやる。短いストロークで、そのぶん激しく。秋葉も小さく腰を振り動かし、シオンはクリトリスを啄み続ける。
「ふうぅっ……あふっ、んぁあっ……」
 秋葉に共鳴して、志貴の性感も一息に高まった。秋葉の膣は志貴を搾り取ろうとしてるみたいで突くのも戻すのもまた一段上の快感、だけど締め付けられすぎて吐き出してやれない。
「あぅ、くっ」
 やっと、シオンの手に刺激された袋の方から押されたみたいに、抵抗を破って噴出していく。
「あぁ……にい、さ……」
 びくっ、と脈動を志貴が覚えたとき、合わせたように秋葉も体を脈打たせた。
 びくんびくんっ。続く吐精の快感、そこへ秋葉は背を仰け反らせる。根元から先端まで、隈無く柔らかな粘膜に撫でさすられている気がする。志貴の精を、一滴残らず飲み乾してやろうとしてる。
「あき、はっ」
 びゅく、びゅくん、と際限なく吐精している。多量の精液が細い管を通って秋葉の中に注がれていく。
「ひぅ、ふぁあ……あふぅっ……」
 動けず、ただ絶頂感に酔うばかりの秋葉を、休み無くシオンは舐め続ける。
 そんな秋葉の思考はホワイトアウト。頭の中に快感だけ詰まっているみたい。お腹の奥に感じる志貴の熱さと、刺激されっぱなしの膣の入口。お陰でいつまでも陶酔から戻ってこないみたい。
「えっちな秋葉、気持ち良かった?」
「ん……はい……」
 先に覚醒した志貴の問いに、頭が白くなったままの秋葉が返事はしていた。
「えっちな秋葉は、いやらしいことが大好きだからなあ」
「んんっ、悪いのは兄さんです……」
 このフレーズは、意識が胡乱でも出るらしい。
「でも、えっちなのは秋葉でしょ。ほら、ちゃんとそう言って」
「んんんっ……えっちなのは秋葉です……」
 何を言わされているのかは、あまり意識になかった。
 ぐったりと全身が弛緩した秋葉をベッドに横たえてやり、口付ける。仙郷に居るまま、秋葉はちゃんと舌を絡め返し、吸い返してくる。
「志貴……」
 小さく名を呼んだシオンの眼は、欲情に濡れていた。揃って絶頂した姿を眼前に見せられて、また疼きを強くした。
「シオン」
 名を呼び返し、抱き寄せて、覆い被さる。たった今、秋葉と吸い合っていた唇を今度はシオンに与えてやる。秋葉よりは肉感的なシオンの唇が、しっかりと志貴に重なる。比べれば巧みとは言えない、だけど熱意なら変わらない舌の動き。
 ようやく交わした唇に、シオンは軽く達したほどの悦びを得た。息を継ぐ間も惜しんで、濃厚にキスを続ける。口に残っていた秋葉の蜜の味が、志貴の唾で流されていく。嬉々として呑み込む。何処かに移ろうとする志貴の唇を追って、もっと口付けをとねだる。
「ずるいですよシオン、人がぼんやりしてる間に」
 ようやく覚醒した秋葉が、耳元に囁いた。本気で言う様子ではなかったが、それでもシオンは硬直する。
「こらこら、今度はシオンの番だぞ?」
 志貴が、たしなめながらシオンの胸に手をあてた。
「あ……」
 さっき、志貴の手が恋しくて震えた胸。触れられ、ゆるゆると揉まれて、今度は官能に震える。間に顔を埋めて谷間の底を舐められて、ほんとに志貴に可愛がられてるって実感する。
「もう、吸血鬼は胸が大きくなる決まりでもあるのですか」
 志貴は秋葉の胸を恥ずかしいぐらい熱心に愛してくれるのだし、そんなこと問題ではない。それでも、これだけ豊かな乳房を見せつけられては羨ましくもなる。綺麗で魅惑的だと思う素直さも持ち合わせているし、志貴がそれに耽溺する姿を眼にしては、なおさらだ。
「ほら、シオン。兄さんの代わりをちゃんと果たして下さい」

「んっ……あぁ……」
「んぁ……うふっ」
 女二人の喘ぎが暗い部屋に広がる。仰向けのシオンの顔に跨り、また秋葉は自分自身を舐めさせている。
 秋葉の蜜壺から、さっき志貴に注がれた精が秋葉の蜜と混ざって垂れ落ちてくる。シオンは、それを夢中で啜っていた。匂いで、味で、志貴を感じていた。脚を持ち上げて大胆に広げさせられ、恥ずかしい部分を余すことなく晒してる。そんな羞恥を忘れようとするみたいに、シオンは秋葉への愛撫に没頭していた。
 自分を舐めさせる代わりに、秋葉もシオンを舐めてやっている。あられもなく広げられた脚の間に顔を埋めて、はしたなく濡れた女の泉を飲み乾さんばかりに。クリトリスを口にして、舌で片時も休まずしゃぶり続ける。谷間の左右を繰り返し指で辿ってやる。そのくせ、中には潜ろうとしない。鋭い快感と掻痒感でシオンを悶えさせる。
 そして志貴は、シオンのお尻に舌を這わせていた。
「あんっ、そこはっ……」
 そんな風に最初は抵抗したが、落ちるのに時間はかからなかった。前を秋葉に責められっぱなしでは、体に力も入らない。
「シオンったら、そんな恥ずかしいところまで感じるのですね」
 志貴が秘所に指を入れようとしたのを止めたのは秋葉で、二人して膣のいりぐちを指で弄るばかり。
「秋葉……」
 羞じらいながら、やっと少しシオンも逆襲を果たす。
「ひゃんっ」
 シオンもまた、秋葉のお尻の孔を突っついたのだ。秋葉の蜜でとろとろに濡らした指先を小さな窄まりに押し当て、揺らす。
「あっ、だめ……」
「おや、秋葉も感じるのですか、こんな恥ずかしいところが」
 しかし、こんな攻勢も短く終わる。同じように、志貴に指先を入れられてしまったのだ。
「ひゅあんっ」
 意外に抵抗無く入り込み、回転されると、シオンは異物感に悶える。そこに二人がかりのクンニを受けて、不慣れなお尻の孔の感覚も甘い痺れに代わってしまった。
 そして、腹の奥の疼きが強くなる。
「志貴……もう、ください……」
 秋葉を責めることもできず、弱々しくねだる。
「何を兄さんに欲しがっているのですか? シオン」
「志貴の……ぁっ」
「兄さんの?」
「んう……」
 志貴がさかんにお尻に入れた指を動かすものだから、まともに言葉が出せない。
「言わないと判らないですよ、シオン」
「志貴の、男性器ですっ」
 告げて、また熱い息を吐く。
「兄さんの、おちんちんが欲しいんですか?」
「はい……」
「ふふ、でも、外してプレゼントするわけには行きませんね?」
「ははは、意地悪だなあ、秋葉は」
 シオンが志貴を欲しているのと同じぐらい、志貴もシオンを欲している。起きあがって、隆々と勃起したペニスをシオンにあてがってやる。
「駄目です」
 それを秋葉が握ってしまい、先端に唇を付ける。
「ほら、シオン、はっきり何をどうして欲しいのか説明しなさい。そうしないと私が兄さんのを飲んでしまいますよ?」
「そんなっ……」
 まだためらうシオンに、秋葉は思い切り音を立てて志貴のものをしゃぶり始める。
「ふふ、素敵……こんなに、かちかち」
 そうしながらも、シオンの膣口をくすぐって欲情を掻き立てるのは止めない。
「あうっ……」
 秋葉の舌使いに、たまらず志貴も声を漏らした。
「えっちだからなあ、秋葉は。シオンに取られるのは許さないつもりかな」
「うふ、せっかく何をどうして欲しいのか訊いてあげていますのに、応えないからですよ」
「んんっ……言いますっ」
 耐えきれず、シオンが啼く。
「志貴のペニスを、私のヴァギナに入れて……下さい」
「いやらしいですね、シオンは」
「んんっ……」
「えっちだなあ、シオンも」
 もっと卑猥な言葉を使わせてみたいのだが、志貴にしても焦れている。
「あんっ……」
「ふふ、しょうがないですね、今回はゆずって差し上げます。代わりに、しっかり私も気持ち良くして下さいね?」
 言うと秋葉は、なごり惜しむようにもう一度だけ志貴に舌を這わせた。
「はふぅっ……」
 ずぶりと刺し貫かれて、シオンは歓喜の声をあげた。仰向けで脚を半ば担ぎ上げられ、志貴の熱く堅いものが体の奥まで入り込んでくる。
「んふんっ」
 秋葉もまた、蜜声を漏らす。シオンがお尻を捕まえて、しっかりと秘所を舐めている。
 ゆっくり志貴が動き始め、秋葉は体を起こして志貴に抱き付く格好になる。
「くぅっ」
 秋葉の顔を見ながらなのに、イチモツはシオンに入れている。秋葉に比べれば肉付きの良い体をしたシオンらしく、柔らかい媚肉がみっちりと志貴を掴んでくる。
 やっぱり、違うんだな。
 無意識に志貴は、さっきの秋葉の中と感触を比べていた。柔らかさ、締まりの強さや位置。絡み付いてくるような襞の感じ。熱さ、潤い。ひとつひとつ、確かに違う。同じなのは、身を融かすような快感だけ。
「兄さんっ」
 シオンの奥まで入って、しばし止まる。またちょっとした我慢比べだが、シオンはもう抵抗しなかった。お尻を揺すってねだり、秘所の肉を蠢かして誘い、秋葉の中を責める指にも熱を入れた。
「志貴……」
 大胆に腰を揺するシオンに今回は志貴が降参する。秘肉にペニスを打ち込み、リズム良く志貴は腰を振る。意識を強くしないと僅かの間に放ってしまいそう。持ち上げた脚をしっかりと掴んで、本腰を入れる。
「もう、兄さんっ」
 そんな志貴に、秋葉はキスを求めた。シオンに夢中になられるのは悔しいのだ。
「ん……」
 志貴の首に抱き付いて、有無を言わせず秋葉は唇を重ねる。ちゃんと応えて貰えた。
 舌が絡む。押し合う。互いの口の中を、届く限り訪れ合う。意識は散るのに官能は増して、弾けそうな感覚が強まる。
「あぁっ」
 シオンにお尻を襲われて、秋葉が喘ぐ。キスに気を取られて志貴が腰を止めていたから、シオンに余裕が出来ていたのだ。逃れようにも、腕で絡み付かれて果たせない。お尻の孔に簡単に指を入れられてしまった、それぐらい充分に秋葉は雫を零していた。
 再び、志貴が突き始める。
「ふぁんっ」
 秋葉が手を下ろして、繋がっているあたりを弄る。シオンの小さな突起を探り当てると、くりくりと転がすように可愛がる。
 志貴は秋葉の背中を撫でまわした。
「はふっ……ぅん……」
「ひっ、うぁぁ……」
 ずっと、舌が痛くなるほど秋葉を舐めているシオンは、それでも休もうとはしない。口のまわりは秋葉の蜜と滴った志貴の精とでどろどろ。
「兄さん、私とシオンとだったら、どちらが気持ち良いですか?」
 とんでもないことを、志貴が酷く困ると知りつつ尋ねてみる。三人一緒に絡むなんて不埒な行為に誘ったのは秋葉だし、シオンに恨みがあるわけでもない。淫らな遊びを楽しんでもいる。それでも独占欲も嫉妬も強い方なのだ、自分だと言って欲しいに決まっていた。
 賢明にも返事は避け、代わりに志貴は再び唇を吸う。シオンの片脚を秋葉に預け、乳首を指で転がしてやる。誰かが何かするたび、巡り巡って三人ともに刺激が及ぶ。
 ぎちぎちと搾り取られているような錯覚がする秋葉の中より、いくらかシオンは柔らかい。そのぶん、ねっとり舐め回されているみたい。
 秋葉相手の交わりが真っ向勝負の打ち合いなら、シオン相手はケレン搦め手化かし合い。どちらが気持ち良い、なんて馬鹿げている。比べるなんて、贅沢と不道徳の極み。
「ん……」
 志貴にしがみつきながら、さっき預けられたシオンの脚を秋葉は眺めた。引き締って、だけど柔らかな肉付きの長い脚。いつもならニーソックスで隠された肌は、灯りのない部屋でも仄白く浮び立っている。
 快感に霞む頭で、秋葉は以前に志貴にされたことを思い出す。
 もう二度としないで下さい、と本気で怒ったけど、思い出すと何だかドキドキ。
 あれ、シオンにもしてあげよう。そう思うと、秋葉は触り心地の良い肌をなぞってシオンの足首に至る。その先に手を出すと、弾けたように足は逃げた。
 もういちど捕まえて、今度は逃がさない。足の裏に指を匍わせてやる。
「ひゃふんっ?」
 反応は上々。
「覚悟してくださいね? シオン」
 もう一方の脚も志貴から奪って、同じ体勢。逃がさないように捕まえて、足の裏を思い切りコチョコチョしてやる。
「ひっ、ふぁうっ、あふふっ」
 笑いと艶声の混ざったようなシオンの悲鳴。正体の判らぬ感触。足の裏と性器と、神経を直結したみたいに響き合った。
「あはぅっ」
 お陰で締め付けがきつくなり、志貴も悲鳴。
 それでも秋葉は手を休めず、ますます擽りの手を休めない。性感と混じり合った耐え難い足裏の感触が、すっかり蕩けていたシオンには未分化の感応。
「くはっ、……しおんっ」
 痙攣でも起こすんじゃって怖いぐらい、シオンは締め付けた。もう耐えようとなんてできず、志貴は腰を振った。
「口をお留守にしているお仕置きです」
 ますます秋葉は擽りの指を激しくするばかり。あまりの感覚に、シオンは呼吸も出来かねていた。
 ひくひくと蠕動するようなシオンの下の口に食らい付かれ、志貴はスパート。秋葉を抱き締めて、首筋に噛み付くように口付けて、ひたすらにシオンを突いた。
「ひぅ、ふぁぅっ、ひぁぁっ……」
 苦悶するようなシオンの声。耳にしながら、志貴はまた射精が迫るのを知る。よくこれだけ保ったものだ。とろとろに柔らかいシオンの中、なのに入れているうちに貪り尽くされていそう。そんな不穏なイメージも、愉悦を損ねはしなかった。
 シオンを責めているのに、胸を満たすのは抱き締めた秋葉の髪の匂い。背徳の官能。
「くぁ……しおん、いくっ……」
「ひやぁっ、んんっ……」
 弾けた。破裂した。締めつけを破って、噴出させた。シオンの体に、たっぷりと精を注ぐ。どくん、どくん。頭がクラクラする。目の前が白くなる。
 秋葉の魔の手から逃げようと暴れるシオンの足、それでも捕まえて逃さない。くすぐったくて変になりそうなのに、震えるように快感。
 どくん、どくん。もう一頻り、射精は続いた。
「くはっ……」

 朦朧とした意識が幾分晴れると、志貴は仰向けで秋葉と抱き合っていた。
「兄さん?」
 まだまだ胡乱な頭で、志貴は応える。
「秋葉?」
 耳に口を寄せ、秋葉は笑う。
「これで終わりなんて仰いませんよね、兄さん?」
「んん?」
 言うだけ言って、流石に大人しくなっていた志貴のものに手を伸ばす。
「いや、秋葉、ちょっと休ませ……ひゃうっ」
 言い終わらぬうちに、シオンに口を塞がれる。いや、顔を滑らかな膨らみに包まれてしまった。
「もう、そんなに見せつけなくても」
 ちょっと拗ねた様子で、腹癒せのように秋葉は志貴を咥えてしまう。
「うぐ……」
 穂先を唇に包み、舌がぐるぐると動き回る。志貴の中に残っている精を僅かでも逃さないとばかり、吸い付く。女二人の液と混ざって泡立った精を、シャフト全体舐め回して味わう。射精した直後のペニスをしゃぶられて、くすぐったい快感に志貴は呻く。その熱心さに、ほだされながらも怯える
「ほら、やっぱり一番いやらしいのは兄さんですね。こんなに節操なく何度も」
「ええ、やはり志貴です。秋葉ではありませんし、まして、私であるなどということは決して。それに、志貴がまだまだ可能なのは過去のデータからも予測からも明らかです」
 ちょっと待て、という志貴の苦情もシオンの胸から外には漏れない。
「さっきみたいに、シオンの胸になんか出してしまわれるから辛くなるんですよ、兄さん?」
「ええ、髪に出したり口に出したりばっかりして、なかなか入れて下さらない志貴が悪いのです。ちゃんといつもと同じだけは勤めを果たして下さることを求めます。それが当然です、いえ、こんな不埒な行為に巻き込んだのは志貴なのですから、むしろいつも以上に働いてくださるのが正等というものでしょう……」
 エーテライトやらなんらやで無理矢理、という志貴の訴えは、やっぱり届かない。
「初めに言いましたでしょう? 一人を選ばない兄さんの責任なんです、ちゃんと二人分、果たして下さいね?」

 志貴が責任を果たしたか否か。
 その後の話は語るまでも無いだろう。
 何故なら、おそらくは誰もが想像する通りの結末なのだから。

 

/DUTY.

 


 

感想とかリクエストとかは下のフォームや掲示板でお願いします。

お名前(省略可)
E-mail(省略可)
5段階評価
A / B / C / D / 評価せず
実用度は如何かw
使った / 使えそう / 無理 / 内緒
メッセージ(省略可)


 

タナトスの祭儀 会場に戻る