B−Ash.様
わたしが音楽を聴いているということを知ると、この時はみんなの反応はバラバラだった。シエルは驚いていたけれど妹はどんな曲を聴いているのですかと聞いてきたし、琥珀はそれは良いことですねと言ってくれた。ちなみに妹はわたしが聞いているバンドの名前を羅列していくと顔を顰めた。どうやら洋楽はあんまり好みでないらしい。わたしは日本語より歌詞の内容が理解しやすいから好きだけど。
昨日聞いていたのは、妹から借りたスウィンギング・ポプシクルというギターポップのバンドだった。途中から意識が無くなっててほとんどBGMとして聞いていたけど、前半は真面目に聞いていたし、聞き応えのある部類だからまた今度じっくり聞いてみよう。
一応耳に残った曲はある。今から思い返すのはその歌詞の一部である。
どんなに君を縛り付けても魂は抜け落ちた。
どうしてあの空見上げたのか。建てずの塔。
建てずの塔。これは気持ちのことなんじゃないかなーと思う。つまり彼女は自分の気持ちを伝えずにいたために、彼が何処かへと消えてしまったのだ。互いに通じていた何かさえごっそりと抜け落ちてしまったのだ。
好きなんて言うただそれだけよりも好きという感情が伝わってきそうな歌詞で、同時に切なさがこみ上げてくる。きっとわたしも踏み出す事ができなかったからこうなるんじゃないか。そうなったらもう、好きという磁力さえ役に立たない。砂鉄の塔は建たない。
訳もなく泣きたくなったのを覚えている。
そんな焦燥感からかどうかは分からないけど、朱鷺恵の提案にはあっさりと同意する覚悟ができた。
困り果てる志貴は見ていて楽しい。どうやら志貴の方も朱鷺恵にまだ気が残っているらしくて、二人で交互に話しかけてみると徐々にしどろもどろになっいていく。こんな初々しい反応を見るのは初めてかもしれない。なんかもう見てて可愛い。
わたしは朱鷺恵に言われた通り、時々体を引っ付けたりしながら志貴と話す。ひっつく度に志貴は声なき声をあげて身を竦めるんだけど、イヤでもキライでもないらしくて特にこれといった反発はしてこなかった。朱鷺恵が言うには、エロいことで反発が無いということは、受け入れられてると思っていいらしい。ちょっと極端な気もするけど、トギマギとしている志貴が見れるだけでも充分。いやわたし一人なら多分なんてことは無かったんだろうけど、流石に左右からの攻撃はどうにもならないみたい。
「ちょ、ちょっとストップ」
志貴がやってきてから→朱鷺恵と志貴が付き合っていた頃の話の後半部分→現在の屋敷での生活→志貴と朱鷺恵の父親との話→わたしとの生活。と話が進む間の時間をかけてようやく慣れたのか、この場にて初めて志貴から声が上がる「どうしたの?」。二人で尋ねると、志貴は虚空に向かって待ったをかけながらわたしの方へと向く。
「……単刀直入に言うと、朱鷺恵さんに何を吹き込まれた」
「色々」
「いやお前、色々って……不安しか過らないんだけど」
「それじゃ例えば、こういうこととか」
言って、ほっぺたにちゅー。驚いた志貴はわたしを剥して朱鷺恵に向く。
「朱鷺恵さん、一体何がしたいんですかっ!?」
「ふふ、何だろうね」
「いやもう、えーと……アルクェイドにこんな、その、あーもう! とにかく何を企んでるか言ってください!」
恥ずかしくて言えないのか顔を真っ赤にして誤魔化す志貴。これも朱鷺恵の言うとおりだなぁと思いながら見ていると、志貴からひっと悲鳴。朱鷺恵が首筋にキスをしていた。それちょっとずるくない?
「わたしはただアルクェイドのお手伝いをしてるだけ」
悪戯っぽく言った朱鷺恵が志貴から体を離す。そしてちょっと距離を置いた場所で、じっと志貴のことを見つめ始める。志貴は金縛りにあったみたいに目が離せずに居る。けれど良くない予感だけはするのか、体はそわそわと浮き足立っていた。
「ね、志貴くん。わたしのことはまだ好き?」
……うっわー、答えづらいことをさらりと質問しちゃった。
質問を受けた志貴ははいぃい!? と素っ頓狂な声を上げてから、ひっついてるわたしが分かるくらいに冷や汗をかき始める。っていうことは、志貴もやっぱり朱鷺恵に気が残っているんだろう。なんか釈然としないなーと思っていると、志貴が小さいボリュームの声を絞り出す。
「……そ、その。この状況で尋ねられて、困るくらいには」
「良かった。わたしもそのくらいは好き」
志貴の体温が上がり、冷や汗がさらに吹き出る。これはこれで見てて楽しいけれど、わたしの目の前でそんな確認をするなんて朱鷺恵は何がしたいのだろうか。流石にちょっとむっとくるものがある。
そんなわたしの心情を察するように、けれど予め決めていた手はず通りなのだろう。朱鷺恵はふふっと笑うと、今度はわたしに視線を向ける。
「それじゃあ、アルクェイドのことはどれだけ好き?」
……今までで一番大きい動揺が志貴に走る。
それが良い反応なのか悪い反応なのか、ちょっと判別がつかなくてわたしも困る。
「────言わなくちゃ、ダメですか?」
「それはアルクェイドに聞くこと」
そこで志貴がようやくわたしの方を向く。ギチギチと音を立ててるように傾けると、目が合う。
わたしは今どんな顔をしているだろう。
ただ少なくとも、志貴が目を離したくても話せなくなる程度の顔はしているらしい。
「聞かせて」
「どうしても?」
「朱鷺恵には言えるのに、どうしてわたしには言わないのよ」
「そ、その……勝手が違うというか、なんというか」
「もう、なんなのよ! 志貴はわたしより朱鷺恵の方が好きだって言うの?」
「そんなこと……ああもう、分かった。白状する。この状況でそんなこと尋ねられたらどうにかなっちまいそうなくらい、アルクェイドのことが好きだよ。その……朱鷺恵さんには悪いけど」
悪いけど。っていうことは、少なくともわたし>朱鷺恵?
そう思った瞬間、心から重力が消えたような気がした。
「……それホント?」
「嘘言ったら分かるだろ、お前も朱鷺恵さんも」
朱鷺恵も頷く。っていうことは本当に本当らしい。
────なんか、うん。うれしい。すごくうれしい。突然頭の中で温泉が噴出してそれを止めようとして、簡単に止められるんだけれども噴出したことが嬉しくて中々止められない、そんな気分。少なくとも胸の内に蟠っていたドロドロはさらさらな砂みたいに動き始める。胸もちょっとドキドキし始める。
志貴は耳も首も真っ赤にして視線を外している。二人だけの時なら「愛してる」とか「好きだ」なんて台詞はしょっちゅう言うのに、もう一人居るだけで言いにくいらしい。それともわたしと朱鷺恵だからだろうか。一応、元恋人と現恋人に挟まれてるわけだし。っていうことは、志貴は朱鷺恵に気を使って直接的な表現は避けてて、わたしにもっと気を使ってしまって、けれど慣れないことをしてるからどうにもならなくなってる?
多分そうだという確信があった。うん、やっぱり志貴のそういうところが好きだ。分かるまでちょっとかかるけれど、分かったときはもう顔に全然力が入らないくらい、うれしい。
「えへへへへ〜〜〜、しぃーきぃー」
「な……なんだよ」
自然と出た猫撫で声で志貴にひっつく。
「今よアルクェイド。ごー♪」
「ごー?」
「ご……ごー!」
予め打ち合わせしておいた通り、わたしは朱鷺恵の合図を受けて、志貴を押し倒した。
自然、志貴と間近で向かい合う。瞳と眸がぶつかっちゃいそうな距離で志貴が下に、わたしが上に。いつかこんな状況になった事があるような気がしないでもないけどそれはきっと別ルートだろう。だって、一度体験したことならこんなにドキドキしたりはしない。
いきなり押し倒された志貴は、何が起こったのか心底理解できないと言いたそうな呆けた顔でわたしを見上げている。反対に、わたしは押し倒しておきながらちょっと困ったままで志貴のことを見下ろしてしまう。いざこうやって間近に迫ってみると、やっぱりわたしは何をすればいいのか分からなくなってしまった。
けれど今日は困ってばかりのわたしじゃない。心強い味方がいるのだ。
「ど……どうすればいいかな?」
「そうね。まずは抱きつくといいわ」
何時の間にか近くに来た朱鷺恵と一緒に志貴に抱きつく。むぎゅ。二人の時より志貴の占有率は低いんだけど、志貴から帰ってくる返事は「うぁ」。志貴の困り方は跳ね上がっている。
上せてしまったように真っ赤な志貴の、ドクドクと強く胸を打つ鼓動が感じられてわたしも変な気分。自分のものとは違う別の体温が、今日は二つもある。わたしのドキドキもいつも以上。
「志貴くんに抱きしめられた時、気持ちよかったでしょ?」
朱鷺恵が志貴の顔を挟んで聞いてくる。見れば朱鷺恵もちょっと頬が赤い。
「うん。気持ちよかったけど……それ以上に気分がどうにかなりそうだった」
「それはね、男の子も同じなの。まずはドキドキさせてあげて、えっちなことはそれからしてたでしょ」
なるほど。志貴が最初にぎゅーっと抱きしめるのにはそういう意味があったのか。そして今は立場が逆で、わたしから仕掛ける時も同じ風にやればいい、と。
そのうちに朱鷺恵から指示が来る。指を下に下げていき、たどり着いたのは乳房。うわもしかしてそういうこと? でも、それはとってもいいかもしれない。
「ちょ、朱鷺恵さん! これ一体どういうことだよっ!?」
ようやく搾り出すように声をあげる志貴。けれど、そんな質問はもう今更だと思う。
朱鷺恵はうふふと笑うと、志貴の耳元に口を近づける。
「アルクェイドちゃんがね。志貴君の気持ちを知りたいんだって」
「そ、それなら……さっき言ったじゃないか!」
「あんなはぐらかし方じゃダメ。それに、言葉じゃ伝わらないものもあるでしょ」
「だからって、こんな……」
「わたしたちもやったじゃない。今度は、志貴君とアルクェイドちゃんの番。わたしはそのお手伝いよ」
つまりそういうことだった。
朱鷺恵が言うには、セックスで確認することはズレを生むだけなんだけど、えっちな事はまた別の話らしい。そうやって体で訊く気持ちは、一番正直な気持ちなんだそうな。でもわたしにはそういう知識が無いって打ち明けると、朱鷺恵がこう提案してきたのだ。それじゃあ、一緒にしましょ? って。
再度のゴーサインで、まだ何か言おうとしていた志貴の顔を下に引きずって、わたしの乳房で包み込むように抱きかかえた。ふにゅっ。初めての攻撃に志貴は口をもごもごさせるんだけど何も言わせないように乳房を押し付ける。性感帯みたいに熱くなっている乳房からは、くすぐったいよりも愛しいような刺激が伝わってくる。ちょっと気持ちいい。
抱きかかえたことで志貴とわたしは上下でなく左右になる。その左右の志貴の後ろから朱鷺恵がそっと志貴を抱く。ふむーふむーと何か言っているけど聞こえないフリ。そして再び指示通りに、志貴の頭を撫でながら言う。
「ね、志貴。気持ちいい?」
しばらく間が相手から、頷くように乳房が揺れる。あん。
「志貴ってばすっごくドキドキしてたよ……分かる? わたしもドキドキしてるコト」
言うだけで破裂しそうなほど胸の中の何かが高鳴る。志貴は特に返事を返さず、っていうか多分ものすごく困っているんだろうなーと思っているとわたしの背中にぎゅっと腕がまわされた。ああん。そうしてわたしを抱いたまま転がして上になろうとするんだけど、それは背中に居る朱鷺恵によって阻まれる。
「だぁめ。志貴くんは動いちゃ」
そのまま朱鷺恵の指示通り乳房から志貴を解放する。なんだかちょっとおっぱいが切なくて志貴の体に押し付けてしまう。自然、体はさらに密着して、志貴の荒い吐息が間近になって聞こえる。
「そうやって体をこすり付けるような感じで」
「こうすると、志貴も気持ちいいの?」
「気持ちいい以上に、興奮するの。ほら」
朱鷺恵が志貴の背中でくねるようにして体を擦る。たったそれだけで志貴は「はう」と声を上げる。じゃあわたしもしたらどうなるんだろう。思いながら朱鷺恵と同じことを見よう見まねで実行。全身と、特に乳房を重点的に、こねるように志貴を抱き続ける。
「うああっ、ちょっ、タンマ、待って!」
「待てない。一週間も待ったんだから、これ以上は待ってあげない」
「ふふ。じゃあ大人しくなるまで志貴君の口を塞いじゃおっか」
おっけーと返す。確か朱鷺恵が言うには、いつも志貴にされているキスと同じことを、わたしからすればいいらしい。
最初はかるく口付け。ちゅっと音を立てて志貴の唇に重ねて吸う。んふ、なんか新鮮に気持ちいい。それを数回繰り返したあとで、ぶちゅーって重ねて固定する。口の中には志貴の味が入ってくる。その志貴の味を充分味わったところで、舌をねじ込む。舌をねじ込もうとした志貴の抵抗をねじ伏せて、志貴の中に進入。ねとりとした粘膜が舌同士で絡みついて、志貴の味から志貴の口の中の味へ。うん。美味しいくて愛しい。
「ほらほら、体も動かしたままでね」
言われる通り、止まっていた体の動きを再開させながらディープキス。志貴の舌と絡み合いながら、時には志貴の口の中や歯や歯茎を舌先で愛撫。そのうちに唾液がにちゃちにゃとしだして、それを志貴の中へ送り込む。志貴は一瞬驚いてから、わたしの唾をこくんと飲み干す。うわぁ、なんかこれすっごくエロい。頭までヒートアップしてくる。それからさらに志貴の口の中を吸い上げるようにしながらキスを続けると、志貴が声を出した。口を塞いでるから音にならないんだけど、気持ちよさにあげた悲鳴はものすごく艶っぽくて可愛い。志貴ってばこんな感じにもなるんだぁ。
志貴から上がる悲鳴が多くなったところで唇を離す。当然、舌先で糸を引いたままだ。見詰め合う志貴の目はとろんとしていて、唾液の架け橋に見惚れているようにも見えた。メガネがかかりっぱなしといのがまたいい。志貴が大人しい子犬のように見える。
「それじゃ、アルクェイドちゃん先に脱いで」
言われた通り志貴から離れて服を脱ぐ。その間、朱鷺恵が背後から志貴の首筋にキスをして、ちゅぅぅぅぅっとすごい音を立てていた。それから舌全体を首筋に這わせて、耳たぶにキスをする。ああ、わたしも志貴にやられたなぁ。あんな状況でやられたら、きっと志貴みたいな悲鳴をあげるくらい気持ち悪いような気持ちよさを感じるんだろう。
じゃ、交代ね。と言われて今度はわたしが志貴を抱きかかえる。「さっきわたしがしたみたいに、志貴くんにしてあげてね」。それじゃあわたしは反対側の首筋にキスをしよう。ちゅばっ、ちゅぅぅぅぅぅっ。音がして志貴が耳元で喘ぐ。うう、ぞくぞくする。そんな可愛い声出されたらほんと、理性なんか吹っ飛んでしまいそう。
志貴の首筋はちょっとしょっぱくて、でもいつも感じない新鮮な舌触りがとてもいい。そのまま耳たぶにキス。真っ赤っで果物みたい。「そこから、舌を耳の穴に入れてあげるの」。へえ、そんなこともするんだ。やってみよう。ねとりと耳全体に舌を絡ませてから舌先を入れると、んっ、と志貴の反応。それが楽しくてねっとりとかき回す。そのたびにんんぅ、と声あげる志貴。うわー、もうヤバい。色々と。
志貴をいじめているうちに朱鷺恵が復帰。そのまま志貴に抱きついて服を脱がせていく。脱がせるというよりは上だけを半分剥いたような状態。服はちょっと邪魔だけど、こっちの方がよりエロい気分になれるそうな。
ものすごくえっちな顔と息をしている志貴はもう抵抗しなかった。それをいいことに二人で、手で胸や脇腹を愛撫しながら顔をずらして志貴の乳首へ。小さいながらも明らかに勃起していて、朱鷺恵の真似をしながらちろちろと舐めてあげると志貴からびくびくと反応。男の人でも、こんなんにされたらやっぱり感じるんだ。意外。
そのまま顔をさらに下の方へ。起き上がろうとする志貴の両耳を、片耳ずつ担当して指先でこねくり回してそれを阻止。そしてズボンを脱がせようとするんだけど、朱鷺恵が待ったをかけてくる。
「基本はやんわりとした刺激から、徐々に強い刺激にしていってあげるの。だからこっちも、まずは……ね?」
言いながら朱鷺恵は手の平で、志貴の窮屈そうに納まっているペニスを撫でる。ゆっくりと、まるで傷を擦るような撫で方に志貴はびくりと反応。あ、あ、と搾られる声。やってみてと言われてわたしも同じように撫でくりまわす。志貴の筋肉が弛緩しようか緊張しようか迷うようにびくびくとする。ほんとだ。思ってたより弱い刺激でいいんだ。うーん。えっちって奥が深いなぁ。
そのうちに志貴の反応がゆるくなってきて、ようやく脱がすことに。それも一気にではなく、少しずつ焦らしてやるんだとか。たっぷりとした時間をかけてようやく外に開放された志貴のペニスは。カチンコチンに固まっててもう先走っていた。
ぬるりとした粘膜を、朱鷺恵に言われた通り指先でぬるぬると亀頭に広げていく。淫猥だとしか言い様の無い匂いが鼻腔をくすぐる。「志貴君ってば、もうこんなになっちゃって」。可愛いんだから。という意見はわたしと朱鷺恵で一致した。
「それじゃ、二人で交互に舐めよっか」
「うん。志貴をもっともっとえっちにする舐め方、教えてほしい」
「んふふ、分かった。じゃあまずは……」
先走ってた汁をすくうようにしてもう一度広げて、舌先で亀頭の先端を、円を描くようにして舐める。やってみる。しょっぱくて苦い味がするんだけど今は全然気にならない。張り詰めている亀頭は面白い舌触りで、それをゆっくりと味わうようにして舐める。志貴の反応は中々上々。んあ、うぅ、あっ、とあがる声は今までよりも大きい。
次は亀頭の半分くらいまでをキスするようにしゃぶる。ちゅうちゅう音をたてて、円を描くように。交代。「なかで舌先でもいじってあげるの」。ただ吸うだけじゃないってことか。言われた通りちゅばっと吸い付きながら舌先で亀頭をなぞるように舐める。「んはっ、んくぅ……」我慢している志貴の声。けっこういい声なんだけど朱鷺恵はそれでは満足していないらしい。「志貴君、力んじゃだめ。もっともっと力抜いて…ね」と言いながらおしりを力強く撫でる。「朱鷺恵さんそこ……んあっ」。途端に志貴から力が抜けて声も大きくなる。うん。力抜いてる方が気持ちいいもんね。「もっと気持ちよくなっていいよ。志貴」。言いながら舌先を鈴口に押し込む。力めない志貴はとうとう「あうっ……あっ」と力なく淫らに喘ぐ。志貴のこういう声を聞くときってイキそうになった時くらい。それを自分の手でしているんだと思うと、声のエロさも倍増だった。
もう一度朱鷺恵と交代。「雁首のところは刺激が強いから、あんまりいじらないでね」言いながら志貴の雁首を一回嘗め回す。本当に刺激が強いのか、びくくっと体を震わせる志貴。それから今度は口付けで色を塗るみたいに唇を竿へと這わせていく。ぐるぐると長いキスをしているあいだに朱鷺恵は手で亀頭を撫でながら睾丸を軽く揉む。それがどんな刺激なのかわたしには想像もつかないんだけど、志貴が思わず首をあげて見つめてしまうくらい絶妙な快感みたい。「ここからはさっきと同じ。ちょっと激しくしてもいいかな」。レクチャーされつつ交代。ちょっとヤな味のする雁首をぐるりと一周。ノックアウト寸前の志貴からさらに我慢汁がにゅるり。せっかくなのでと指でいじる。という指示通りいじる。
「んふふ、可愛いよ。志貴」
ついでに予め言われてた通り言葉でもいじる。男の子に可愛いと言うのは、こういう時にはすごく効果的なんだとか。
「えっちな声出して……女の子みたいにびくびくしてて……すっごくえっちぃ」
「ある……くぇい、どっ……んうっ! あ、はあっ……」
「いつも気持ちよくさせてもらってるから、もっと気持ちよくなっていいんだよ」
乾き始めた亀頭にちゅぱっとキス。それから朱鷺恵のやったみたいに唾液で色を塗るように竿全体をキス。睾丸をやさしく揉むのも、亀頭を撫でるのも忘れない。ねっとりとした愛撫に志貴のメガネが外れそうになるんだけど、朱鷺恵が阻止。
「それじゃあ、あとはアルクェイドちゃんの思うままにやってみて。基本さえ押さえてれば大丈夫だから」
「うん、ありがと。頑張ってみる」
メインは亀頭。雁首はやっちゃだめ。口に入れているときは舌先でもいじる。こんなところかな。手持ち無沙汰になる前に、メガネを直したその足で朱鷺恵は志貴の背中にまわって抱き起こす。そして後ろから抱きかかえ、体全体で志貴の全身を愛撫しつつ、耳をしゃぶる。少し起こされた志貴は大分なめやすくなってて、もうワンセット口に含んでから全体への刺激を、さっきよりもじっくりねっとりと繰り返した。
さらにワンセット行こうかなって時に、志貴から弱々しい声があがった。
「も……もっと、つよく」
む、これはどうしよう。素直に強くしてあげればいいのだろうか。朱鷺恵に目配せすると、ダメダメと言いたそうに首が横に振られた。
「だぁめ。えっちなお願いするなんて……ふふ、お仕置きが必要かしら」
朱鷺恵はわたしに目配せしてくる。飽くまでもわたしたちが優位でなければいけないらしい。お願いはきいてあげる。あげるんだけど、こういう形でやる。ふむふむ。なるほどなぁ。
「そんな悪い子のおちんちんは……こうね」
触ってなかった雁首を、何回かに一回触れるような感じで激しくしゃぶる。ちゅる、じゅる、ちゅぱ、ちゅぶ、じゅるる、じゅっ。志貴の喘ぎが一音高くなる。「うわぁっ、んくっ、ああっ」いやいやするように首を振るんだけど、すぐ首筋に音を立てて吸い付かれて朱鷺恵に止められる。「そうね。時々最初やったみたいにして」。言われた通り、舌先で亀頭をなぞる。最初の時より大きくて高くて卑猥な声が上がる。それからさらに激しくしゃぶる。志貴の反応はもう女の子みたいになっていた。へえ、男でもこんな感じに気持ちよくなれるんだ。
「も……もう、だめっ」
愛撫されつづけて、とうとう志貴もイきそうになってきたみたい。でも朱鷺恵からはゆるい刺激にするようにとの指示。一体どうしてだろう。でもここはちゃんと従っておく。すると志貴がすごくもの欲しそうな顔でわたしのことを見下ろしてきた。うぁ、その表情すごくイイ。
「ゆっくりよぉ、ゆっくり。一気にじゃなくって、じっくりゆっくり愛撫して、我慢してもし尽くせないくらいにして、イかせてあげるの」
「やっ、……そ、そんなこと、されたら、んあっ!」
「いいけど、でもどうして?」
「男の子って早くイこうとしちゃうから。それに、こうした方が志貴君はどんどん可愛くなるの」
それはもう大賛成。拒否する余地なし。
雁首を使わず、亀頭と舌だけで愛撫。志貴を徐々に追い詰めていく。
ゆっくりと、次第に声が限界に近づいていく。朱鷺恵が手で志貴の脇腹や乳首を撫で始める。我慢汁が溢れてくると、手際よく指での愛撫に切り替える。「ねえ、聞かせて。志貴のえっちな声。もっともっと聞きたいの」。乾いてくる前にまた咥える。時々手に移るのは口が疲れなくていい。
ひとしきり泣き喚くように喘ぐ志貴。
可愛くて可愛くてえっちくて。それを見て何時になく興奮するわたし。すごい。攻めてる方ってこんなにもえっちでどきどきした気分になるんだ。
朱鷺恵はさっきから、満足そうに志貴を愛撫している。母親が姉が子供や弟を愛撫するとこんな感じだろうか。見ていて微笑ましい。
でも、そろそろ終わりも近い。
「も、もうっ、ほんと、だめっ……イク。イクっ、イクっっ!」
朱鷺恵の指示に従って指での愛撫に切り替える。にゅちにゅちと音を立てて激しく、けれど雁首だけは決して使わずに追い詰めていく。朱鷺恵も乳首と耳に絞ってくる。それまで平坦だった愛撫が畳み掛けるように強くなって、志貴は直前。一際強く喘いだ。
─────びゅるるるるっ。
ゼリー状のものが出てきたんじゃないかと思うくらいの音を立てて射精する。噴水のように湧き上がる。何回もびゅるびゅると射精して、とうとう出なくなってから、志貴はぐったりと朱鷺恵に身を預ける。わたしも志貴のペニスから指を離して、手と顔にかかった精液を舐めながら朱鷺恵の手招き通り志貴に重なる。「じゃ、それ飲んで。志貴にも飲ませてあげて」。うわ、そんなことしちゃうんだ。余韻ではあはあと浅く喘ぎ続ける志貴を見たらものすごく実行したくなる。精液は……ちょっと美味しかった。顔についた分は朱鷺恵に分けてあげて、口に含んだまま志貴にキスして流し込む。志貴は抵抗するんだけど、唾液も流し込むとあっさりと嚥下した。「キスしながら聞いてね。イったあと抱きしめてもらってたでしょ? それを志貴君にもしてあげて」おっけーりょーかい。朱鷺恵と一緒に抱きしめながらキスを続ける。ぐったりと力のぬけた志貴は人形みたいで、なんかとてつもなく可愛い。
「ふう……んふ、気持ちよかった?」
唇を離して志貴に尋ねる。喋れないのか喋りたくないのか、志貴はこくんと頷く。
「ねーねー、じゃあ次はどんなんがいい?」
「お前……どんなんって、ちょっと待て、まだやる気か?」
「志貴君。もしかして今の状況、よく分かってないでしょ」
今この場にいるのは、最後に一回ヤりたかった元彼女と、一週間我慢し続けた現彼女。
志貴は、その中に飛び込んでしまった二人の彼氏。
こんな状況で、タダで済むハズが無い。
「ちょ……よく分かってないって、朱鷺恵さん、え!? こ、こらアルクェイド! 攻められるのはもう勘弁し……あんっっ!」
ふと目覚めた時には時刻は夜の八時。終ったあとでちょっと眠っちゃったみたい。
あの後わたしのベッドまで移動して、志貴を攻めて責めてせめまくった。おかげでもうわたしからえっちな事もできるだろう。うん。いつもと立場が逆転した今日の情事はとても充実していたように思う。
お礼を言おうとして、朱鷺恵が居ないことに気がつく。もしかして気を利かせて出て行ってくれたのだろうか。志貴のことはわたしに譲るっていう言葉は本当だったみたい。うん。また会いたいな。朱鷺恵がわたしのことを気に入ったみたいに、わたしも朱鷺恵のことを気に入ったみたい。
ベッドの中で裸のままぼーっと志貴の寝顔を見つめていると、志貴も目をパッチリと開けて起きた。そしてゆっくりと周囲を見渡し、自分が置かれている状況を確認。いまいちよく分からないという様子。
「なあ……夢、じゃないよな」
「夢みたいな一時だったけどね」
「朱鷺恵さんは?」
「先に帰ったわ」
「そっか……ええと、俺はあとでなんて言っとけばいいのかな?」
「志貴はなにも言わなくていいの。わたしは言うけどね」
「っていうか、なんでこんなことしたんだよ」
「だって……今まで志貴にしてあげたかったけど、よく分かんなかったから」
「──ずるいな。そんなこと言われたら許すしかないじゃないか」
「あったりまえじゃない。褒めてくれたっていいくらいよ」
「ん……上手かったよ、アルクェイド」
「ふふ、ありがと。志貴もすっごく可愛かった」
「その、そういうのはあんまり言わないで欲しい」
「もうキスしてよしよししてあげたくなるくらい可愛かった」
「…………分かった。俺の負けだ」
「えっへへー。わたしの勝ち〜」
「って、もうこんな時間!? うっわー、こりゃ帰ったら殺されるな」
「なら泊まっていけばいいじゃない」
「そういうわけにも……いっちゃうか?」
「いっちゃえー♪」
少しうーんと悩んだ志貴は、結局屋敷に帰ることを諦めて再びベッドに沈む。わたしもその隣にぽふんと頭を預ける。なんだかとっても幸せな気分。隣に志貴が居て、二人とも裸で、就寝時間ともまだ起きてる時間ともつかない中間の曖昧な時間で、互いにぬくもりを分かち合う。
朱鷺恵の言うとおり、言葉じゃ伝わらないものもある。
にへへと笑う。志貴も微笑む。
うん、今の私達はそれを伝え合えているのだと思う。
ほんと、朱鷺恵に感謝しないとね。
「……ね、志貴。わたしのこと好き?」
「そんなこと言われたらキスして口塞ぎたくなるくらいに好きだよ」
「だめ、ちゃんと言って」
「…好きだ。アルクェイド」
「えへへ、わたしも志貴のこと好き」
うん。やっぱりわたしは志貴のことが大好き。
これからはもっともっと好きになってあげるんだから!
/Sugar On Me A'd You・了
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